沢田くんはおしゃべり

ゆづ

文字の大きさ
59 / 160
第3章 沢田くんと炎のドッジボール

沢田くんと抜擢

しおりを挟む



【ドッジボールには嫌な思い出しかない。そう、あれはたしか小4の頃……。俺は何故かクラスの人気者の花井くんに一対一で勝負を挑まれ、負けたらみんなの前で変顔をさらせと言われてしまった。俺はコートの中を逃げて逃げて逃げまくり、たまたま転がってきたボールを拾って、無我夢中で投げた。それがなんか奇跡的に花井くんに当たっちゃって、花井くんが変顔を披露することに。あの時の花井くんの変顔、マジですごかった……! みんなは大爆笑してたけど、俺は感動して泣いちゃったんだよな。いやー、マジですごかったなーあの顔。全然覚えてないけど】


 覚えてないんかーい!
 花井くん、せっかく変顔したのに、かわいそう。


【もうあんな思いをするのは嫌だな……。そもそも人と戦ってボールをぶつけ合うなんて無理。休んじゃおうかな、スポフェス】


 優しい沢田くんはそんなことを考えていた。
 けれども、残念ながらそうはいかなかった。


 帰りのホームルームの時間になり、学級委員が作ってきたくじでチームを分けようとした時、森島くんが手を挙げてこう言ったのだ。

「チーム分けをする前に、チームのリーダーを決めない? 俺、Aチームのリーダーやるよ! 俺と一緒に戦いたい人、集合~!」

 盛り上げ上手な森島くんの一声で、クラスの半分以上の女子が一気に動いた。森島くんは

【やっぱ俺が一番モテるな】

 と満足そうにニヤニヤ。森島くんはこれが証明したかっただけみたい。
 すると男子の一部がぶうぶうと文句を言い始めた。

「女子ばっかりそっち行ったらバランス悪いじゃん【ちくしょー、森島のやろう調子に乗りやがって!】」
「そーだそーだ!【森島、コロス!】」
「Bチームにも女子をよこせーっ!」

 殺伐とした不穏な空気が教室中に広がった。
 沢田くんはその時、おじさんとおばさんを相手に「どうすれば母ちゃんに怒られずにスポフェスを休めるかな?」と相談していて、彼だけすっかり別次元にいた。
 ところが。


「じゃあBチームのリーダーは沢田にしようぜ!」


 女子を呼び込みたい男子たちが、沢田くんを一気に表舞台へと引きずり出す一言を発したので、私はびっくりして沢田くんを見た。

 沢田くんは見事にキョトンとしていた。


「えっ?【いま、誰か俺の名前呼んだ?(・Д・)】」


 えっ? じゃないよ。
 沢田くん、Bチームのリーダーに推薦されたんだってばよ!!


しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

さようなら、お別れしましょう

椿蛍
恋愛
「紹介しよう。新しい妻だ」――夫が『新しい妻』を連れてきた。  妻に新しいも古いもありますか?  愛人を通り越して、突然、夫が連れてきたのは『妻』!?  私に興味のない夫は、邪魔な私を遠ざけた。  ――つまり、別居。 夫と父に命を握られた【契約】で縛られた政略結婚。  ――あなたにお礼を言いますわ。 【契約】を無効にする方法を探し出し、夫と父から自由になってみせる! ※他サイトにも掲載しております。 ※表紙はお借りしたものです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

処理中です...