あの頃の夏には

haco.

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遠い空

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夕方の17時に生徒たちの名簿に目を通していた。

初日の仕事すれば、教員としての子供たちの名前を覚えることだった。
時刻は、17時30分となっている。

「もうこんな時間か・・」

手を上に伸ばし背中も伸ばした。

「うーーん」

「そういや、昨日は水族館行ったな・・。寧々はやっぱりかわいいなあ・・」

ふと思い出しかのように夢の中の自分を思い出す。

寧々がいて、その周りには幸せな家族がある。彼女の住んでいる場所も調べればわかる。
でもそれはしないでいた。お互い、別に知る必要がないのだから。

ただ、小さい頃、寧々がまだ赤ちゃんの頃の苦労は今でも思い出す。
母の離婚をきっかけに寧々と恵美は、父がいない寧々を恵美と母の紀子が、子育てをするとバイトをする量を
減らさないといけなかった。母一人では、大変でさえ恵美も朝起きてから湯船に浸けてあげたりしていた。
寧々は特に夜泣きが激しく起こされる毎日。

そんな思いを優斗も夢人であれば、恵美の気持ちに揺れ起こされていた。


「優斗さんって、彼女いるんですね」

ふと横を振り返ると、小松先生が声をかけてきた。

「あ、いや、夢の話というか・・・」

「いいですよ。隠さなくても。・・・・恋、してるんですね・・・」嬉しそうに後ろ髪にまとめた小顔の小松先生が言ってきた。

「ただの妄想ですよ。」まるで誤魔化してるような言い方で優斗は言った。


まさに、妄想の夢の世界なのかもしれない。

ただ、いつからだろうこの夢を見始めたのは、物心着く頃からだった。
遠い青い空を見つめながら、ふと思い出していた。

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