沢田くんはおしゃべり

ゆづ

文字の大きさ
145 / 160
第6章 沢田くんと夏の恋花火

沢田くんと……

しおりを挟む


「もういいよ。沢田くんが来てくれただけで嬉しい」
 私は微笑んだけど、沢田くんは顔をあげてくれない。


「それだけじゃない。今までのことも……【親と佐藤さんの板挟みになって、やっと気づいたんだ。森島くんたちと行くか、俺と行くかで板挟みになった佐藤さんの辛い気持ち……。それなのに俺ってやつは、森島くんと俺どっちが大事なの? なんて子供みたいなことを言って、佐藤さんを困らせて……。ああああの時の俺のバカバカバカバカ! あんぽんたん! おたんこなす!!!(((((;`Д´)≡⊃)`Д)、;'.・】」


 沢田くんの肩が震えている。
 私は沢田くんに一歩近づいた。


【こんな俺、さすがに嫌いになったよな、佐藤さん……】


「沢田くん」

 震える肩にそっと触れると、沢田くんが前傾姿勢のまま驚いたように顔を上げた。
 目の前いっぱいに沢田くんの顔。
 打ち上がる花火さえ見えないくらい近づいて、


 彼の唇にキスをした。


 聞こえるのは、真上で弾ける花火よりも大きな、私の鼓動だった。
 それから、沢田くんの……。



【ひゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ~~~⁉︎:(;゙゚'ω゚'):】



 最大級のパニクり声。


 じんじんと甘く切ない熱の余韻を残してそっと唇を離すと、回路が壊れて放心状態の沢田くんがいた。


 
【あっ……あっ……い、いま、佐藤さん……。゚(゚´ω`゚)゚。俺に……キ、キ、キ……】

 
 沢田くんの顔が夜目にも分かるほどみるみる赤くなっていく。
 もうだめ、可愛すぎてたまらんっ!
 私は沢田くんの浴衣の胸に抱きついた。


「好き……!」


 ドーンとでっかく三尺玉。パラパラと落ちる光が、流れ星みたいに尾をつけて、夜空に大輪の花を咲かせる。

 私はそれを、沢田くんの腕越しに見えた川面の光の中で感じた。
 こんなに綺麗な花火は、初めて。


「大好きだよ、沢田くん……」
「佐藤……さん……【俺もーーー!!!。゚(゚´Д`゚)゚。♡♡♡♡♡♡】」


 花火を見ている人々が、抱き合う私たちを祝福するように歓声を上げた。


しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】 今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。 「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」 そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。 そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。 けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。 その真意を知った時、私は―。 ※暫く鬱展開が続きます ※他サイトでも投稿中

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

三年の想いは小瓶の中に

月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。 ※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

後宮なりきり夫婦録

石田空
キャラ文芸
「月鈴、ちょっと嫁に来るか?」 「はあ……?」 雲仙国では、皇帝が三代続いて謎の昏睡状態に陥る事態が続いていた。 あまりにも不可解なために、新しい皇帝を立てる訳にもいかない国は、急遽皇帝の「影武者」として跡継ぎ騒動を防ぐために寺院に入れられていた皇子の空燕を呼び戻すことに決める。 空燕の国の声に応える条件は、同じく寺院で方士修行をしていた方士の月鈴を妃として後宮に入れること。 かくしてふたりは片や皇帝の影武者として、片や皇帝の偽りの愛妃として、後宮と言う名の魔窟に潜入捜査をすることとなった。 影武者夫婦は、後宮内で起こる事件の謎を解けるのか。そしてふたりの想いの行方はいったい。 サイトより転載になります。

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

処理中です...