遠い記憶、遠い未来。

haco.

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孤独の園

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「フィーッフィーッフィーッ」

遠くから、ゴジュウカラが鳴く声が聞こえてきた。

崩れた街並みを潜り抜けて、細い道へと入っていくと山合間を潜り抜ける。

「ときわ公園」まで来るとそこから見渡す景色は圧巻だった。

見渡す限り、海と街並みだけが存在していた。

おそらく広範囲に、住宅があった形跡がある。浜辺に棚やテーブルなどが倒れたまま、老化していた。

津波の影響で被害を受けていて半分以上は、海と化していた。

セイカは久しぶりの高台から見る景色に思わず声をあげた。

「うわあ、綺麗・・・」

眩しく映る海と空気の境界で反射していていた光がさざめいている。

映し出された太陽の光はこの街を照らしていてさざ波の音も浮き立つような風景が映し出されていた。

海を見つめると今日もどこかでくじらのくーちゃんは泳いでいるのだろうとふと思ってしまう。

公園の古い木造ベンチに手をかけると、ボロっと崩れていく。

大量の水分を吸い込んだまま、2000年も待ち続けていたんだから、老化するのも当然なのだろう。

敷地内を歩いてみる。

芝生と横転している茶色に腐った自転車がどこもかしこもある。
横切りながら徒歩をすすめていくと動物園の看板が見えてきた。

動物園内から、野生臭い匂いが伝わってくる。

まだ、生きている動物達はいるのだろうか。

駐車場を抜けて正門入口まで来た。

入口を抜けて入ると、なにも鳴き声も聞えては、来なかった。

静かすぎる動物園は不気味さえも思ってしまう。

「シロテナガザル」のプレートが見えてきたが、肝心のおサルさんは存在していなかった。どこかに行ったのだろうか。

他の区域も見回して見るが、生き物はいなかった。


「はあ、結局私1人なのかな」

1人しかいない動物園は、孤独さえ感じてしまう。

園内マップを見ながら、来た道を入口まで歩いていく。

「さてと、悩んでないで進むきゃない!」

今は、先に進むしかない。彼が待つ北海道まで。

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