遠い記憶、遠い未来。

haco.

文字の大きさ
113 / 121

予知と夢

しおりを挟む
鳥の囀りと朝日が部屋に差し込まれている。

カーテンを半開きにしていたせいで目に染みていた。

「まぶしい・・・」

思わず手で塞いで、閉じていた目を開けた。

ホテルの一室で寝ていたのに、セイカは思わずため息がもれた。
久しぶりのベッドで寝れたのに幸せを感じていた。


「うーーーん!」手を伸ばした。

「やっぱベッドで寝るのは気持ちいいわね」


ここは、函館市。市内にある「リゾートホテル OTAL」

なんとも、北海道らしい名前である。
ただリゾートではないとツッコんでしまうことが。
この場所から海が遠いところに見えるからだ。

レストランまでエレベーターに乗って一階まで向かうと、鏡越しにうつる自分とご対面をしてしまう。
エレベーター内は、セイカ1人のために動いてくれている。
すっかり、お姫様気分になっていた。

一階まで降りる音が聞こえては、すぐにレストランへと向かった。

朝ご飯はたしかに作られていた。

あさりの味噌汁とご飯にかけるようの卵が小皿に盛ってある。炊飯ジャーに炊ける音と匂いが
レストランを包み込んでは、セイカのお腹の音が返答しはじめた。

「ありがと。透吾さん」

旅を通じて透吾の過去を知ってきたこともあった。

ミユの母は、山内透吾自身のことをずっと日記を通じて、記録してきた。
その日記を旅と共に歩んできて、透吾の過去がわかってきた。

昨夜も一室で夜遅くまで最後の日記を読んでいた。


          ※

「1985年12月16日」


神隠しにあったかのように透吾は、何ヶ月間もいないことがあった。
だいたいが深夜の1時ぐらいに帰ることが多い。

何度か聞いてみるが、口を開かなかった。
ただ、なにかを急いでるように見える。

それがなになのか、私は知るよしもなかった。

「1986年1月30日」
突然のことだった。早朝、私が起きてからリビングに向かうと彼は
私を待っていた。

「あなたが書いている日記、ありますよね。」

知らないはずなのに、突然のことだった。

「私に見せなくていいんですが、私のことを記録していてください。これを読むものに」

読むものに?私は疑問を抱いた。彼はなにかを隠している、というかなにかを実行しようとしている。
頭によぎった。

その頃から透吾と私の距離になにか不安なものが漂いはじめた。

          ※
セイカは、合間に入っていたであろう、ページがちぎられているのに気づいた。
何度か書いてはゴミ行きにしたのだろう。
次のページを開くと年号は変わっていた。

「1987年5月6日」

私は、透吾についてほんとの目的であるか、確信ではないがわかってきたような気がしてきた。
先の未来がわかることでなにかを成し遂げようとしている。
ただ、「それ」がわからない。 

ただ、言えることは綴っているこの日記はその「誰か」に渡すものである。


          ※

次のページを開くと真っ白が続いているだけだった。
透吾は、私にこの日記を見せるために、彼らを操作してきたのかもしれない。
「中田家」を。

そして、私を創造してこの世界の「アダムとイブ」を作ろうとしている。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ

ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます! 貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。 前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

【12月末日公開終了】これは裏切りですか?

たぬきち25番
恋愛
転生してすぐに婚約破棄をされたアリシアは、嫁ぎ先を失い、実家に戻ることになった。 だが、実家戻ると『婚約破棄をされた娘』と噂され、家族の迷惑になっているので出て行く必要がある。 そんな時、母から住み込みの仕事を紹介されたアリシアは……?

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

処理中です...