高瀬舟

 病になり、働けなくなり、頼るものもなく一人きりだと――今後のことなど考えられぬ状態で茫然自失となっている間に、しばらく連絡をとらなかった兄が現れ、世話をしてくれるようになった。医者に行く金もない。いつ治るかわからない。
 そういえば、昔「高瀬舟」という話を宿題で読んだ。あれは、兄が治る見込みの無い弟の世話をしている話だった。誠治はもう一度、それを読んでみることにした。
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