遠い記憶、遠い未来。

彼の心

静かな街の中、ホテルにたどり着くと、電気がついていることに気づいた。

夕方に佇むホテルは、外観から灯っていた。

こんなことができるのは「山内透吾」しかいない。
この街の原動力は彼が動かしている。

ロビーへ入っていくと、長く続く廊下が左右に広がっていた。

こんなに綺麗なホテルが誰もいないことにセイカは寂しさを感じていた。

「誰かいますかーーー？」

いないことを知っているのに、なぜか言ってしまう。

「いるはずないもんね」

ため息を吐きながら、レストランの方まで向かう。

「透吾さん、います？」

店内を見渡してみたが、それらしき人物は見つからない。

ただ、いい匂いだけが漂っていた。

匂うだけでお腹が自然となっている。

「お腹すいたわね。確かに」

バイキングコーナーに、パンやご飯など、いろんな料理が並んでいた。

「透吾さんなのね。やっぱり」

「でも、ここにはいないような気がする」

ただ、セイカの心に話かけてきたような気がした。

「ここでゆっくりと過ごしなさい」と。

その夜、セイカはホテルを満喫して、久しぶりのベッドで優しく包まれたまま
朝を迎えた。