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act4 アタリマエの幸せ
しおりを挟むそして、その期待は裏切られなかった。
「国際科」は伊達ではなかった。
生徒たちは2年生のときに強制的に1年間、
英語圏に留学させられる。
そして、ほぼ全員が英語検定準1級を取る実力を
身につけて帰国するのだ。
テキストに沿って授業を進める中、何をネタにして説明しても
生徒たちからは適切なレスポンスがあり、
彼らが教師というものと信頼関係を築いていることが
うかがい知れる。
そして、
「先生、いくつ?」
「コイケ・ケイコなんて、親ひどくない?」
「結婚してそうなっちゃったの?マヂで?」
「ダンナさんが名字変えてもいいよ、って言ってくれたの?
ラブラブじゃん!」
「いいなー!そんなひとと結婚したーい!」
教室に笑いさざめく声が立つ。
こんな軽口を交わす生徒と教師の
アタリマエとみなされる関係性が、
アタリマエでない世界があるのである。
そもそも、乳児期に親との間に愛着が養われないと、
子どもは大人を頼ることを知らずに育つ。
然るに、ひとをひととも思わぬ人格が形成される。
世の困った子どもたち、あるいはその子どもが
そのまま年だけとった、成人とも言えぬ成人の起こす
様々な問題の根っこはここにある以上、
新たに罰則を設けようが、厳罰化しようが、問題の解決はおろか
回避にすらあまり効果がないと蛍子は思っている。
教育学部で学んだ児童心理学の内容は、
できれば前向きな方向で実感したいものだが、
ネガティヴなことがより痛烈に響くものである。
乳児期に愛着が育たなかった者は、一生涯ひとを愛し、
愛されることができないなど、そんな悲しい話はない。
過去の様々な研究結果などが覆される昨今であるから、
これもどこかで、誤った理論として教科書に載るといい。
蛍子の顔を親しみをこめ、おもしろそうに眺める生徒たちを
教壇から見下ろしながら、
蛍子は彼らの将来の幸せを祈らずにはいられない。
そして、彼らならきっと大丈夫、と自分に言い聞かせた。
空きコマをひとつ挟んで、
次は、情報ビジネス科の1年生のクラスである。
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