鷹×鳩

ゆづ

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婚活、する?

恐怖のランチ②

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「あんたさあ、もうちょっと自分に自信持ちなって。化粧だって女子高生よりあっさりしてるでしょ。やり方分かんないなら私が教えてもいいし、今は動画でメイクの勉強もできるじゃん。顔立ちは悪くないんだから、もうちょっと目立つように頑張りな! 一生その陰気くさい雰囲気で生きるの? もったいないよ! まだ二十代なんだから!」
「あと二年で三十路だけどね」
「そうだよ、売り込むのが遅いくらいなんだから、もっと焦りなって! いい男はどんどんこれからいなくなるんだよ?」
「そういえば、沙羅が憧れていた営業部の山田課長さんも最近結婚したって聞いたね……」
「山田課長! マジ凹む!」

 沙羅は残念そうに頭を抱えた。さっきから百面相を見ているみたいで面白い。

「あとうちの会社で生き残ってるイケメン、何人いる? って感じ。開発部の佐野さんと、経理部の星野さんと、総務部の岩田さんと……」
 
 沙羅が指折り数えている時、蕎麦屋にどこか見覚えのある顔が入ってきた。
 身長180センチ越えの黒髪で切れ長のクールな瞳。

「……鷹野さん」
「ああ、そうね。鷹野さんもいたか。でもあの人だけはパス。冷たいし、性格悪そうだもん。あんなのでよく営業成績トップをキープできてるなって不思議に思うわ」
「ちょっと、沙羅」

 鷹野さんが後ろにいることにも気づかず、沙羅が話し続ける。

「あの人、同期の沖田さんが取ってきた仕事を横から奪って自分の成績にしちゃったらしいよ。よくそんなクズい真似ができるよね。いくらイケメンで仕事ができても人としてはね……」
「沙羅ってば、ちょっと!」
「あんたたち、どこの部署の人?」

 恐れていたことが目の前で起きた。沙羅の背後に鷹野さんが立ち、皮肉な笑みを浮かべて言う。
 
「顔面がいいって褒めてくれてありがとう。それも俺の武器なんで、評価はありがたく受け取っておく。その他のことは、あんたらがどう思おうと知ったことか。こっちは全く気にしないから、そっちも気にせず食事を楽しんで」

 沙羅は振り向けもせず固まっていた。だから、彼の視線は面と向かっている私に向けられている。
 
「人の悪口は最高のおかずになるだろ」

 彼の革靴の足音が遠ざかるまで、私たちは一言もしゃべれなかった。

「……こっわ」
「血の気引いたね」

 会社の近くの店で会社の人の噂話なんてするもんじゃない。私は一言もしゃべっていなかったけど。
 その後、私たちは粛々と昼飯を食べ終えた。次に沙羅がいつもの調子で口を開いたのは、店を出てから会社に戻る途中のことだった。
 

「今度さ、合コンやろうよ。営業部と経理部に知り合いいるから、どちらかでかっこいい独身の人見繕ってもらうわ」
「私はいいよ。失恋したばかりだし……」
「失恋したばかりだからでしょ! あんな男、すぐに次の恋をして忘れるの!」
「そう簡単にはいかないって」
「さっきの営業部の狂犬が怖いなら経理部に頼んでみよっか。とにかく小鳩は日取りが決まるまでにバッチリメイクの勉強して、自分に自信をつけること!」
「無理だってば……」

 沙羅はイケるイケるなんて軽く言って笑い、オフィスが入ったビルの回転ドアを軽やかに潜り抜けていった。

 
 
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