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同棲スタート
展開が早すぎる
しおりを挟む「先ほどは取り乱しまして、申し訳ありませんでした」
「いえいえ、こちらこそ」
ようやく現状を把握してくれた美彌子さんは畳に三つ指をついて頭を下げた。僕も正座をして畳に額をつける。
顔を上げると、美彌子さんの頬は若干赤く染まっていた。
「帰る家が修復するまでの間ですが、こちらにご厄介になります。改めて、自己紹介を致します。氏家美彌子、18歳です。夜神神社で巫女のアルバイトをしています。小さい頃に両親と死別しまして、現在は正右衛門さんが親代わりとなって面倒を見てくださっています」
「そうだったんですね。僕は社尚之介、18歳です。T大学の法学部一年です。現在は地方にいる親と離れてここで一人暮らしをしておりますので、遠慮なくここを使ってください」
「分かった。遠慮なく使うわ」
僕たちの横でぬらりひょんが遠慮なく茶を飲んでいる。
「あなたは遠慮してください!」
「あの……どなたに向かってお話を?」
美彌子さんはキョトンとしてしまった。僕は驚いてぬらりひょんを二度見する。
「美彌子さんに見えてないんですか? 妖怪の総大将なのに?」
力の強い妖怪は誰でも見えるとコンとポンが言っていたが。
「俺たち妖怪は朝に弱いんだよ。まだ寝てる時間なのにお前らがドタバタして起こされちまった。ふわあああ。これ飲んだら二度寝してくるわ」
ぬらりひょんは大あくびをした。
朝になって僕たちが大きくなったのも、ぬらりひょんの力が弱まったせいらしい。
「そこに誰かいらっしゃるんですか?」
「いえ、何でもありません」
「もしかして、妖怪ですか⁉︎ それとも幽霊⁉︎ このお部屋はもしや事故物件⁉︎」
「いえいえ、違います! 僕の勘違いでした」
「なんだ……事故物件じゃないんですか……。事故物件だとお家賃が安くなると聞いていたんですが」
美彌子さんはガッカリと項垂れた。
「大丈夫です。家賃は全額僕がお支払いしますし、生活費も出しますから」
「えっ⁉︎ 本当ですか⁉︎」
すると美彌子さんはキラキラした瞳を僕に向け、僕の両手をギュッと握った。
「なんて気前の良いお方なのでしょう。私……一生あなたのおそばにいたいです」
「は……⁉︎ そ、それは、展開が早すぎませんか⁉︎」
僕は目がぐるぐる泳いでしまって、美彌子さんが目の前にいるのに何も見えなくなってしまった。
「み、美彌子さんのお家が元に戻るまでの間だけです! 一時的な同居ですから、ご安心ください!」
僕は慌ててキッチンに立ち、二人分の食事を用意した。
「僕は大学に行ってきます。それが終わりましたら美彌子さんに必要なものを一緒に買いに行きましょう。いつまでもパジャマのままでは外にも出られなくて不便でしょうし、僕の服で良かったら何でもお貸しします。家の鍵のスペアはこちらに。それではまた後ほど!」
こうして、今朝の僕は慌ただしく家を出た。
行ってらっしゃいとにこやかに送り出してくれた美彌子さんのおっとりとした笑顔と声は記憶の片隅に置かれ、時々不意に現れては僕をドキッとさせた。
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