社くん家は居心地がいい

ゆづ

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妖怪シェアハウスとドキドキ同棲生活

妖怪哲学と第一のトラブル

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「おかえり、尚之介。爺さんから俺の話を聞いてきたか?」
「何でもお見通しのようですね」

 畳の上で呑気に茶を飲んでいるぬらりひょんの正面に僕は正座した。

「帰ってください。今すぐ、神社に」
「ええ~」

 ぬらりひょんは湯呑みをちゃぶ台に置いてゴロンと横になった。

「やだ。ここがいい。ここに住む」

 落ち着け。
 ここは冷静に、説得しなければならない。
 膝においた拳を握りしめ、僕は表情を引きしめた。

「あなたは妖怪の神様なんでしょう? あなたが神社からいなくなれば日本中の妖怪が困るんじゃないですか?」
「それは違うね」

 寝っ転がったままぬらりひょんが言う。

「俺は別に妖怪どもに対して悪さをすんなって注意したことなんて一度もないのさ。俺があの神社にいようといまいと関係なく、あいつらはいつだって好き勝手にやってんの。だいたいなあ、妖怪が悪さをするっていうのからして間違いだからな?」

「そう……なんですか?」

「お前らは自分が下手こいたとき、『うっかり魔が差した』とか言って、訳の分からないものが自分を操って出来心を起こさせたんだなんて言い訳するだろ? 例えば、目覚まし時計が鳴らなかった時、自分が設定し忘れたことも忘れて誰かが目覚ましを止めたんだなんて言い訳する奴が何割かいるだろ? その訳の分からん悪さをする誰かを妖怪って呼んで、自分は悪くないと思い込もうとしてるのさ。自分の失敗を俺ら妖怪に押し付けて、俺らを言い訳に使って、許されようとしてんのよ」

 そう言われると、人間の方が悪い気がしてしまう。

「言い訳をしたい人間の気持ちが俺らを生み、俺らを必要とする。だから人間が生きている限り俺らは消えないし、いなくならない。ま、世の中そういうことだ」
「ううん……」

 うっかり納得させられそうになってしまう。

「心配すんなって。俺がどこにいようと、トラブルが起きる時は起きる。起きない時は起きない。何かがあったらそん時解決すりゃあいい」

 ぬらりひょんが呑気に目を閉じてあくびをした時だった。


「氏神様ーっ!」


 いきなりドアが開いて、誰かが飛び込んできた。


 飛び込んできたのは小学生くらいの可愛い双子の女の子だった。よく見ると、片方の女の子のお尻にはキツネのしっぽがついており、キツネのケモミミが頭についている。もう片方の女の子も同様だが、もう片方の子はタヌキのそれだった。

「神社が大変なんですう」
「ヤバいっす、大変っす!」
 二人は口々にそう言って、寝ているぬらりひょんに飛びかかった。
 
「いきなりトラブル起きてるじゃないですか」
「ええー」

 ぬらりひょんはそれでもまだゴロゴロしている。妖怪の子どもたちはぬらりひょんの周りをグルグル駆け回ったり飛び跳ねたりしている。

「ちょっと、暴れないでください! うち、壁紙薄いので! 近所から苦情が来ます!」
 僕も慌てて二人を捕まえようとするが、ケモノのように素早くて全く捕まえられない。 

「ぬらりひょんさん、何とかしてください!」
「やだ。俺、めんどいの嫌い」
「それでも氏神か! 話だけでも聞いてやってくださいよ!」

 このままじゃ僕の部屋がめちゃくちゃになる。
 叫びたいのを堪えて頭を下げる。

「お願いします、ぬらりひょんさん!」
「んもー。だったら尚之介が話を聞けばいいじゃん。俺、妖怪銭湯の番台やった疲れでもう何にもしたくないんだよね」
「自業自得か⁉︎」

 もう、らちが開かない。

「分かりました。僕が代わりに話を聞きます」
 僕がそう言うと、たちまちキツネとタヌキがピタリと走るのをやめた。

「大丈夫かなあ。この人間、めちゃくちゃ弱そうだよ……」
「ヤバいっす。マジヤバいっす」
「君たち、可愛い顔してけっこう失礼だね?」

 
 お兄さん、堪忍袋の緒が切れそうだよ。


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