かりそめの永遠ーアナタに逢えてよかった

てるる

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act8 女教師とその夫

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WEBで目にする世の中には、何かとズルい方向で
知恵を巡らして工夫を凝らし、
福祉にたかる人種がいるらしい。
そういう輩がいるから、本来正当に補助を受けるべきひとたちが委縮して
支援が行き渡らないであろうことに、蛍子は苦い思いをしている。
働かずに得るお金に蛍子は喜びを感じない。
世の多くの女性が羨む専業主婦として、
家計を管理し夫の帰りを待つだけの生活では、
蛍子は生きている気分になれないのである。
匠自身は蛍子が日中何をして遊んでいようが、
家事が疎かであろうが、自分が帰ったときに寝ていようが、
何ら不足はないのだが、
蛍子は自分の遊ぶ金くらいは自分で出したいタイプだ。


「女性の自立は経済的自立から」

と、弁護士のおじから薫陶を受けているということだけでなく、
自分の能力に値段がついて評価されることに、
喜びを感じるからである。
そして、困難な課題ほど、おもしろいものだ。
しかし、それも学生時代の成績優秀者にありがちな愚かな経験則で、
社会に出ると、自分の手に余るほどの仕事は、
やはりよい結果は出せないことを思い知る。
極端に無理をすることのない、身の丈にあった仕事をすることで
息の長い活動ができる。
結婚退職してから蛍子はそう思い至るようになった。
匠がそれを教えてくれたのだ。

学生時代からつきあってきた匠と結婚するつもりはあったが、
それを機に退職するなど考えたこともなかった。
蛍子は女子生徒のロールモデルとして、働くのが当たり前の母親像を
提示したかったのだ。
しかし、匠の強い希望を受けた形で、教壇を去った。
匠が蛍子の目指すところを知りつつも、敢えて退職を迫ったのは、
彼女の担任するクラスのあまりの崩壊状態に、
身も心も疲弊している蛍子の姿を見かねたからである。
蛍子としては当時は逃げを打ったようで不本意だったが、
今は匠が強引に結婚に向けて歩を進めてくれたことに感謝している。
生真面目な蛍子のことだから、意地を張って教壇に立ち続け、
結局、自分にとっても生徒にとっても実りのない時間に
してしまうであろうことを匠は見抜いていたのだ。
そのまま続けていれば、初心も青雲の志も失い、
蛍子は教師生命すら絶たれていたかもしれない。


さすが匠先輩!


口数が多いわけではない。
が、蛍子が迷いを覚えたり方向を過つようなことがあるときには、
必ず適切な舵取りをしてくれる。
自立心旺盛で怖いもの知らずの蛍子だが、
匠には敵わないと思うものだ。
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