146 / 310
ラカトリア学園 高等部
145 婚約者という名の絶望 2
しおりを挟む
メアリは今にも泣きそうな声で、右手で指輪を握りしめ、まるで祈りを捧げるかのように額に当て涙を流していた。今の言葉はそんなに何か悪いことだったのか?
この展開……女性三人に対して、俺一人では到底太刀打ちができない。
「メアリさん。泣かないで、アレスさんはきっと照れているだけですよ。肝心な事は何も言ってくれないけど、アレスさんは優しいから」
「はい」
パメラはメアリに心配そうに寄り添っているが、俺を見ると目を細め何かを訴えていた。
つまり、この俺に何かを言えと言うことか? これだと、まるで茶番に付き合わされている気分だな。
俺のことを本気で慕っているというのか?
俺が何をしてこんな事になったと言うんだ?
ミーアやパメラだって、たまたま助けただけだ。たったそれだけのことが、これだけ大事になるはずもない。
「アレス様?」
「ミ、ミーア。すこしは俺の話をだな」
「メアリ様にとって、あの指輪が何故大事なのかお分かりですよね?」
「い、いや、あのだな……」
「それに私の物も、とても大切な思い出の宝物です。お慕いしているお相手から、たとえ同じ物が他にあったにせよ、これだけは変えられない宝なのですよ?」
ミーアのそれと同じ様に、メアリにとってあれは同様の価値があると? ミーアと違い、たった数日居ただけだと言うのにか?
何でこんな事になった? ちょっと助けたってだけの話だろ?
あの時コテージで一緒のベッドに寝たから?
「アレス様?」
「わからねえよ……何でこんな事に……」
「私達は皆、アレス様をお慕いしております。私達の行動や言動。そして、嫉妬もアレス様と共に居たいからなのです」
そんな事は言われなくても分かる。
でも俺には、そうなる資格がないんだ……怖いんだよ。
ミーアじゃなくても、パメラでもメアリでも、他の誰かでも俺が殺してしまうことに……離れようとしても離れることもなく、そして新たな道連れが用意される。
「ですので、もう少しだけで構いません、もっと寛容に成られてください。私達は常にアレス様のお側に居ます。離れることなど……どうかお捨てください」
そうなのか、これが俺にとっての普通になるというわけか。
もしかすると、これからもシナリオはどんどん俺への対策を強めるために、俺を羽交い締めにするのだろう。
そして、いつの日かあの光景を目にするまで……。
「ああ、やっぱりそうなるんだな」
俺はその言葉と同時に、まるで糸が切れたかのように意識を失った。
* * *
何であの二人があれだけ、執拗に俺のことに執着をしていたのか。
目が覚めると一人ベッドの上でぼーっと窓の外を見ていた。
ここに来て心が折れそうになっていた。
足掻くことで、俺には守るべき者が増えていく。
メアリはただ助けたいと思っただけで、好意なんて元から気にもしていない。それなのに今は好意をぶつけられ、婚約者として俺の近くにいる。
俺はこれから先どうすれば?
こんな負の連鎖に似たシナリオは過酷でしか無い。
俺が助けた。それだけで済まされず、婚約者として俺の隣に居る。
それがどれだけ危険なことか……三人は何も知らないから。
俺だけが知っている、最悪の結末はやはり変えられそうにもない。
ダンジョンに居る時が一番良かった。何も考えずただレベルを上げ、最後の目的のためにという言い訳が成り立ったから。
今更一人で行動したとしても、誰もがそれを許さない。
それに、ミーアはあの時俺を追うといった。
例えどんな場所だろうとも、命をかけてまで……何をやっても彼女達はきっと折れない、それはなぜか?
他に婚約者が出来ようとも、俺を好きだという人間が近くにいようとも、必ず彼女は隣りにいる。それはなぜか?
「俺が攻略対象だから……か」
このゲームの主人公はアレスではない。パメラ、レフリア、ミーアが主人公の世界だ。最後にもう一人いるらしいが、その話は多分、今は関係ないだろう。
俺がここにいることでシナリオは歪み、全く別のキャラですら俺を攻略しようとしているのだ。
これ以上行動することで、事態の改善は無くただ悪化していく。
俺は何もかも諦めて、誰かを犠牲にして、最後の時を待てば良いのだろうか?
シナリオはそれを望んでいるということか?
この展開……女性三人に対して、俺一人では到底太刀打ちができない。
「メアリさん。泣かないで、アレスさんはきっと照れているだけですよ。肝心な事は何も言ってくれないけど、アレスさんは優しいから」
「はい」
パメラはメアリに心配そうに寄り添っているが、俺を見ると目を細め何かを訴えていた。
つまり、この俺に何かを言えと言うことか? これだと、まるで茶番に付き合わされている気分だな。
俺のことを本気で慕っているというのか?
俺が何をしてこんな事になったと言うんだ?
ミーアやパメラだって、たまたま助けただけだ。たったそれだけのことが、これだけ大事になるはずもない。
「アレス様?」
「ミ、ミーア。すこしは俺の話をだな」
「メアリ様にとって、あの指輪が何故大事なのかお分かりですよね?」
「い、いや、あのだな……」
「それに私の物も、とても大切な思い出の宝物です。お慕いしているお相手から、たとえ同じ物が他にあったにせよ、これだけは変えられない宝なのですよ?」
ミーアのそれと同じ様に、メアリにとってあれは同様の価値があると? ミーアと違い、たった数日居ただけだと言うのにか?
何でこんな事になった? ちょっと助けたってだけの話だろ?
あの時コテージで一緒のベッドに寝たから?
「アレス様?」
「わからねえよ……何でこんな事に……」
「私達は皆、アレス様をお慕いしております。私達の行動や言動。そして、嫉妬もアレス様と共に居たいからなのです」
そんな事は言われなくても分かる。
でも俺には、そうなる資格がないんだ……怖いんだよ。
ミーアじゃなくても、パメラでもメアリでも、他の誰かでも俺が殺してしまうことに……離れようとしても離れることもなく、そして新たな道連れが用意される。
「ですので、もう少しだけで構いません、もっと寛容に成られてください。私達は常にアレス様のお側に居ます。離れることなど……どうかお捨てください」
そうなのか、これが俺にとっての普通になるというわけか。
もしかすると、これからもシナリオはどんどん俺への対策を強めるために、俺を羽交い締めにするのだろう。
そして、いつの日かあの光景を目にするまで……。
「ああ、やっぱりそうなるんだな」
俺はその言葉と同時に、まるで糸が切れたかのように意識を失った。
* * *
何であの二人があれだけ、執拗に俺のことに執着をしていたのか。
目が覚めると一人ベッドの上でぼーっと窓の外を見ていた。
ここに来て心が折れそうになっていた。
足掻くことで、俺には守るべき者が増えていく。
メアリはただ助けたいと思っただけで、好意なんて元から気にもしていない。それなのに今は好意をぶつけられ、婚約者として俺の近くにいる。
俺はこれから先どうすれば?
こんな負の連鎖に似たシナリオは過酷でしか無い。
俺が助けた。それだけで済まされず、婚約者として俺の隣に居る。
それがどれだけ危険なことか……三人は何も知らないから。
俺だけが知っている、最悪の結末はやはり変えられそうにもない。
ダンジョンに居る時が一番良かった。何も考えずただレベルを上げ、最後の目的のためにという言い訳が成り立ったから。
今更一人で行動したとしても、誰もがそれを許さない。
それに、ミーアはあの時俺を追うといった。
例えどんな場所だろうとも、命をかけてまで……何をやっても彼女達はきっと折れない、それはなぜか?
他に婚約者が出来ようとも、俺を好きだという人間が近くにいようとも、必ず彼女は隣りにいる。それはなぜか?
「俺が攻略対象だから……か」
このゲームの主人公はアレスではない。パメラ、レフリア、ミーアが主人公の世界だ。最後にもう一人いるらしいが、その話は多分、今は関係ないだろう。
俺がここにいることでシナリオは歪み、全く別のキャラですら俺を攻略しようとしているのだ。
これ以上行動することで、事態の改善は無くただ悪化していく。
俺は何もかも諦めて、誰かを犠牲にして、最後の時を待てば良いのだろうか?
シナリオはそれを望んでいるということか?
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
554
1 / 3
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる