コミュニティーサバイバル 〜生き延びた先に待つコミュニティーで追放されぬよう、本日も強制労働に心臓を捧げる日々〜

アモーレ ポン太

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無能生産者編

第26話 逃げ出したい!その場から

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「たのも~!」


 ミーヤーたちは酒場のドアを開け、中に入る。


 店内はどちらかというと、酒場というよりもバーに近かった。カウンター越しにバーテンダーらしき1人の男がおり、その男の背後にある棚には多くのお酒が並べられていた。酒一本、一本に銘柄とおぼしきロゴなり、文字などがインプットされたラベルが貼ってあるが、これらがどういった種類のお酒で、どういった味わいがあるかなどそれを見たところで、全くもってわからない。

 店内をざっと見渡したところ、誰も人はいなかった。


「お~!いきなり誰か殴り込みに来やがったのか、と思えばミーヤーじゃねえか。今回も無事帰ってきたんだな」


「やーや大将。今回の物資調達もちょろいもんでしたよ~」


 このバーテンダーの男は、ミーヤーに大将といったあだ名で呼ばれてるらしい。

 大衆酒場にいる店長とかに大将と呼ぶならまだしも、青のネオンの光るスタイリッシュな空間にいる、上下スーツに白のワイシャツ、ベストといったフォーマルな服装をしているそのバーテンダーに、大将といったあだ名はふさわしくないなと若干思ってしまった。


 そしてミーヤーはその大将といった人の立つ真正面の席に座った。

 ミーヤーが座ると同時に、ペトラルカさんもその隣に座っていく。

 自分はと言うと、この店内の大人な雰囲気を醸し出した内装に雰囲気を飲まれ、ずっと立ちつくしていた。


 そうしてぼーっと立ちつくしたままでいると、ミーヤーに「ほら!そこの君はここに座るったら座る!」と言われる。


 そう言うと、ミーヤーはペトラルカの座った席の左隣を1つ開けて、そこに座るよう催促してきた。つまり自分はこの2人の間の席に座れと言うことだった。

 ペトラルカさんとミーヤーの間に挟まれる。まるで自分はサンドイッチの生地と生地の間の具材のようだった。

 さすがにこれは心臓がもたない。2人の女の子にぎゅうぎゅうに押しつぶされたままお酒を飲むことになるなんて、緊張のあまり意識がぶっとびかねない。


 そのこともあってか自分は大将に一言、


「すいません。お邪魔しました」


 とだけ言い残し、この店から入店早々、退出しようとした。


「ちょっと、待て待て待てーい!」


 それを見たミーヤーは慌てて、店内を走り自分をとっ捕まえてきた。


「なに女の子2人を前にして、びびっちゃってるの!?ダメだね~。小心者だね。まだ戦いはこれからというのに、君はあろうことか敵前逃亡ですか?」


 となんやら意味の分からないことを言ってくるミーヤー。まあこの発言を解釈するに、おそらくこれからだいぶお酒を飲み明かすことになるに違いないと思った。

 ・・・・となれば、余計この場にとどまっているわけにはいかなかった。なぜならそもそも自分はお酒があまり飲めない体質であるからだ。


 そのことをはじめて理解したのは、何を隠そうあの忌々しき大学の新入生歓迎会の飲み会の時であった。

 大学に入り早々、自分は華のキャンパスライフに思いをはせ、テニスサークルといったところの門をくぐった。テニスサークルといえば、男女入り乱れての大学生活謳歌のための花形!

 その呼び声が高いと勝手ながらのイメージを抱いていたため、期待に胸を膨らませ、テニスサークルに足を踏み入れたのだ。


 ハイスクール時代は、惨めな学園生活をおくってきたため、大学と言った新たな環境に変われば、自分の取り巻く環境は一新されると思っていた。

 生れてこの方スポーツ経験が全くない自分は、当然テニスの全くの初心者だった。それでサークルメンバーの中のテニス経験者にテニスとはなんぞやといった方法論の何から何まで、手取り足取り教わった。

 ラケットの握り方から、体の使い方まで、それは多岐にわたった。

 しかし丁寧にそれらを教わっていただいたものの、自分の生まれながらの運動神経の悪さがたたってか、なにを言われても、その言葉通りに全く体を動かせなかった。

 教わったことと、実際の動作が全くマッチしなかった。


 純白なテニスウェアといったものに、身を包んだ清純派の女の子にもコーチングさせていただいた。時折、自分の動きを矯正するために、腕や手足をつかまれたりといった経験をした。

 これが生涯における最初で最後の女の子と触れ合った経験だったと思う。確かその子はスー・ユアンちゃんだったと思う。


 しかしその清純な女の子に腕なりをつかまれて、いろいろ助言させてもらったが、全く改善されなかった。

 そして何もできないまま、いざテニスのラリーをやってみたものの、全くもってボールを打ち返せないどころか、そもそもラケットにボールがかすりもしないまま、その日は終えてしまった。


 サークル活動が終わって、またそのコーチングしてくれた女の子とサークルの代表者の男が自分に声をかけてきてくれた。


「まあまあ初心者なら最初はこんなものだよ」


 とか、


「大丈夫!わたしも全く最初は出来なかったけど、来ているうちに上達していったから、きっとベルシュタイン君にもできるようになるよ」


 とか励ましてもらった。


 それから、新入生を歓迎するための飲み会に活動終了後、大学近くのお酒が置いてある店に計17名ばかりのサークルメンバーとともに、向かっていったのである。


 その後の自分の身になにが起こったかなんて、言うまでもないだろう。


「さあさあ戻るったら戻る!」


 ミーヤーは自分のことを逃がしてくれなかった。そもそもなんで自分にそこまでこだわるのだろうか。

 他にも自分より数億倍イケてる男が、このコミュニティーにおいてもごまんといるはずだ。

 たとえば武装班のクラック隊長。筋骨隆々だし、マッチョ好きな女の子なら迷わずその男によってたかってくるだろう。まあ人の名前を覚えられないといった致命的なまでに脳みそが筋肉で出来上がっているのが、玉に瑕きずなのだが。

 そんなクラック隊長以外を差し置いてもイケてる人間がたくさんいる中で、なぜこうもイケてない自分を必要以上に引き留めてくるのだろうか。女の子の考えていることなんて、まるで理解できない。


 そうして自分はミーヤーによって、褐色系の彼女と純白系のペトラルカさんとの間に板挟み状態で席に座らされることとなってしまった。

 女の子に対して、ましてやその他大勢の男どもに対しても、大して気の利いたことをしゃべることのできない自分に取って、これから気まずい飲み会が幕を開けようとしていた。なぜ自分なんかが女の子の間と間に挟まれるような格好となってしまったのか。

 すべてミーヤーの差し金だ。何を企んでいるのか全く分からないが。

 しかしどのみち、このままだと自分がとてもつまらない男子として認定されて、またあの飲み会でのトラウマがよみがえりかねないため、そうなる前に機会をみて逃げ出そうと、この時の自分はそう思っていた。
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