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出会い
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最初こそ、その美麗な容姿に静まり返ったクラスだが一限の授業が終わり休み時間になると柏木さんの席には男女の人だかりが形成されており
「前はどこに住んでたの?」
「何か部活に入ったりする?」
「納豆にはネギ入れるタイプ?」
等々美少女相手に尽きない質問を投げかけていた。
いや、一つクレヨンしんちゃんみたいな質問が聞こえたぞ。転校生は次々に投げかけられる質問に一つ一つ丁寧に答えていた。ちなみに納豆にネギは入れないタイプらしい。
そんな柏木さんの人気は昼休みのランチタイムにも健在で、ご飯を食べる口よりも喋る口の方が幾分多い取り巻きは鵜匠に向けて口をぱくぱくと動かす鵜に見えてくる。
俺はというと普段と変わらず健人と弁当を食べていた。
「柏木さんの人気っぷりは一体いつまで続くんだろうな」
アイドルとのお食事会さながらの光景を見ながら呟く。
「いつまでって、強いて言うなら一生だな。あの容姿で性格も良いときたもんだ」
既に質問攻めなどでクラスメイトの過半数と会話をしていた柏木さんは、その人当たりの良さもすっかり認知されておりそれは俺と健人も例外ではなかった。
「確かにな。神様が本当にいるなら人間に対するパラメーターの振り分け基準を教えて欲しいもんだ」
「そんなの適当に決まってんだろ」
「なんでそんな事言い切れるんだよ?」
「いや、まぁな。うん、間違いなく適当だ」
健人はこちらを見ながら妙に自信と納得に満ちた顔で頷く。
「お前みたいなパラメーターを振り忘れた人間を作るくらいだから」
「お前それ人の事言えんのかよ……」
反論をしつつ、しかし俺の視線は健人ではなく健人の弁当箱に向いていた。
「よし、お前のハンバーグは俺が食う」
すかさず健人が大事に抱えている弁当箱に箸を伸ばし恐らくメインディッシュであろうハンバーグをひょいっと素早く盗み食いしてやった。
「おぉ、これはなかなか!白飯がすすむぜ」
「おい、他人のおかずですすむな!じゃあお前のジュースは俺が飲む!」
「おい、ばかっ!」
俺が阻止しようと手を伸ばすもするりと交わした健人の手は机に置かれていた紙パックをぎゅっと雑巾よろしく握りしめるとまだ半分以上残っていた俺のジュースを一気飲みしやがった。
というか結局俺が損してるじゃねぇか……。
「全部飲みやがって……。しかたねぇ、ちょっと自販機行ってくるわ」
完全に戦意と飲み物を喪失した俺は肩をすくめる。
「おぉ、行ってらっしゃーい」
紙パックに刺さったストローを噛みながらニヤリと白い歯を見せ、手をひらひらと振る友人に怒りを覚えながらも、もはや反撃する事はなく俺は席を立った。
自販機でお茶を買い教室に戻ろうとすると、きょろきょろと校内を物珍しそうに見まわしながら歩く柏木さんが見えた。財布を持ってこちらに向かってくるため、彼女も飲み物を買いに来たのだろう。
改めて真正面から見た彼女はやはりとても可愛らしく男子ばかりか女子までも一日を経たずして半日で虜にしてしまうのが納得できた。
築年数と共に積み重ねてきた汚れの目立つこの凡庸な校舎でさえ彼女が歩いているとまるで彼女のために用意された映画のセットのように思えてしまう。これがもし本当に映画なら俺は一時間映画のうち十秒程度背景に映る超脇役なんだろうな……。通行人Zとかだぜきっと。いや、通行人はそんなにいらないからやっぱり出演すら出来ないかもな……。
そんな事を考えながら無意識に視線に力が入ってしまっていたのか、彼女も俺に気付いたようでこちらに小走りで歩み寄ってきた。「やばっ……」と緊張が顔に走ったのとほとんど同時に彼女は喋る。
「宗太。同じクラスなんだね、よろしくね!」
近くに来ると甘い香りがふわっと香る。何これ、沖縄のフルーツより甘い香り。俺の中で癒し効果のある香り第一位が天日干しした後の布団から柏木さんに塗り替えられた瞬間である。ちなみに第二位は犬猫の肉球の匂いだ。なんか知らんけどポップコーンみたいな香りするんだよな。
「うっ……」
嗅いだことのない甘い香りに思わずたじろいでしまい、さらには緊張で言葉に詰まる。俺は元々そんなに多くの友人がいる訳ではない。つまり女友達なんてもっと少ないし話す機会もつまりは少ない。別に、用事でもあれば女子とも普通に話すし緊張もしない。だが、今目の前にいる彼女は他のクラスメイトとは何か違うように感じる。身に着けている制服こそ同じだが身に纏っているオーラが違うように感じた。この異様なオーラ、念能力者の可能性も捨てきれない。
それにしても、初対面にしてはやけにフランクな挨拶だが柏木さんレベルの真のリア充ともなるとこのくらいのアメリカンなノリが丁度いいのだろう。もちろん俺はそんなアメリカンなノリは持ち合わせが無く、せいぜいベジタリアンな友人がいるのが精一杯なためぎこちない笑顔で返事をするのがやっとだった。
「こ、こちらこそよろしく。何か困ったことがあったら何でも言って」
現状で口から出せる目一杯の社交辞令を返す。我ながらこの緊張の中、当たり障りなくしかし親切丁寧に返事が出来たと褒めてやりたい。むしろ柏木さんに褒めてもらいたい。
「うん、ありがとう」
可愛らしい顔を小さく縦に振りながらそう言われると、自分の顔が紅潮していくのが分かった。
俺と柏木さんの出会いはそんな感じで、実に青春に富んだ甘酸っぱいものだった。
「前はどこに住んでたの?」
「何か部活に入ったりする?」
「納豆にはネギ入れるタイプ?」
等々美少女相手に尽きない質問を投げかけていた。
いや、一つクレヨンしんちゃんみたいな質問が聞こえたぞ。転校生は次々に投げかけられる質問に一つ一つ丁寧に答えていた。ちなみに納豆にネギは入れないタイプらしい。
そんな柏木さんの人気は昼休みのランチタイムにも健在で、ご飯を食べる口よりも喋る口の方が幾分多い取り巻きは鵜匠に向けて口をぱくぱくと動かす鵜に見えてくる。
俺はというと普段と変わらず健人と弁当を食べていた。
「柏木さんの人気っぷりは一体いつまで続くんだろうな」
アイドルとのお食事会さながらの光景を見ながら呟く。
「いつまでって、強いて言うなら一生だな。あの容姿で性格も良いときたもんだ」
既に質問攻めなどでクラスメイトの過半数と会話をしていた柏木さんは、その人当たりの良さもすっかり認知されておりそれは俺と健人も例外ではなかった。
「確かにな。神様が本当にいるなら人間に対するパラメーターの振り分け基準を教えて欲しいもんだ」
「そんなの適当に決まってんだろ」
「なんでそんな事言い切れるんだよ?」
「いや、まぁな。うん、間違いなく適当だ」
健人はこちらを見ながら妙に自信と納得に満ちた顔で頷く。
「お前みたいなパラメーターを振り忘れた人間を作るくらいだから」
「お前それ人の事言えんのかよ……」
反論をしつつ、しかし俺の視線は健人ではなく健人の弁当箱に向いていた。
「よし、お前のハンバーグは俺が食う」
すかさず健人が大事に抱えている弁当箱に箸を伸ばし恐らくメインディッシュであろうハンバーグをひょいっと素早く盗み食いしてやった。
「おぉ、これはなかなか!白飯がすすむぜ」
「おい、他人のおかずですすむな!じゃあお前のジュースは俺が飲む!」
「おい、ばかっ!」
俺が阻止しようと手を伸ばすもするりと交わした健人の手は机に置かれていた紙パックをぎゅっと雑巾よろしく握りしめるとまだ半分以上残っていた俺のジュースを一気飲みしやがった。
というか結局俺が損してるじゃねぇか……。
「全部飲みやがって……。しかたねぇ、ちょっと自販機行ってくるわ」
完全に戦意と飲み物を喪失した俺は肩をすくめる。
「おぉ、行ってらっしゃーい」
紙パックに刺さったストローを噛みながらニヤリと白い歯を見せ、手をひらひらと振る友人に怒りを覚えながらも、もはや反撃する事はなく俺は席を立った。
自販機でお茶を買い教室に戻ろうとすると、きょろきょろと校内を物珍しそうに見まわしながら歩く柏木さんが見えた。財布を持ってこちらに向かってくるため、彼女も飲み物を買いに来たのだろう。
改めて真正面から見た彼女はやはりとても可愛らしく男子ばかりか女子までも一日を経たずして半日で虜にしてしまうのが納得できた。
築年数と共に積み重ねてきた汚れの目立つこの凡庸な校舎でさえ彼女が歩いているとまるで彼女のために用意された映画のセットのように思えてしまう。これがもし本当に映画なら俺は一時間映画のうち十秒程度背景に映る超脇役なんだろうな……。通行人Zとかだぜきっと。いや、通行人はそんなにいらないからやっぱり出演すら出来ないかもな……。
そんな事を考えながら無意識に視線に力が入ってしまっていたのか、彼女も俺に気付いたようでこちらに小走りで歩み寄ってきた。「やばっ……」と緊張が顔に走ったのとほとんど同時に彼女は喋る。
「宗太。同じクラスなんだね、よろしくね!」
近くに来ると甘い香りがふわっと香る。何これ、沖縄のフルーツより甘い香り。俺の中で癒し効果のある香り第一位が天日干しした後の布団から柏木さんに塗り替えられた瞬間である。ちなみに第二位は犬猫の肉球の匂いだ。なんか知らんけどポップコーンみたいな香りするんだよな。
「うっ……」
嗅いだことのない甘い香りに思わずたじろいでしまい、さらには緊張で言葉に詰まる。俺は元々そんなに多くの友人がいる訳ではない。つまり女友達なんてもっと少ないし話す機会もつまりは少ない。別に、用事でもあれば女子とも普通に話すし緊張もしない。だが、今目の前にいる彼女は他のクラスメイトとは何か違うように感じる。身に着けている制服こそ同じだが身に纏っているオーラが違うように感じた。この異様なオーラ、念能力者の可能性も捨てきれない。
それにしても、初対面にしてはやけにフランクな挨拶だが柏木さんレベルの真のリア充ともなるとこのくらいのアメリカンなノリが丁度いいのだろう。もちろん俺はそんなアメリカンなノリは持ち合わせが無く、せいぜいベジタリアンな友人がいるのが精一杯なためぎこちない笑顔で返事をするのがやっとだった。
「こ、こちらこそよろしく。何か困ったことがあったら何でも言って」
現状で口から出せる目一杯の社交辞令を返す。我ながらこの緊張の中、当たり障りなくしかし親切丁寧に返事が出来たと褒めてやりたい。むしろ柏木さんに褒めてもらいたい。
「うん、ありがとう」
可愛らしい顔を小さく縦に振りながらそう言われると、自分の顔が紅潮していくのが分かった。
俺と柏木さんの出会いはそんな感じで、実に青春に富んだ甘酸っぱいものだった。
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