コミュニティーサバイバル 〜生き延びた先に待つコミュニティーで追放されぬよう、本日も強制労働に心臓を捧げる日々〜

アモーレ ポン太

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無能生産者編

第33話 共同生活宣言?

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「お邪魔しまーす」





 カステラおばさんが手でドアを押さえてくれている間に、ペトラルカはベルシュタインとミーヤーを背負いつつ、玄関に入った。





「・・・やっぱりベル坊やくんの方が断然軽かったじゃない」





 ベルシュタインとミーヤー2人を抱えていたペトラルカは、そう愚痴をこぼしつつ、カステラおばさんの家の廊下を歩いていた。泥酔しきっている2人を寝かしつけるための部屋へ、彼女はカステラおばさんの案内で向かっている最中であった。



 そしてカステラおばさんにその部屋へと通された。その部屋には1人用ベッドに、背の丈ほどのクローゼットが1つ、トックリランの観葉植物が置かれていた。ポプラ色の木を基調とした床に天井といった天然資材にこだわりある部屋だった。



 カステラおばさんに言われた通りに、2人をその部屋に唯一置いてある1人用ベッドにペトラルカはひとまず寝かした。



 しかしその1人用ベッドが小さいため、男のベルシュタインと女のミーヤーがお互い密着した距離感で寝かしつけられている格好となっていた。どことなくどちらか一方の目が覚めたら、危険な何かがおっぱじまりそうな予感がしてならない。



 そういった物事にとても疎く、うぶであるベルシュタインは特にそうだ。仮に彼がミーヤーより先に目が覚めてしまって、自身の横に彼女が寝息を立てているのをひとたび目撃してしまったら・・・といった思いもあって、ペトラルカはそっとカステラおばさんに、遠回しにこう言ったのである。





「・・・ちょっとちょっと!あの部屋のベッド、なんかやたらと小さすぎやしない?」





「ごめんね~ペトラルカ。今はあの部屋以外には空きがないのよ・・・何か問題でも?」





 カステラおばさんは若い男女が狭い1つのベッドで添い寝する形になっている状況に、全く無頓着と見えた。ペトラルカはそのカステラおばさんのものすごい鈍感ぶりに呆れながらも、もっと直接的な言い回しによって事の重大さをおばさんに伝えることとした。





「ほんとうにツインベッドなりダブルサイズのベッドってこの家にないの?あれじゃあ、2人の密着度が過ぎるんじゃないの?」





 カステラおばさんはそのペトラルカの一言を聞いて、ハッと手で口を押さえだした。





「そうね~うっかりしていたわ。男の子と女の子を一緒の部屋で寝かせるのって、あまり健全的じゃないものね。うっかりおばさんだわ~」





「うっかりしすぎだって!カステラおばさん。2人とも危険な年ごろなんだよ?」





「でもあいにく、この部屋しか空きがないのよ~。他の部屋は牧場のお手伝いさんのためにとってある部屋で埋まってるの。ごめんなさいねペトラルカ」





「それでも最悪、あのベル坊やくんとミーヤーは別々のところで寝させてよ。たとえばベル坊やくんだけあの部屋に残して、ミーヤーはリビングのソファーに移動させて、横にさせるとか・・・」





「たしかに間違いがあってからじゃ遅いものね。ならわたしがミーヤーを移動させておくわ。あなたもさぞ疲れたことでしょ?ゆっくりシャワーでも浴びて、カラダを休めておきなさいな」





「ありがとうカステラおばさん。お願いしてもいい?」





「もちろんよ。お安い御用だわ」





 そういうことで、カステラおばさんがミーヤーをソファーまで運び出してくれることになった。ペトラルカはその間にシャワーを使わせてもらい、今日の汗を流すことにした。





 さっそくペトラルカはカステラおばさんの家の浴室へと直行した。洗面所で服を脱ぎ、それをきちんと丁寧にたたんでから、棚に置いた。そして浴室へ入ってからシャワーでひと浴びしてきた。シャンプーやリンスは置いてなかったので、シャワーのお湯だけで全身をくまなく洗った。そうして一通り洗ってから、洗面所に置いてあったタオルでカラダを拭き拭きし、浴室を出た。



 しかしペトラルカはそこでとある重大なことを思い出した。





「しまった・・・替えの着替え忘れてた・・・」





 いざシャワーを浴びて出てきたものの、肝心の着替えを忘れていたのだった。





「このままじゃ家の中、素っ裸で歩かないといけなくなるじゃない・・・」





 ペトラルカにとってこれ以上の羞恥はない。ここが自身の家で、自身以外に誰も居ない状況なら心置きなく家の中を歩き回って、着替えを取ってくればいい。しかしここはよその家。堂々と素っ裸で人様の家の廊下を歩き回る非常識な真似は到底できないのである。





「ど・・・ど・・・ど・・・どうしよう・・・」





 ペトラルカは苦悶した。恥や外聞もかなぐり捨てて、カステラおばさんに自身の着替えを持ってきてもらうよう、このシャワー上がりの洗面所にて大声で頼みかけるしかないのか?と。しかし彼女にとってそれはとても気恥ずかしいことだった。いきなり洗面所から「着替え忘れちゃったの。取ってきてもらえない?」なんて大声で叫ぶマネなど、とてもできない。



 そうだ!バスタオルがあれば、堂々と家の中を歩けるじゃない!?そんな考えれば当たり前にわかるであろうそのことに彼女は気付く。そしてさっそくバスタオルを洗面所から探してみた。しかし・・・





「うう・・・どこにも見当たらない・・・」





 バスタオルの類は洗面所からはどこにも見当たらなかった。自身の手元にあるのは小さいハンドタオルのみ。しかもさきほどこのタオルでカラダを拭いたため、濡れている。いやこのハンドタオルが濡れているどうこうの問題ではない。この小さなタオル1枚では、とても彼女自身のカラダ全体を隠し通すことはできない。





「そんな・・・恥ずかしいよ・・・」





 タオルもねえ。服もねえ。ブラもパンティーもそろってねえ。こんな状況はいやだぁのピンチに立たされてしまったペトラルカ。やはりここはカステラおばさんに着替えを持ってきてもらうよう、ここから家じゅう響き渡るくらいの大声を出して頼み込むしかない。でもそんなことを大声で言うのは恥ずかしい。そんな葛藤にさいなまれていたペトラルカだったが、その時!彼女に助け舟が出されたのであった。





「ペトラルカのピンチはわたしがかけつけるよぉ~!」





 ドタドタとなにやら、誰かが廊下を走っている音がした。そしてその足音は洗面所の方に近づいていた。





 ガラガラガラ・・・





 唐突に洗面所のドアが開けられたと思えば、そこには上下寝巻きを手に抱えたミーヤーの姿があった。





「ペトラルカのピンチをいちはやく察知!」





「へっ?ミーヤー?」





 さっきまで酔っぱらって、ぐーすか寝ていたはずのミーヤーがペトラルカの前に現れた。





「カステラおばさんがペトラルカに着替えを届けてほしいって言うんで、配達しにまいりました!」





 そしてペトラルカの前に上下の寝巻きが手渡される。





「ほらほらはやく!これを着るったら着る!せっかくシャワー浴びたのにカラダが冷えちゃうよ」





 そうミーヤーに急かされ、ペトラルカはその寝巻きに素早く着替えたのだった。





 ミーヤーの意識が戻ったのは、カステラおばさんに部屋からソファーまで運び出されている最中のことだったらしい。そのときのミーヤーは、カステラおばさんにまるで旅行カバンを持つ感じで、軽々と片手で持ち上げられていたようだった。



 どうやらカステラおばさんは元々プロレスラーを生業としていたらしく、腕っぷしにはそれなりの自信があるのだとか。だから65キロに相当するミーヤーを軽々と持ち上げられたのだという。すでにおばさんがプロレスラーから引退して、それなりの月日が経っていても、その怪力はいまだ健在。そのパワーにミーヤーも思わず感服してしまったらしい。



 そうした話を2人でしながら、再びペトラルカはリビングへと戻っていったのだった。







 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~







「ありがとう。カステラおばさん」





 ペトラルカが着替えを持っていなかったことに気付いたカステラおばさんが、酔いから目覚めたミーヤーにわざわざ寝巻きを届けさせてくれた。彼女はそのことに関してまずお礼を言った。





「いえいえ。配慮が及ばなかった私の責任よ。ミーヤーも頼まれてくれてありがとう」





 カステラおばさんはペトラルカにそう謝罪するとともに、おばさん自身の頼みを聞き入れてくれて、実行してくれたミーヤーに感謝の言葉を述べた。



 ペトラルカにミーヤー、カステラおばさんが家のリビングにこうして集まったところで、カステラおばさんがおもむろに口を開いた。





「ちょっと2人にお願いがあるの」





「どうしたの?お願いって」





 ペトラルカがカステラおばさんにそう聞いた。





「実はずっとこの牧場の手伝いをしてくれてたオリビアとミクが、土砂処理作業に行って以来、まだ帰ってきてないの・・・」





「え?それってどういうこと?カステラおばさん」





 その2人のことを知らないペトラルカはそのように言った。





「2人が帰ってきてないから牧場の人手が足りないの。もしよかったら・・・・」





「もしよかったら?」





「あの子たちが戻るまで・・・・いや牧場の手伝いを新たにしてくれる方たちが見つかるまで、あなたたちにここを手伝ってほしいの」





 それはカステラおばさんからの急な、たってのお願いだった。





「土砂処理作業って、大勢の犠牲者を出したあれだよな?ペトラルカ」





「そう。そのオリビアとミクって言う人、もしかしたら・・・・」





 これ以上のことは、誰の口からも語られなかった。オリビアとミクがその犠牲者、行方不明者の中に含まれている可能性が高いという事実を・・・。





「でもそういうことなら、わたしは牧場を手伝うよ。ミーヤーはどう?」





「カステラおばさんが今困っているなら、手を差し伸べないわけないっしょ!」





「ありがとう。ペトラルカにミーヤー、助かるわ」





 カステラおばさんは2人お互いに握手で感謝の気持ちを示した。しかしそのカステラおばさんの感謝の気持ちがあまりにも強いあまりか、その握られた手にものすごい力がこもっていた。





「「痛い!痛い!痛い!」」





 ペトラルカとミーヤーがその痛みを訴えると、すかさずカステラおばさんは握手を解いた。





「あらごめんね。うっかり力が入り過ぎてしまったわ」





 ペトラルカとミーヤーらはそのカステラおばさんに握られたその手をおさえていた。





「今晩はカステラおばさんの家で泊まらせてもらうとして、翌日以降はわたしたちが元々住んでいる宿舎から毎日通い詰めればいいんだよね?」





「その必要はないわよミーヤー。今夜だけと言わずしばらくはここに居てもいいわよ。・・・・むしろあなたたちには一時的じゃなくて、ずっとここに居てほしいけど・・・」





「でもわたしたち武装班としての仕事もあるから、ずっとこの牧場での仕事につきっきりというわけにいかないしな~」





「それならさー、ベル坊やくんにずっとここに居てもらえばいいんじゃない?」





「どういうことだ?ペトラルカ」





 ミーヤーはペトラルカのそのことの真意を問いただす。





「ベル坊やくんには今の無能生産者の仕事から足を洗ってもらって、カステラおばさんが直々にベル坊やくんを雇えばいいんじゃない?わたしたちはさっきミーヤーが言ったみたいに武装班の仕事があるから、ずっと牧場につきっきりにはなれないけど、ベル坊やくんならカステラおばさんが新たに雇いさえすれば、ずっとこの牧場に労働力としておいておける!」





「なるほどそうすればベル坊を無能生産者から解放できて、そんでもって牧場での新たな仕事にありつける。それめちゃくちゃいいアイディアじゃん!でかしたよ!ペトラルカ!」





「うん!ベル坊やくんがここに就職すれば、わたしたち3人とも毎日顔を合わせることだってできる!」





「そいつはいいや!また毎日が楽しくなってくるね!どうカステラおばさん?ペトラルカの考え、いいと思わない?」





「大歓迎よミーヤー。とっても助かるわ。あなたたちもそれを望んでいるみたいだし、明日その旨をセバスティアーノさんに頼み込んでみるわ。それが通れば正式にあの子をここに迎い入れることができるわ」





「よし!そうとなれば決まりだな!・・・・ん?どうしたんだ?ペトラルカ。そんな浮かない顔をして」





「でも・・・一つ心配なことがあるの」





「心配なことって?」





 セバスティアーノといった単語をカステラおばさんが口にした途端、ペトラルカの表情が曇った。その異変に気付いたミーヤーがすかさずペトラルカを心配して声をかけた。





「本当にあのセバスティアーノがベル坊やくんの配置転換を認めてくれるかだよ」





「それなら問題ないよ。カステラおばさんが明日そのことを頼みに行ってくれるんだし。すんなりあのセバスティアーノも認めてくれるって」





「だったらいいけど・・・」





「問題ないわよペトラルカ。あなたたちのためにも絶対にあの子の配置転換を認めさせてくるわ。心配は無用よ」





「そうそう。カステラおばさんにかかれば何の問題もないよ」





「う・・・うん」





 ペトラルカはミーヤーとカステラおばさんにそう言われても、まだ腑に落ちていない様子だった。そのペトラルカの様子をよそにどんどん牧場でのお手伝いの事に関する話が進められていった。





「もちろんおばさんとしても、3人にただで働いてもらうわけにはいかないから、その分のチップをはずませてもらうわ」





「いいよそんなの。気持ちだけで十分だよ。ただのお手伝いなんだからボランティアでいいよ」





 カステラおばさんがこれから牧場のお手伝いをするにあたって、チップ代を仕事の見返りに払うと提案してきた。ペトラルカはあくまでもボランティアなんだからと言って、チップは受け取らない構えだ。





「いいじゃんペトラルカ。もらえるものはもらっとこうよ!別に減るもんじゃないし」





 ミーヤーはペトラルカと違って、カステラおばさんのチップを受け取るつもりでいた。





「チップは、わたしからの感謝の気持ちだから素直に受け取ってちょうだい。ボランティアかどうかなんて関係ないの。これは牧場を手伝ってくれてありがとうのほんの証あかしなんだから」





「そんなの別に気持ちだけで十分なのに・・・」





 ペトラルカはまだカステラおばさんからチップをいただくことに納得がいってないようだが、ミーヤーからの再三の説得もあり、彼女もようやく見返りとしてチップを受け取ることに決めたのであった。



 このようにベルシュタインのあずかりしらないところで、カステラ牧場での共同生活プランが練られていた。しかしこの共同生活プランは明日のセバスティアーノの裁量次第では、水の泡となる可能性もある。そんな不安の中、ペトラルカはこの共同生活を実現させることに余念がなかったのであった。

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