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第1章 沢田くんと恋の予感
沢田くんと心の声2
しおりを挟む心の声が聞こえるのは一見便利のように見えるけど、実はそうでもない。
試験の時はカンニングし放題! かと思いきや、みんなが黙っていろんなことを考えるおかげで、私は全く集中できなくて結局耳栓で全ての音をシャットアウトすることになる。
電車とかバスとか、公共交通機関の中も最悪だ。
若い男の人ならまだしも、おじさんのセクハラまがいの呟きは精神的にきつい。
私はそこでもイヤホンを耳に押し込み、音楽で雑音を上書きすることにしている。
あと、一番嫌なのは友達の恋愛に関する知りたくない情報を知ってしまうことだ。
「あっ♡ 森島くん、おはよ!【今日もカッコいいなあ。大好き!】」
これは麻由香ちゃんの声。
見ると、うちのクラスのイケメン二強のうちの一人、森島洸介が教室にやってきたところだった。
森島くんはサッカー部で髪も少し茶色くて垢抜けている爽やかイケメンさんなんだけど、
「おはよ、まゆちゃん【ああ、うぜえのにからまれた】」
心の中の声はなかなかの毒舌。キラキラの笑顔でこんなこと考えているんだから、モテる男子って怖いなあと思う。彼はその笑顔のまま、私たちにも声をかけた。
「杏里ちゃん【今日も美人だな】と佐藤さん【モブ女】もおはよう」
麻由香ちゃんと杏里ちゃんは下の名前で呼ぶのに、私はどうして苗字なのだろう。まあ、どうせモブ女ですからいいんですけど。
私たち三人の佐藤の中で、森島くんがもっとも好意を持っているのは杏里ちゃんだと思われる。三人の中で彼女が一番美人なのだから、まあ仕方ないかなと納得できる。
けれども麻由香ちゃんはそんなこと知るよしもないので、
【森島くんって私だけあだ名呼びだし、一番よくしゃべる! 絶対脈ありだよね】
などと思っている。
麻由香ちゃん、実はうぜえと思われてるよ?
一番よくしゃべるのは麻由香ちゃんが話しかけているからだよ?
……なんてこと、口が裂けても言えないし。
そもそも私は、麻由香ちゃんが森島くんを好きだなんて相談されてもいないから、余計な口を挟むのもおかしな話だ。友達が失恋しかけているのに知らぬフリをしなくちゃいけないのがつらみだなあ。
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