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ガクガク学園生活
1-2 旅は道連れ
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「おら!」
身長180cm強の暴漢は薪割り斧で袈裟に斬りかかってきた。体は自動的に避ける。落ちそうな卵をキャッチする反応に近しいナチュラルな動きだった。
攻撃の瞬間の男が無舗装の道を踏みしだく音、衣擦れ、果ては関節部と握る柄のきしみまで聞こえた気がした。
体感速度が上がっただけではない。なんというか、予備動作に理由やストーリーを感じるのだ。振りかぶれば角度や速度重みが分かるから効率良い体捌きが分かるというか。
殺意の初体験を終えた僕は頭が火照っている。急激にギズモフさんへの怒りが沸いてくるが、それを口にする余裕はない。攻撃がまた来る。
肌の上で服を掠める斧の重量感、通過した斧の起こす微かな風、掠めた時に発する、しゃりん、と刃物を研ぐような金属音。
二、三回と来る攻撃を避けつつ考えていた。
アドレナリンか? 全てが遅い、体だけが知っている時間軸で動いている 。当たれば、やっぱり、なんて言葉が白々しい位の即死なんだろうか?
あ、この斧錆びてるし刃こぼれ凄い。鈍いから痛そうだな。嫌だな。
「当たらねぇ!」
「どけ」
ふわりと背中に感触。実際の物理的な、というより延長された体感、予感の類だ。斧をいなして後ろを見るとボウガンを装填した細身の男と目があった。
射出された短矢は気流に乗って飛ぶ紙飛行機程の速さで、たわみみながら飛来しているのが見て取れる。
このままだと射線上の斧おじも危ない、かといって矢に触るのもなんか嫌なので、左からくる槍おじと一緒に突き飛ばす。
「反射神経と魔力感知がずば抜けている! 戦闘系の適性で間違いない」
「やっぱり助けたい」
「アイナちゃん? 君のクラスメイトを信用出来ないのかい?」
「ぬー」
「頑張れユーリくーん!」
ギズモフさんは野球観戦でもする様に嬉々として応援している。パンなんかで感謝した僕が馬鹿だった。
起き上がった野盗二人の挟み込む刃。危機に対して僕の体は自然に動いた。
「カレント、カレント……スマイトからのエナジーボルト」
二方向からの攻撃を魔力により受け流し、重心を崩した所で魔力放出による全方位打撃、次弾装填中の男の頬には魔力礫のクリーンヒットを見舞う。
よろめき起き上がった盗賊は気絶したボウガン男を二度見した後に全速力で逃げて行った。
大の大人相手にこの立ち回りは自分でも驚く。授業? か何かで習った気がするような。
「君、大分本格的だねぇ! その歳で省略詠唱を使いこなすなんて」
「そりゃどうもっ!!」
「オーバーカレントの実用例なんて初めて見た。圧力差を利用した小技なんかも凄く実戦的だし」
駆け寄ってきたギズモフさんは、僕の足踏みにじりを受けなが続けながら尚もしゃべくり続けた。
急にギズモフさんの目付きが変わる。
「アイナちゃんは聞いても君の事教えてくれなかったけど、これで素性に察しがついたよ、君」
「だめ!!」
アイナは叫び、ギズモフさんへと走りだす。
彼女はギズモフに掴みかかり激しくゆする。
「君、ッ瞭▼头〓!ω2~/<だね?」
なんだ? 機械音?鳥獣の悲鳴? 物凄く不快な合成音がギズモフさんの声と重なる。
そんな事よりアイナが心配だった。
うなだれ、膝から崩れたアイナがギズモフさんの足元で泣きじゃくっている。俺はアイナに駆け寄り肩を抱く。
アイナは大粒の涙を浮かべながら、『行っちゃやだ』と小さく繰り返している。僕は彼女を力いっぱい抱き締める。
「いやーあの体運び、運用、芸術だ! 改訂版NA・CQCカリキュラムを越える極近接魔術」
「何言ってるか分からないけど、僕はやっぱり貴方が嫌いだ! ギズモフ!! こんな小さな娘、アイナを泣かせて」
「私だってこんな事したくはないさ」
平坦で掠れた声が聞こえた。僕は彼の事が妙に気になって目を移す。そこにはやはり僕とアイナを見下ろす、ご機嫌な彼の顔があった。
聞き違い、だろうか。
いやぁごめんね、ギズモフさんはそう言うと僕とアイナを抱き起こし、道を行く。
僕達はついていくしかない。
「あと少しで発着場に着く。ハッサリアも近隣住民の理解があれば別だったのに」
「発着場?」
「ワイバーン便だよ。金持ち連中は生活を乱す少しの要素も抜け目なくケチを付ける……あちらと変わらないね」
「嘘だ」
「ここをどこだと? 異世界だもの、竜位はいるさ」
数分後、僕の『ドラゴンを見たい』という夢が実現する。雑に雑木林を切り開いただだっ広い広場には、大きな小屋が2つと、竜がいた。でも。
「間近に見ると、なんか、なんか……違う」
竜、というより空飛ぶトカゲって感じだ。ドラゴンと言うより痩せ細ったプテラノドン。まあ、ワイバーン=竜で解釈した自分が悪い。
小屋にはデカデカと汚い字で『オズボーン航空、ワイバーン2便、3便』と書かれていて既にげんなり。
それになんか獣臭い!
「リアルはそんな物さ。支配人!」
ギズモフさんは大型バッグから何かを探しながら叫ぶ。小屋で休んでいた小太りの男は、ギズモフさんが探し出した黄色い羊皮紙を受け取った。男はこちらを手招きしている。
「ワインバーグ兄妹ですね? 」
「ハンバーグ」
アイナがぼつりと呟く。
「ん?」
「あ、いえ大丈夫です、はいその二人です」
僕が慌てて取り繕うと、男はにこやかな表情で手頷き、一番奥の小屋に消える。アイナは普段ゆったり低燃費な割に、食べ物の事になると活発だなぁ。
僕はギズモフさんに近付く。
「さっきの傍観、僕はあれにも怒ってますよ」
「あぁ、私が仕込んだあれか。大丈夫死刑囚だよ」
「は?」
「当たり前だよね? あんなフラグヴィンっヴィンのシチュありえないよ」
開いた口が塞がらない。何が目的なんだ?
身長180cm強の暴漢は薪割り斧で袈裟に斬りかかってきた。体は自動的に避ける。落ちそうな卵をキャッチする反応に近しいナチュラルな動きだった。
攻撃の瞬間の男が無舗装の道を踏みしだく音、衣擦れ、果ては関節部と握る柄のきしみまで聞こえた気がした。
体感速度が上がっただけではない。なんというか、予備動作に理由やストーリーを感じるのだ。振りかぶれば角度や速度重みが分かるから効率良い体捌きが分かるというか。
殺意の初体験を終えた僕は頭が火照っている。急激にギズモフさんへの怒りが沸いてくるが、それを口にする余裕はない。攻撃がまた来る。
肌の上で服を掠める斧の重量感、通過した斧の起こす微かな風、掠めた時に発する、しゃりん、と刃物を研ぐような金属音。
二、三回と来る攻撃を避けつつ考えていた。
アドレナリンか? 全てが遅い、体だけが知っている時間軸で動いている 。当たれば、やっぱり、なんて言葉が白々しい位の即死なんだろうか?
あ、この斧錆びてるし刃こぼれ凄い。鈍いから痛そうだな。嫌だな。
「当たらねぇ!」
「どけ」
ふわりと背中に感触。実際の物理的な、というより延長された体感、予感の類だ。斧をいなして後ろを見るとボウガンを装填した細身の男と目があった。
射出された短矢は気流に乗って飛ぶ紙飛行機程の速さで、たわみみながら飛来しているのが見て取れる。
このままだと射線上の斧おじも危ない、かといって矢に触るのもなんか嫌なので、左からくる槍おじと一緒に突き飛ばす。
「反射神経と魔力感知がずば抜けている! 戦闘系の適性で間違いない」
「やっぱり助けたい」
「アイナちゃん? 君のクラスメイトを信用出来ないのかい?」
「ぬー」
「頑張れユーリくーん!」
ギズモフさんは野球観戦でもする様に嬉々として応援している。パンなんかで感謝した僕が馬鹿だった。
起き上がった野盗二人の挟み込む刃。危機に対して僕の体は自然に動いた。
「カレント、カレント……スマイトからのエナジーボルト」
二方向からの攻撃を魔力により受け流し、重心を崩した所で魔力放出による全方位打撃、次弾装填中の男の頬には魔力礫のクリーンヒットを見舞う。
よろめき起き上がった盗賊は気絶したボウガン男を二度見した後に全速力で逃げて行った。
大の大人相手にこの立ち回りは自分でも驚く。授業? か何かで習った気がするような。
「君、大分本格的だねぇ! その歳で省略詠唱を使いこなすなんて」
「そりゃどうもっ!!」
「オーバーカレントの実用例なんて初めて見た。圧力差を利用した小技なんかも凄く実戦的だし」
駆け寄ってきたギズモフさんは、僕の足踏みにじりを受けなが続けながら尚もしゃべくり続けた。
急にギズモフさんの目付きが変わる。
「アイナちゃんは聞いても君の事教えてくれなかったけど、これで素性に察しがついたよ、君」
「だめ!!」
アイナは叫び、ギズモフさんへと走りだす。
彼女はギズモフに掴みかかり激しくゆする。
「君、ッ瞭▼头〓!ω2~/<だね?」
なんだ? 機械音?鳥獣の悲鳴? 物凄く不快な合成音がギズモフさんの声と重なる。
そんな事よりアイナが心配だった。
うなだれ、膝から崩れたアイナがギズモフさんの足元で泣きじゃくっている。俺はアイナに駆け寄り肩を抱く。
アイナは大粒の涙を浮かべながら、『行っちゃやだ』と小さく繰り返している。僕は彼女を力いっぱい抱き締める。
「いやーあの体運び、運用、芸術だ! 改訂版NA・CQCカリキュラムを越える極近接魔術」
「何言ってるか分からないけど、僕はやっぱり貴方が嫌いだ! ギズモフ!! こんな小さな娘、アイナを泣かせて」
「私だってこんな事したくはないさ」
平坦で掠れた声が聞こえた。僕は彼の事が妙に気になって目を移す。そこにはやはり僕とアイナを見下ろす、ご機嫌な彼の顔があった。
聞き違い、だろうか。
いやぁごめんね、ギズモフさんはそう言うと僕とアイナを抱き起こし、道を行く。
僕達はついていくしかない。
「あと少しで発着場に着く。ハッサリアも近隣住民の理解があれば別だったのに」
「発着場?」
「ワイバーン便だよ。金持ち連中は生活を乱す少しの要素も抜け目なくケチを付ける……あちらと変わらないね」
「嘘だ」
「ここをどこだと? 異世界だもの、竜位はいるさ」
数分後、僕の『ドラゴンを見たい』という夢が実現する。雑に雑木林を切り開いただだっ広い広場には、大きな小屋が2つと、竜がいた。でも。
「間近に見ると、なんか、なんか……違う」
竜、というより空飛ぶトカゲって感じだ。ドラゴンと言うより痩せ細ったプテラノドン。まあ、ワイバーン=竜で解釈した自分が悪い。
小屋にはデカデカと汚い字で『オズボーン航空、ワイバーン2便、3便』と書かれていて既にげんなり。
それになんか獣臭い!
「リアルはそんな物さ。支配人!」
ギズモフさんは大型バッグから何かを探しながら叫ぶ。小屋で休んでいた小太りの男は、ギズモフさんが探し出した黄色い羊皮紙を受け取った。男はこちらを手招きしている。
「ワインバーグ兄妹ですね? 」
「ハンバーグ」
アイナがぼつりと呟く。
「ん?」
「あ、いえ大丈夫です、はいその二人です」
僕が慌てて取り繕うと、男はにこやかな表情で手頷き、一番奥の小屋に消える。アイナは普段ゆったり低燃費な割に、食べ物の事になると活発だなぁ。
僕はギズモフさんに近付く。
「さっきの傍観、僕はあれにも怒ってますよ」
「あぁ、私が仕込んだあれか。大丈夫死刑囚だよ」
「は?」
「当たり前だよね? あんなフラグヴィンっヴィンのシチュありえないよ」
開いた口が塞がらない。何が目的なんだ?
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