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ガクガク学園生活
1-3 旅は道連れ
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「魔力も帯びない一般人が君の様な能力持ちに触れられるとは思わない。今頃は街に帰れず魔物に食われてるか、警備隊に殺されて」
「命をなんだと!」
「君はなんだと思う? 命ってさ……これ、お願い」
ギズモフさんが僕に布の包みを押し付け、続ける。
「自分の力を理解し役割を全うし、理想としてでなく、農夫のように来るべき未來を耕す。今を生きて現実問題として対処する。その結果がこの行動だよ」
「だからあの命の扱いはしょうがないと?」
「自己弁護はしないよ。護衛対象を観察するのに都合よく人命を使うなんて事。私はね、命は最も価値ある通貨だと思ってるよ。平和という対価に相応しい通貨だ」
揺るぎない言葉、頑なな意思と気迫。アイナは不安になったのか僕の手を握る。
「こちらでの殺人はあちらで罪に問われないしね。私はやるべきだと思う事を自分に出来る方法で実践した。君が間違いだと思うなら、止められるならやればいい。私は自分の能力不足を承知して選択してきた」
「……とにかく、僕は嫌だ!」
説得こそされなかったが反論はできなかった。僕は命と平和の価値について考えは及ばない。正統性を感じてしまった自分を恥じ、また恥じた自分を否定したくてこんな強い態度にでていた。
彼はまたあの能天気な笑顔を浮かべ、僕の肩を叩く。
「こんな暗い話やめようよ。お別れ位明るくね?」
「いっしょに行くんじゃないんですか?」
ギズモフさんはバッグの整理をしながら頷く。
「急用が出来てね。そのワイバーンは高級種だからしっかり学園まで運んでくれるよ。安心して。到着したら垂れ目のお姉さんいると思うから詳しくはそちらから」
ギズモフさんが帰ってきたオーナーに目線を送ると、来た道を戻り始める。
僕がその背に言葉を掛けようとすると、彼は振り向かず手を振る。
かけるべき言葉が何かある気がしてもやもやするけど、それを上手く形にする事はできなかった。
「ゆりち!」
「……あぁ、うん?」
「お腹」
二人の沈黙。質問しようとする僕に横槍を入れる形でアイナのお腹の音が長~~~く鳴り響く。
減ったの一言くらい省略するな。しかもさっき食べたばかりだろ。
「お二人さん、そろそろだよ」
「いよいよか。ほら行こう?」
「うむ」
僕とアイナはオーナーの導きに従いワイバーンに乗る。緑色のワイバーンは思ったより体高があり、四段ある踏み台を使っても、背中に固定された客席に座るのは一苦労だ。ぴょんぴょんと跳ねるアイナを抱き上げ座らせると、竜は立ち上がり羽ばたき始める。揺れは中々だ。
「タイミングいいな。言葉がわかってたりして」
「当たり前だよ……全く、人族の小童め」
「ワイバーンさん話せるの!?」
「あ、あんた私達の言葉が分かるのかい! 私のこれは竜言語だよ?」
「ゆりち、すごい!」
ワイバーンの羽ばたきが驚愕からか収まっていく。
ワイバーンである彼女? の反応と、アイナの向ける羨望の眼差しからして、皆分かるわけではないみたいだ。
高級種と言うのは言語を解するという意味だったらしい。道理で運転手がいない訳だ。
「ただのガキんちょだったら道中のツマミにでもしようかと思ってたのに」
開かれた口の奥に光る牙を前にすると、あまり笑えない。ワイバーンは再度羽ばたき初める。
重力と風に翻弄された髪が顔の上で激しく乱れ始めた。
「嬉しいねぇ。私らの言葉が分かるなんて学者さんかい? サンジェリン行きならさぞ高名な方なんだろう」
「高名じゃないけど、まあそんな所です……にしても、凄い!」
「あらまあ珍しい。空は初めてだね? じゃあ……サービスにかっ飛ばすよ!」
急上昇と加速。飛び上がるだけで体が揺さぶられた体験からそれなりの負荷を覚悟していたけど、ワイバーンさんの額の装飾品が光を放つと揺れが収まる。激しい風は緩和され、心地よい風が体を包む。
速度はジェットコースターばり、だけれどもすれ違う小山や林との距離感からスピード感は比較にならない。障害物と障害物の間を突き抜け、山に川にと景色を切り裂いて進む気分は、さながら自分が燕になったみたいだ。
「凄いねアイナ!……アイナ?」
アイナは口を固く結んでいる。
「ちょっと」
「ん?」
「ちょびと怖いかも」
よく見るとアイナは震えていた。僕は彼女の手を握りしめる。
小さく暖かな手はやがて震えるのを止め、しっかり握り返す。
「安心して」
「……わかってるね君」
「なんでそんな偉そうなんだ」
「ゆりちの為。しょうがないから安心してあげる」
ふふん、と鼻を鳴らすあたり本当に思ってそうだなコイツ。
「二人とも仲良いねぇ」
ワイバーンさんはそう言って喉を鳴らす。猫みたいだ。打ち解けたら意外にも近所のおばちゃんみあるキャラで良かった。
これで『我が~』とか言われていたら対応に困っていた。
タクシー運転手じみた業務に就いたドラゴンに高飛車Lv99の態度をとられたら困惑するだろう。
竜族に可愛いなんて言ったらプライド傷付くかな。
爬虫類、好きなんだ。
「命をなんだと!」
「君はなんだと思う? 命ってさ……これ、お願い」
ギズモフさんが僕に布の包みを押し付け、続ける。
「自分の力を理解し役割を全うし、理想としてでなく、農夫のように来るべき未來を耕す。今を生きて現実問題として対処する。その結果がこの行動だよ」
「だからあの命の扱いはしょうがないと?」
「自己弁護はしないよ。護衛対象を観察するのに都合よく人命を使うなんて事。私はね、命は最も価値ある通貨だと思ってるよ。平和という対価に相応しい通貨だ」
揺るぎない言葉、頑なな意思と気迫。アイナは不安になったのか僕の手を握る。
「こちらでの殺人はあちらで罪に問われないしね。私はやるべきだと思う事を自分に出来る方法で実践した。君が間違いだと思うなら、止められるならやればいい。私は自分の能力不足を承知して選択してきた」
「……とにかく、僕は嫌だ!」
説得こそされなかったが反論はできなかった。僕は命と平和の価値について考えは及ばない。正統性を感じてしまった自分を恥じ、また恥じた自分を否定したくてこんな強い態度にでていた。
彼はまたあの能天気な笑顔を浮かべ、僕の肩を叩く。
「こんな暗い話やめようよ。お別れ位明るくね?」
「いっしょに行くんじゃないんですか?」
ギズモフさんはバッグの整理をしながら頷く。
「急用が出来てね。そのワイバーンは高級種だからしっかり学園まで運んでくれるよ。安心して。到着したら垂れ目のお姉さんいると思うから詳しくはそちらから」
ギズモフさんが帰ってきたオーナーに目線を送ると、来た道を戻り始める。
僕がその背に言葉を掛けようとすると、彼は振り向かず手を振る。
かけるべき言葉が何かある気がしてもやもやするけど、それを上手く形にする事はできなかった。
「ゆりち!」
「……あぁ、うん?」
「お腹」
二人の沈黙。質問しようとする僕に横槍を入れる形でアイナのお腹の音が長~~~く鳴り響く。
減ったの一言くらい省略するな。しかもさっき食べたばかりだろ。
「お二人さん、そろそろだよ」
「いよいよか。ほら行こう?」
「うむ」
僕とアイナはオーナーの導きに従いワイバーンに乗る。緑色のワイバーンは思ったより体高があり、四段ある踏み台を使っても、背中に固定された客席に座るのは一苦労だ。ぴょんぴょんと跳ねるアイナを抱き上げ座らせると、竜は立ち上がり羽ばたき始める。揺れは中々だ。
「タイミングいいな。言葉がわかってたりして」
「当たり前だよ……全く、人族の小童め」
「ワイバーンさん話せるの!?」
「あ、あんた私達の言葉が分かるのかい! 私のこれは竜言語だよ?」
「ゆりち、すごい!」
ワイバーンの羽ばたきが驚愕からか収まっていく。
ワイバーンである彼女? の反応と、アイナの向ける羨望の眼差しからして、皆分かるわけではないみたいだ。
高級種と言うのは言語を解するという意味だったらしい。道理で運転手がいない訳だ。
「ただのガキんちょだったら道中のツマミにでもしようかと思ってたのに」
開かれた口の奥に光る牙を前にすると、あまり笑えない。ワイバーンは再度羽ばたき初める。
重力と風に翻弄された髪が顔の上で激しく乱れ始めた。
「嬉しいねぇ。私らの言葉が分かるなんて学者さんかい? サンジェリン行きならさぞ高名な方なんだろう」
「高名じゃないけど、まあそんな所です……にしても、凄い!」
「あらまあ珍しい。空は初めてだね? じゃあ……サービスにかっ飛ばすよ!」
急上昇と加速。飛び上がるだけで体が揺さぶられた体験からそれなりの負荷を覚悟していたけど、ワイバーンさんの額の装飾品が光を放つと揺れが収まる。激しい風は緩和され、心地よい風が体を包む。
速度はジェットコースターばり、だけれどもすれ違う小山や林との距離感からスピード感は比較にならない。障害物と障害物の間を突き抜け、山に川にと景色を切り裂いて進む気分は、さながら自分が燕になったみたいだ。
「凄いねアイナ!……アイナ?」
アイナは口を固く結んでいる。
「ちょっと」
「ん?」
「ちょびと怖いかも」
よく見るとアイナは震えていた。僕は彼女の手を握りしめる。
小さく暖かな手はやがて震えるのを止め、しっかり握り返す。
「安心して」
「……わかってるね君」
「なんでそんな偉そうなんだ」
「ゆりちの為。しょうがないから安心してあげる」
ふふん、と鼻を鳴らすあたり本当に思ってそうだなコイツ。
「二人とも仲良いねぇ」
ワイバーンさんはそう言って喉を鳴らす。猫みたいだ。打ち解けたら意外にも近所のおばちゃんみあるキャラで良かった。
これで『我が~』とか言われていたら対応に困っていた。
タクシー運転手じみた業務に就いたドラゴンに高飛車Lv99の態度をとられたら困惑するだろう。
竜族に可愛いなんて言ったらプライド傷付くかな。
爬虫類、好きなんだ。
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