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act5 地獄の一丁目
しおりを挟む1年生か。
ひとりぽつねんとパイプ椅子に座る非常勤講師の控室で、
蛍子は生ぬるい缶コーヒーを啜りながら、思う。
しかも女子クラスか
蛍子はどちらかというと、女子生徒が苦手である。
そもそも女子が苦手であった。
女子が女子を殊更苦にするのも妙な話だが、
所謂「女の子らしい」部分が蛍子にはいささか欠落していたのである。
魔女っ娘よりは、戦隊ヒーローものが好きで、
年の近い弟が居ることもあり、気さくに話ができることから、
男子に人気があったのだが、これがよくなかった。
女子に嫌がらせを受けることが増えたのである。
「女子はマウンティングをするもの」
であるなら、これに該当しない蛍子は女子ではない。
父方母方両方の初孫のお姫さまと大事にされ、
弟以下いとこは全員太郎であったから、比較されたこともなく、
優劣など考えたこともなく、不足というものを知らないのだ。
結局女子という生き物は、男子を巡って対立するものである、
と、幼い頃に蛍子は結論づけた。
これで美貌であったらどれほどの禍になったことか。
今も昔も、女子の「いじめ」は嫉妬にはじまり、嫉妬に終わる。
そんな女子の原風景が教員現役時代も蛍子を用心深くさせていたのだが、
退学した生徒はバイク事故を起こしたの以外、4人が女子である。
女子の「非行」はタチが悪いと蛍子は思っている。
暴力を男子は外に向け、女子は内に向ける。
所謂リスカは女子に多い。
異性と無軌道なつきあいをするのも、自傷行為に変わりない。
以前勤めていたのは、いささか偏差値は低いものの、
ごくありふれた普通高校だ。
それで、アレである。
ましてや、ここは「あそこしか行くところがない」困難校だ。
推して知るべし。
既に1年生の普通科のクラスで洗礼を受けているからには、
身構えずにはいられない。
なまじ、ついさっき天国のような時間を過ごしてしまった分、
衝撃が大きいのではないか。
カラフルで字のやたら大きなテキストのページをおざなりに繰りながら、
蛍子は終業を告げるチャイムを待った。
コーヒーはもう冷たい。
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