コミュニティーサバイバル 〜生き延びた先に待つコミュニティーで追放されぬよう、本日も強制労働に心臓を捧げる日々〜

アモーレ ポン太

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無能生産者編

第28話 サービスが過ぎる

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「はいよ!テキーラに、バーボンに、ミルクにヒツジのラム肉だ!まだまだあるから一杯食えよ!」





 大将によって運ばれてきたのは、3人前のお酒、ミルク、ラム肉。と思ったが、よくよく見てみると、まるで10人規模でホームパーティーを行うときに出されるくらいの料理の量が出てきた。



 カウンターテーブルはその10人前の料理でほぼほぼ覆い尽くされた格好となっている。





「えええ!大将!これはいくらなんでも多すぎるよ。こんだけの量、とても1500ドヨルドチップじゃ足りないよ」





「いいんだよ。今日はミーヤーの帰還を祝して、出血大サービスだ!お前たちのおかげでこうして俺もこのコミュニティーの中で、前と変わらない商売と生活をおくれてるんだからな。感謝しかねえや。そんなわけで、今日は特別サービスだ」





「そうはいっても、とてもこんなんじゃ元とれないでしょ・・・」





 ペトラルカも当然ながら、ミーヤーと同意見であった。





「遠慮するな。今日は新しいお客さんもいるんだ。どんどん持ってくるからな!くえくえ!」





 そうして大将は裏手の厨房と思しき場所まで下がっていった。





「というか大将、わたしたちがいっつも来るたんびに出血大サービスしてない?」





「そうそう。いっつもサービスが過ぎるんだって・・・。そんで毎回料理残しちゃうもんね・・・」





 ペトラルカはそう言って、1つ大きなため息をつく。





 そもそも肉自体がコミュニティーの中では大変希少で、普段口にすることさえ、あまり公によしとされてないのでは?



 たしかにセバスティアーノがパワハラ現場監督の罪状のうちの一つを述べていた時、そんなことを言っていたような気がする。そんなの知ったことか!と言わんばかりに、ここでは肉をバンバン遠慮なしに出している。





「でも肉なんて、かなり希少ですよね?こんなにもサービスしていいものなんですか?」





 ベルシュタインは自身の右横に居るペトラルカにそのことを聞いてみる。





「う~~ん。本当はダメだけどね。だけどここの大将はミーヤーとわたしが一緒に来たときだけは、いっつもサービスしてくれるの」





「そうそう。わたしが外に行って帰ってきたときとか、だいたいそういう時にいつもここに寄っていくんだ。そして毎度毎度食べきれない量の料理を出してくるの」





「そんなわけで今回はベル坊やくんもわたしたちと一緒に居るわけだし、この3人で手分けして大将の料理を完食しよう!」





 ペトラルカはそう言って、自身の左拳を天に振り上げる。よくこれらの料理を目の前にして、そんなにハイテンションになれるよな・・・と思った。





「おー!今日もじゃんじゃん飲むよ~」





「本当に自分なんかがいただいても、いいんですかね」





「そう卑下しなさんな!わたし達と一緒に食べていいんだよ!」





 ミーヤーが自分にそう言い聞かせ、ペトラルカさんもそれに対し、うんうんと頷いた。





「わたし無能生産者のこと、町でいっつも出歩かされて働かされてる奴らってことしか知らなかったけど、だからと言って、目の前の料理を食べてはいけないってことないからね!」





「そうそう。せっかくこの世界になっても生き延びてきた同じ人間なのに、こうもして区別されなきゃいけないなんておかしいよ。どんな人間だって同じ命。等しくその命は平等なの。有能生産者、無能生産者の垣根なんて、ここにいる誰かさんが勝手につくったもの。そんなものに人生を定められなきゃならないなんておかしいよ」





「ペトラルカの言う通り!良く言ってくれた!ペトラルカがそう言ってるんだから、遠慮するな!さあ気落ちせずに食え!食え!食え!」





 そう言って、ミーヤーはバンバン自分の背中を思いっきし平手で叩いてきた。何発も何発も。





「痛い!痛い!」





 そう訴えるも、ミーヤーの平手は止まらない。これ以上叩かれると、背中にくっきりと彼女の手形が色濃く残りそうだ。





「もう~痛がってるじゃん。ミーヤー」





 ペトラルカはミーヤーの手をつかみ、それを止めようとしてくれた。それを見てにやりとミーヤーは笑みを浮かべる。





「ヒューヒュー。やっぱペトラルカってば、わたしがこうもベル坊にかまってちゃんだから、それでやきもちやいてやんの~」





「違うから!違うから!ただ痛がってるから止めようと思っただけ」





「またまた~。顔真っ赤にして~」





 またしてもこの2人の間でちょっとした小競り合いが勃発していた。喧嘩するほど仲の良いというのはこういうことなのだろうと思った。



 自分なんてひとたび他人と喧嘩、または言い争いをしようものなら、確実にその人との縁を切ることになってしまう。喧嘩をしてすぐ仲直りなんて、エレメンタリースクール時代(小学校時代)の幻想でしかなく、喧嘩したらそれっきりだ。そうしてお互い干渉することもないまま、疎遠になっていく。決して元に戻らずもろく壊れやすいもの。だからこそ自分は本音で人様に対してものを言えないのである。





 ミーヤーがからかって、ペトラルカがそれに対しちょっぴり怒る。こうした関係性は自分にとっては、うらやましいことこの上ない。



 ガラス玉のように1度壊れてしまったら、それっきり元に戻らないのではなくて、何度衝突しても決して壊れることのない弾力性のあるゴムのようなもの。それがまさしくこの彼女2人の関係性と言うものだろう。





 そして二人がいい争いをしているのをよそに、自分はヒツジの肉を一切れ食べた。ヒツジのラム肉はおいしかった。カステラおばさん牧場直送のヒツジ肉の鮮度はすこぶるいい。





「どうだい?味の方は?」





「自分にはもったいないくらいおいしゅうございます」





「はははは。それは結構なことだ。ほれここにコショウもあるから、味付けしてみるのもいいぞ。これはペッパーくんの農園でとれる貴重なものだ。遠慮せずにどんどんふりかけろ」





 さすがにコショウをふりかけすぎると、せっかくのヒツジの肉の旨味が抜け出しかねないため、適量をふりかけることにした。



 コショウをふりかけ口にしたヒツジ肉はさきほどよりも一味違い、コショウの風味とあわさってこれまた絶妙な味わいとなった。



 世界が崩壊する前においても、これだけの料理を食べた経験はそう何度もない。とてもとてもおいしかった。





「あっ!ベル坊、先にヒツジ肉食ってやがる!ずるい!わたしもいただきます!」





 こうしてあっさりと彼女たちの取っ組み合いはおわり、それぞれテキーラとバーボンと言ったお酒を飲んだり、フォークでヒツジ肉を召し上がったりした。





「く~たまらん!最高!」





「舌がとろけちゃう~」





 2人もヒツジ肉を食らって、早々にそのような声が上がった。自分も黙々とヒツジ肉をほおばり、時折カステラおばさんのミルクを飲んだりして、ごちそうをいただいた。





「ぷはーー!大将、テキーラもう1つ!」





「はいよ~!ペトラルカちゃんは?」





「わたしもバーボン追加で。あとミルクも」





「あ~忘れてた!わたしにもミルクもう1つ!」





「ミーヤー。そうはいってもまだ一口もミルクに手を付けてないじゃないか」





「不覚!そうだった!」





 ミーヤーはさっそくミルクの入ったガラスコップを手に取り、勢いよく飲み込む。





 ごくごくごく・・・・





「ゴホッ!ゴホッ!」





「もうミーヤーってば、慌てんぼうさんなんだから・・・」





 ペトラルカさんは、ミーヤーがせき込んだのを見て、カウンターに置かれてあるペーパーナプキンを2、3枚取り出し、ミーヤーに差し出した。





「ううっ・・・サンキューペトラルカ」





 ミーヤーはナプキンを受け取ると、口元についたミルクを拭き取った。





「というわけでミルクお代わり!大将!」





 ミーヤーはミルクを飲み干したガラスコップを大将に差し出した。





「はははは、そんなに慌てなくてもいいんだぞ。まだまだあるんだからもっと落ち着いて飲めばいいのに」





 大将はそう言いつつ、ミーヤーのガラスコップを受け取る。そこにミルクを注ぎ、そしてミーヤーに手渡した。





 こうして自分を含む計3人による飲み会がはじまりを告げた。
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