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ラカトリア学園 高等部
144 婚約者という名の絶望 1
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俺は天井を見上げ、大きく息を漏らす。
婚約破棄。俺はそうなることを望んだが、改変により新たな婚約者が俺に充てがわれることになった。
パメラではどうやら役者不足だったのだろう。
俺の知らない所でそんな事を決められ、望んでいないことだけが勝手に進む。
「序列としては、メアリさんが第三位です」
ならどの選択が正しいのか?
今……思えば簡単な話だ。
助けなければいい。
そうなれば、メアリは今頃ここに存在すらしていないだろう。
俺が自分のためにそこまで考えられればそんな事をしていたか?
きっとそうは出来ないだろうな。
「パメラさん。メアリ様は婚約者ですので、序列としては第二となります」
「いえいえ、パメラ様の方が以前からお付き合いされているのですから、私が第二位と言うのは申し訳なく思います」
パメラと付き合っているわけじゃなくて、パメラが俺につきまとっているだけなんだが。
それに序列って何の話だ?
メアリにとって、今回のことは本当にいいのだろうか? 養子に出され、俺のような奴の婚約者にされるなんて……ハルトの婚約者にしていた方が、良いと思うのは俺だけなのか?
「私は婚約者としても、付き合いの長さからしても序列一位には変わりません。そうですよね、アレス様?」
「ちょっとまて、俺はまだよく分からないのだが。メアリが俺の婚約者? バセルトン公爵の娘として? つまりハルトと兄妹ってことか?」
「はい。そうなります」
「ミーアも継続して? 婚約者二人ってこと?」
「ううっ、私がその中に入っていないのが辛い」
つまり、俺が守るべき対象が更に増えたってことでいいのか?
何でそんな改変になるんだよ……パメラだけでもおかしいのに、メアリってゲームとは無関係じゃないのか?
何処まで追い詰めるつもりなんだ?
それとも、俺に対していい加減諦めろと言われているようだな。
「婚約者・・・か。そうか。よろしくな、メアリ」
「はい、アレス様」
二人の拍手が鳴り止むと、俺は寝るために部屋から出ていこうとしたが、二人に腕を取られ座るように促された。
はっきり言って逃げたかった。
新たな婚約者の存在を、認めたくはなかった。
「流石に俺も眠たくてだな……」
それほど眠たいわけでもなかったが、疲れているふりをすることにした。
「アレス様、もう一つお聞きしたい事があります」
「手短に頼むな。ふぁっ」
「そんなにお手間は取らせません」
「それで? 聞きたいことってなんだよ」
「メアリ様の、指輪についてです」
ああ、ダンジョンで拾った……あれの話か。
そういやまだ持っているんだな。俺はここで重要な事に気がついた。
メアリの左手薬指にある指輪。
俺には必要がないからと言って、何でか知らないが俺があげたってことになったあの指輪。
よりにもよってこの二人を前にして、左手の薬指に嵌められているんだ。
先程から頻りにミーアが序列を気にしていた理由がこれだったのか。
「どうかなされましたか?」
「アレスさん。手短に、なんですよね?」
メアリからいっそ返して貰う?
仮にそれが上手くいったとしても、婚約者の話には当然父上達が絡んでいるわけで、これの存在を知っているはず。
それを取り上げようものなら、拷問及び斬首が確定する。
となると、二人に別の物を買えば良いのだろうか? それで納得してくれるのなら別にいいんだけど。今はそういう話でも無さそうだな。
「アレス様。なぜ、メアリ様に指輪を差し上げたのですか?」
「待て待て、それは誤解だ。それは俺が上げた物ではなくて、メアリが拾った物だ」
あの時は、メアリがあの指輪を拾ってきたもので、だから売ればそれなりの金額になると思ったし、それでいいと思ったやつだよな?
それにあれはメアリに対して、ダンジョン攻略後に出たアイテムだろ? だったら元々俺のじゃない
「あの、この指輪はアレス様の足元にあったもので、私の前には何もありませんでしたわ」
「いやいや、嘘を言わないでくれよ」
もしそうだったとしてもだ、これは俺があげた物じゃないと言ってくれよ。頼むから!
こんな事を口に出せれば良いのだが、二人の視線は相変わらず痛い。
「そんな……これはアレス様から頂いた物……ですわ」
婚約破棄。俺はそうなることを望んだが、改変により新たな婚約者が俺に充てがわれることになった。
パメラではどうやら役者不足だったのだろう。
俺の知らない所でそんな事を決められ、望んでいないことだけが勝手に進む。
「序列としては、メアリさんが第三位です」
ならどの選択が正しいのか?
今……思えば簡単な話だ。
助けなければいい。
そうなれば、メアリは今頃ここに存在すらしていないだろう。
俺が自分のためにそこまで考えられればそんな事をしていたか?
きっとそうは出来ないだろうな。
「パメラさん。メアリ様は婚約者ですので、序列としては第二となります」
「いえいえ、パメラ様の方が以前からお付き合いされているのですから、私が第二位と言うのは申し訳なく思います」
パメラと付き合っているわけじゃなくて、パメラが俺につきまとっているだけなんだが。
それに序列って何の話だ?
メアリにとって、今回のことは本当にいいのだろうか? 養子に出され、俺のような奴の婚約者にされるなんて……ハルトの婚約者にしていた方が、良いと思うのは俺だけなのか?
「私は婚約者としても、付き合いの長さからしても序列一位には変わりません。そうですよね、アレス様?」
「ちょっとまて、俺はまだよく分からないのだが。メアリが俺の婚約者? バセルトン公爵の娘として? つまりハルトと兄妹ってことか?」
「はい。そうなります」
「ミーアも継続して? 婚約者二人ってこと?」
「ううっ、私がその中に入っていないのが辛い」
つまり、俺が守るべき対象が更に増えたってことでいいのか?
何でそんな改変になるんだよ……パメラだけでもおかしいのに、メアリってゲームとは無関係じゃないのか?
何処まで追い詰めるつもりなんだ?
それとも、俺に対していい加減諦めろと言われているようだな。
「婚約者・・・か。そうか。よろしくな、メアリ」
「はい、アレス様」
二人の拍手が鳴り止むと、俺は寝るために部屋から出ていこうとしたが、二人に腕を取られ座るように促された。
はっきり言って逃げたかった。
新たな婚約者の存在を、認めたくはなかった。
「流石に俺も眠たくてだな……」
それほど眠たいわけでもなかったが、疲れているふりをすることにした。
「アレス様、もう一つお聞きしたい事があります」
「手短に頼むな。ふぁっ」
「そんなにお手間は取らせません」
「それで? 聞きたいことってなんだよ」
「メアリ様の、指輪についてです」
ああ、ダンジョンで拾った……あれの話か。
そういやまだ持っているんだな。俺はここで重要な事に気がついた。
メアリの左手薬指にある指輪。
俺には必要がないからと言って、何でか知らないが俺があげたってことになったあの指輪。
よりにもよってこの二人を前にして、左手の薬指に嵌められているんだ。
先程から頻りにミーアが序列を気にしていた理由がこれだったのか。
「どうかなされましたか?」
「アレスさん。手短に、なんですよね?」
メアリからいっそ返して貰う?
仮にそれが上手くいったとしても、婚約者の話には当然父上達が絡んでいるわけで、これの存在を知っているはず。
それを取り上げようものなら、拷問及び斬首が確定する。
となると、二人に別の物を買えば良いのだろうか? それで納得してくれるのなら別にいいんだけど。今はそういう話でも無さそうだな。
「アレス様。なぜ、メアリ様に指輪を差し上げたのですか?」
「待て待て、それは誤解だ。それは俺が上げた物ではなくて、メアリが拾った物だ」
あの時は、メアリがあの指輪を拾ってきたもので、だから売ればそれなりの金額になると思ったし、それでいいと思ったやつだよな?
それにあれはメアリに対して、ダンジョン攻略後に出たアイテムだろ? だったら元々俺のじゃない
「あの、この指輪はアレス様の足元にあったもので、私の前には何もありませんでしたわ」
「いやいや、嘘を言わないでくれよ」
もしそうだったとしてもだ、これは俺があげた物じゃないと言ってくれよ。頼むから!
こんな事を口に出せれば良いのだが、二人の視線は相変わらず痛い。
「そんな……これはアレス様から頂いた物……ですわ」
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