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第1章 沢田くんと絶海の孤島
沢田くんと夏休み
しおりを挟む夏休みになりました。
どこかでうるさいくらいセミが鳴いている。今朝のテレビで気象予報士が今日の最高気温は33度になる見込みだと言っていた。湿度はなんと94%だって。蒸し風呂に入っているみたいで、肌がベタベタして不快感が半端ない。
だけど私は無敵ですから!
世界がどんなコンディションだろうと心はノーダメージ!
だって何しろ、夏休みだもん。
私と沢田くんの、初めての夏が来たんだもんね!
「行ってきまーす!」
私は涼しい玄関から真夏の日差しが照りつける外の世界へと、ウキウキしながら飛び出そうとした。
「景子~! どこ行くの? 買い物?」
追いかけてきたのはお母さんの声だった。私は振り向いて、「うん、ちょっとね」とうなずく。
あっ。申し遅れましたが私の名前は佐藤景子と言います。
ありふれた平凡で地味な名前(全国の佐藤景子さんごめんなさい)に負けることなく、性格も見た目も平々凡々としていてみんなからモブだなんて言われてしまう私だけど、数日前にそんな人生を一変させちゃうような大事件が起きました。
そう、皆様もお察しの通り──彼氏ができたのです!!
「じゃあついでにお醤油買ってきてくれる? お釣りはあげるからこれで」
って、お母さん。私の自己紹介が盛り上がってきたところに空気も読まずにお金を渡しに来るんじゃないよ。
「えーっ? 三百円って。こんなんじゃお釣り出ても数十円じゃない! 普通は一万円くらいくれるよね」
「バブル期のサラリーマンみたいなこと言ってんじゃないわよ。ほら、五百円。これ以上は無理」
しょっぱい家庭の事情をそんな赤裸々に告白しないでよ。なんだこの現実的な会話。
なんだかすみません、いきなり地味で。
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