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婚活、する?
恐怖のランチ①
しおりを挟む「それで、何も言わずに別れたの⁉︎ なに考えてんの? バカじゃない⁉︎ 浮気したのはそいつなんでしょ⁉︎」
「うん。まあ、そうなんだけど……」
ヒロ君と別れた翌日、昼休みに入ったお蕎麦屋さんでも、私は同僚の須崎沙羅に怒られた。
沙羅は私と一番仲のいい同期だ。よく飲みに誘ってくれるし、仕事の日はほぼ毎日一緒にランチをする。ただ、こうして外食に行くのは珍しい。普段、私はヒロ君の朝ごはんを作るついでに自分のお弁当を作って持って行っていたからだ。今朝はその必要がなくなり、朝食も手抜きで適当になってしまったからお弁当は作らなかった。
私がランチに沙羅を誘うと、彼女はすぐに私の腫れぼったくなった瞼の異変に気がついて「昨日、何かあったの?」と尋ねてきた。そこで、昨日の一件を打ち明けて──今に至る。
「あんたね、お人好しが過ぎるよ? 慰謝料でも貰わなきゃ! 小鳩の彼氏……ああ、もう元カレか。無職だったんでしょ? 小鳩が養ってたようなもんじゃん。それなのに小鳩を振るってどういうこと? しかも浮気? 信じられない!」
「そうだよねえ。ありえないよね……。でも私にも悪いところがあったのかも」
「どこが? 三食きっちり食事作ってあげてさ、洗い物に洗濯に掃除、なにひとつ手伝わない奴を嫌味も言わずに支えてたんでしょ? あんたたちが付き合ってた時は言うの遠慮してたけど、はっきり言ってあいつはクズだよ。あんな奴のどこが良かったの?」
「ブレないところ……かな」
「は?」
「純粋で、信念があったから自分に合わない仕事が続けられなかっただけ。そこまで自分っていうものを持っているところは尊敬できるんじゃないかと……」
ヒロ君だって、最初からクズだったわけじゃない。同棲を始めたばかりの頃はたまに料理をしてくれたり、掃除をしてくれたりしていた。だけど仕事がうまくいかなくなって、上司と喧嘩になって自分から会社を辞めてしまってから、だんだんと家事をサボるようになってしまった。
自分に合う仕事が見つかったら、きっと生活態度も真面目になって、ちゃんとするはずだと思っていた。私のこともいつか「支えてくれてありがとう」って感謝してくれるんだと信じて……いたんだけど。
「でも、ヒロ君にしてみたら私の甘やかしが原因でいつまでも浮上できなかったんだっていうことらしいの。私がもっと叱咤激励してあげていたらあそこまでダメになることもなかったんだって。私の優しさが間違ってたみたい。だから……私が悪かったのかなって」
「違う! バカ! 全面的に悪いのはあいつ!」
沙羅の方が泣きそうな顔をして私を叱りつけた。
「あんたはよくやったよ。よくあんなクズに三年も」
「三年半」
「三年半、ながっ! ああ、悔しい! こんなことになるんだったら、さっさと別れるべきだったのに! それに、あいつからじゃなくて小鳩の方から見切りをつけてさっさと振ってやるべきだったんだよ!」
「そんなこと、できなかったよ」
初めてできた彼氏だった。二十五歳にして初めて男の人から告白されて。いい思い出の方がたくさんある。
こんな地味な私に、むしろヒロ君はもったいないくらいの彼氏だったのかもしれない。そばにいるだけで幸せだったなと思っている。
「今頃どうしてるのかな……。今日中に荷物をまとめて出ていくって言ってたんだけど、もう次の住処は決まってるのかな。ご飯とかどうしてるんだろう」
「心配なんかするなっ! あんなヤツのたれ死んで当然なんだから! でも……悔しいけどどうせ次の女の家にでも行ったんだろうね。もう、次の女に即フラれて捨てられればいいのに!」
「そうしたら戻ってくるかな?」
半分冗談で言ったら睨まれた。
「戻ってきても追い返しなさいよ」
「……はい」
私にちょっと自信がないのを見越したのか、沙羅は眉間に皺を寄せた。
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