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第3章 沢田くんと別荘の愉快な仲間たち
沢田くんと安らぎの声
しおりを挟む忍者からパットを受け取るや否や。
私は温泉に首まで浸かった。
乳白色のお湯の中で、こっそりパットを付け直すためだ。
「パット……?」
沢田くんが不思議そうに呟いている。
【パットって、何だろう? それとも、俺の聞き間違い? バットか? コウモリ? まさかこんなところで野球のバットを渡したわけじゃないだろうし……いったい、何なんだ(´・з・`)ウーン】
忍者から渡されたパットが、沢田くんからは角度的に見えなかったようだ。
【佐藤さんに聞いたら悪いのかな。でも気になる(´・з・`)ウーン】
それだけは聞かないで~!!
穴があったら入りたい。
私は鼻の下までお湯に浸かって隠れようとした。すると、目の前に立っていた忍者がまた何かをお湯の中から取り出した。
「あなたは正直なので、この金のパットも差し上げましょう【m9(^Д^) プギャー】」
そんなもの、どっから出て来た。知らないよ!!
クッソ! この人、まだ湖の女神ごっこしてる! もう温泉神なんて呼んでやらない、こいつは忍者! かなり意地の悪い方の忍者!!
【あっ! 今、金のバットって言った? 金……バット……黄金バット?(´・з・`)】
誰が昭和初期のヒーローだ。若い人が知らないネタはやめて!
ああ、頭がクラクラする。
ちょっと興奮しすぎちゃったかな……。
「さ、佐藤さん! 佐藤さ……ん⁉︎」
乳白色のお湯が耳の中に入って、沢田くんの声が歪んだ。
泡がブクブクと鼻から漏れて、浮かんでいく。
あれ?? これ、私、沈んでない?
目の前が乳白色で──濁って何も見えない。
【佐藤さーーーん!!。゚(゚´Д`゚)゚。】
* *
気がつくと、涼しい風に当たっていた。
胸の上にはバスタオル。体の下には冷たいフローリングの床。
薄く目を開けてみたらロッカーが並んでいるのが見えた。ここは更衣室かな。
涼しい風の正体は扇風機のようだ。私に向かって固定されている優しい風が気持ちいい。
それにしても、どうして私はここに?
【佐藤さん、大丈夫かな(;ω;)温泉でのぼせちゃうなんて、可哀想】
近くで沢田くんの声がする。
私のことを心配している声だ。
もしかして、沢田くんが私を運んでくれたのかな?
【まだ暑い? それとも寒い? 早く服を着させてあげたいけど、暑かったら可哀想だしなあ(;ω;)】
私の額にそっと手が置かれる。
こ、これはもしかして、沢田くんの手?
【ゆっくり休んでね、佐藤さん。あの怖い顔の人は先にご飯を食べに行っちゃったけど、俺はいつまでも佐藤さんのそばにいるよ】
優しい声。穏やかで、心地よくて、安らげる。
でも、待って。
……っていうことは、今、私たちはここで二人きり……?
ひゃあああ、どうしよう! これじゃあまたのぼせちゃうよ!
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