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強者討伐 失われた武器
276 ひとときの時間 1
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あれだけ何かやっていたにも関わらず、こんな事をしていて大丈夫なのか?
ローバンの屋敷では、多くの人たちが集まりテーブルを囲んで賑やかにこの場を楽しんでいる。
父上たちも、招いた貴族と挨拶をしたり、笑い合っているところを見ると問題というのは解決したのだろうか?
「アレス様? 何か気になるような事でも?」
隣にミーアが不思議そうに顔をして覗き込んでいる。
声をかけられ、ミーアの顔を見るものの、自然と俺の目線は下へ下がっていた。
誘惑に誘われて思わず近づけてしまいそうな、そのギリギリな胸元から顔を背けて、ごまかすように持っていたグラスの中身をぐいっと飲み干して空にする。
俺の後ろにも二人の婚約者が立っているのだけど、ミーアだけではなく、パメラもメアリも冬の夜会だと言うのにかなり際どいドレスを着ている。
正直に言えば、そういうドレスを選んで欲しくはないな。
「いや、その……」
ある程度目処が立ったのか、三公爵は揃いも揃ってこんな夜会に参加をしていた。
気になることは全く無いわけでもないのだが、年末の夜会は王宮で開かれることが多い。それなのに、ローバンで開催するのはどういうことなんだ?
「父上達は何やら楽しそうだな」
空いたグラスで父上達の方向を指す。
ガドール公爵は、グラスなんてみみっちいことをしないで、瓶ごと口をつけている。
王宮と比べるとかなり砕けたものになっている。
冬にもなれば、バセルトンは馬車を走らせるだけでもかなり難しい。
だけど、新しい陸路は頑丈ということもあって、除雪も楽になっている、らしい。おかげで、こうして集まれるのだが……酒をまるで水のように飲む、あのおっさんは限度というものを知らないのか?
去年は王宮で開かれたパーティーに参加をさせられていた。主催が王国だから、当然といえば当然の話しだ。俺も少しだけはいたが、姉上を助けるためにどんな催しがあったのかわからない。
今年も開かれていておかしくはないのだが……この場所で、こんな事をするのも何か事情があるのだろう。
「アレス様。私はまだお誘いを頂いていないのですが?」
「誘い? 何の?」
ミーアは眉をひそめ、後ろにいる二人からはわざとらしい大きなため息を漏らしている。
パメラが指を差す方向に、ハルトとレフリアの姿があった。
さすがあの二人ということもあってか、少しだけ目を奪われる。
二人共楽しそうに笑い、その隣では見様見真似でベールとランがダンスのようなことをしている。
「ははっ、危なかっしいな」
言いたいことは分からなくもないが……ダンスなんて、子供の頃に少しやった程度。
一度たりともこういう場で踊ったことはない。ましてや、体が覚えているとも思えない。ミーアたちに恥をかかせるぐらいなら、このまま踊らないを選択したい。
「このままでは、わたくし達の番が来るとは思えませんわ」
メアリは持っていた空いたグラスを奪い、使用人に渡す。
腕を組まれ、皆が踊っているにも関わらず中央へとグイグイ引っ張っていく。
ぶつからないように、俺たちではなく周りの人たちが気を利かせてくれる。
「お、おい」
「腰に手を当ててくださいませ」
「しかしだな……うっ」
メアリの視線が厳しいものへと変わる。
俺たちの周りに居た人達は少し離れていき、皆から見える中央には俺とメアリが注目されている。
「ち、ちかい……」
「離れて踊るものではありませんわ。アレス様はわたくしに合わせてください」
そう言われるが、俺のたどたどしい動きに会場からはクスクスと笑い声が聞こえてくる。
やかましいおっさんからは、「何だアレは」と言われ、怖い姉上様からは「やれやれ、あの程度とは」と、厳しいお言葉を頂く。
「お上手ではありませんか、まるで四歳のわたくしのようですわよ」
「そう褒めてくれるなよ。メアリのおかげでちょっとは思い出せたよ」
何度も何度も練習させられたステップ。
同じ所で何度も間違え、俺に不要だと思っていた。
こういう事も貴族である以上、必要なことなんだろうな。
ローバンの屋敷では、多くの人たちが集まりテーブルを囲んで賑やかにこの場を楽しんでいる。
父上たちも、招いた貴族と挨拶をしたり、笑い合っているところを見ると問題というのは解決したのだろうか?
「アレス様? 何か気になるような事でも?」
隣にミーアが不思議そうに顔をして覗き込んでいる。
声をかけられ、ミーアの顔を見るものの、自然と俺の目線は下へ下がっていた。
誘惑に誘われて思わず近づけてしまいそうな、そのギリギリな胸元から顔を背けて、ごまかすように持っていたグラスの中身をぐいっと飲み干して空にする。
俺の後ろにも二人の婚約者が立っているのだけど、ミーアだけではなく、パメラもメアリも冬の夜会だと言うのにかなり際どいドレスを着ている。
正直に言えば、そういうドレスを選んで欲しくはないな。
「いや、その……」
ある程度目処が立ったのか、三公爵は揃いも揃ってこんな夜会に参加をしていた。
気になることは全く無いわけでもないのだが、年末の夜会は王宮で開かれることが多い。それなのに、ローバンで開催するのはどういうことなんだ?
「父上達は何やら楽しそうだな」
空いたグラスで父上達の方向を指す。
ガドール公爵は、グラスなんてみみっちいことをしないで、瓶ごと口をつけている。
王宮と比べるとかなり砕けたものになっている。
冬にもなれば、バセルトンは馬車を走らせるだけでもかなり難しい。
だけど、新しい陸路は頑丈ということもあって、除雪も楽になっている、らしい。おかげで、こうして集まれるのだが……酒をまるで水のように飲む、あのおっさんは限度というものを知らないのか?
去年は王宮で開かれたパーティーに参加をさせられていた。主催が王国だから、当然といえば当然の話しだ。俺も少しだけはいたが、姉上を助けるためにどんな催しがあったのかわからない。
今年も開かれていておかしくはないのだが……この場所で、こんな事をするのも何か事情があるのだろう。
「アレス様。私はまだお誘いを頂いていないのですが?」
「誘い? 何の?」
ミーアは眉をひそめ、後ろにいる二人からはわざとらしい大きなため息を漏らしている。
パメラが指を差す方向に、ハルトとレフリアの姿があった。
さすがあの二人ということもあってか、少しだけ目を奪われる。
二人共楽しそうに笑い、その隣では見様見真似でベールとランがダンスのようなことをしている。
「ははっ、危なかっしいな」
言いたいことは分からなくもないが……ダンスなんて、子供の頃に少しやった程度。
一度たりともこういう場で踊ったことはない。ましてや、体が覚えているとも思えない。ミーアたちに恥をかかせるぐらいなら、このまま踊らないを選択したい。
「このままでは、わたくし達の番が来るとは思えませんわ」
メアリは持っていた空いたグラスを奪い、使用人に渡す。
腕を組まれ、皆が踊っているにも関わらず中央へとグイグイ引っ張っていく。
ぶつからないように、俺たちではなく周りの人たちが気を利かせてくれる。
「お、おい」
「腰に手を当ててくださいませ」
「しかしだな……うっ」
メアリの視線が厳しいものへと変わる。
俺たちの周りに居た人達は少し離れていき、皆から見える中央には俺とメアリが注目されている。
「ち、ちかい……」
「離れて踊るものではありませんわ。アレス様はわたくしに合わせてください」
そう言われるが、俺のたどたどしい動きに会場からはクスクスと笑い声が聞こえてくる。
やかましいおっさんからは、「何だアレは」と言われ、怖い姉上様からは「やれやれ、あの程度とは」と、厳しいお言葉を頂く。
「お上手ではありませんか、まるで四歳のわたくしのようですわよ」
「そう褒めてくれるなよ。メアリのおかげでちょっとは思い出せたよ」
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