社くん家は居心地がいい

ゆづ

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黒羽、襲来

問題あるわ



 フラつきながら詰め寄ると、ぬらりひょんは申し訳なさそうに眉尻を下げた。

「あーあ、尚之介もちょっと食らってるな?」
「何のことです?」
「美彌子が入っていた桜の湯の匂いを嗅ぐと、頭がボーッとして夢と現実の区別がつかなくなるんだよ」
「は……⁉︎」

 僕は思わずぬらりひょんの胸ぐらを掴みそうになった。

「なんでそんなことを!」
「この世界とあっちの世界を行き来するのに疑問を持たれると説明するのが面倒になるだろ? だからあらかじめ、湯に入った後のことは記憶が曖昧になるように薬草を仕込んでおいたんだ。現に、美彌子は突然家に戻ってきたのに疑問に思っていなかっただろ? 薬草のおかげで半分正気を失った状態だったわけだ」
「そんな……それじゃあ、僕も美彌子さんの匂いを嗅いだせいで……?」

 言われてみれば、美彌子さんに抱きつかれてから妙に頭がボーッとした感覚があった。あれは薬草の効果だったのか。
 それにしたって、混乱しすぎだろう。うっかり愛の告白までしてしまうなんて。

「氏神様、ごめんなさあい」

 声に振り向くと、更衣室からぴょこんとキツネの耳が飛び出していた。

「ボクたちが間違えて、美彌子さんのお湯に惚れ薬の薬草も混ぜちゃってましたあ」
「ほ……れぐすり……?」
「はあい! ごめんなさい、色が似てるので間違えちゃったっす!」
 
 たぬきの耳もぴょこんと飛び出る。

「そうか。なぜ美彌子と尚之介があんなに突然ラブラブになったのか不思議に思っていたんだが、そういうことか」
「怒ってますかあ?」
「ぜーんぜん。どうせ美彌子は覚えてないだろうし、一晩経てば効果は無くなるし、問題ないだろ」
「問題あるわ!!」

 僕はとうとう堪忍袋の緒を千切ってぶん投げた。

「あなたたちのせいで死ぬほど恥ずかしい思いをしたじゃないですか!!」
「まあまあ、落ち着けよ尚之介。お前も美彌子に抱きつかれていい思いをしたじゃねえか。あんなの惚れ薬の効果がなけりゃ絶対あり得んラッキースケベだぞ? むしろ俺に感謝しろよ」
「ふざけないでください!!」

 僕は逃げるぬらりひょんを追いかけて狭い部屋中を走り回った。とっ捕まえてワンパン喰らわそうと思ったのだが、のらりくらりとしながらも素早いぬらりひょんの動きには残念ながらどうしてもついていけなかった。



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