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act15 ふたりの小部屋
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匠と身体を重ねるのが日常になったのは
いつのことだろう。
ひとの体温を直に感じることが、
こんなに心地よいものであるとは。
蛍子は匠と過ごすようになって初めて知った気がする。
あるいは、母に抱かれた赤ん坊の頃の記憶を
肌が思い出したのかもしれない。
山の上と言わんよりは、山の中にある大学の、
樹林の隣のサークル・ボックス。
軽音に与えられたのは、決して狭い部屋ではないが、
ドラムセットやキーボードなどの楽器やアンプなどに
大部分を占められているため、
バンドとして練習するときは、街のスタジオなどを借りるのが
常である。
ライヴの前にバンドごとで集まることが多いので、
いつもは数名ぶらぶらと、おしゃべりをしたり、
楽器をつま弾くばかりである。
しかし、缶コーヒー片手のおしゃべりだけなら、
ここでなくてもいい。
匠や蛍子のような、楽器を真剣に弾きたいメンバーに遠慮して、
おしゃべり組はボックスの部屋からは、
少しずつ数を減らしていった。
「小池匠マヂ切れ事件」として、後々までひっそりと語り継がれる、
クリスマス会の悶着から数日後、学校が冬休みのため閉鎖される
前の日に、蛍子と匠は年明けライヴのための進行の
最終確認をしていた。
他の下衆な男なら、女だというだけで蛍子にすら
邪な心を抱くこともあろうから、
他に誰も居ないボックスでふたりきりで過ごすことを
潔しとはしないのだが、
その関係はバンドのギタリストとキーボーディスト。
しかも相手は敬愛する匠である。
蛍子は安心しきっていた。
ひと通り、旋律とアドリブなどを確認して、
では先輩、よいお年を!
と、荷物をまとめて部屋を先に出ようとしたところ、
匠に呼び止められた。
「原さん」
いつになく、切迫した声音に、蛍子が不審そうに見上げると、
「僕のカノジョになってくれない?
なってください」
いつのことだろう。
ひとの体温を直に感じることが、
こんなに心地よいものであるとは。
蛍子は匠と過ごすようになって初めて知った気がする。
あるいは、母に抱かれた赤ん坊の頃の記憶を
肌が思い出したのかもしれない。
山の上と言わんよりは、山の中にある大学の、
樹林の隣のサークル・ボックス。
軽音に与えられたのは、決して狭い部屋ではないが、
ドラムセットやキーボードなどの楽器やアンプなどに
大部分を占められているため、
バンドとして練習するときは、街のスタジオなどを借りるのが
常である。
ライヴの前にバンドごとで集まることが多いので、
いつもは数名ぶらぶらと、おしゃべりをしたり、
楽器をつま弾くばかりである。
しかし、缶コーヒー片手のおしゃべりだけなら、
ここでなくてもいい。
匠や蛍子のような、楽器を真剣に弾きたいメンバーに遠慮して、
おしゃべり組はボックスの部屋からは、
少しずつ数を減らしていった。
「小池匠マヂ切れ事件」として、後々までひっそりと語り継がれる、
クリスマス会の悶着から数日後、学校が冬休みのため閉鎖される
前の日に、蛍子と匠は年明けライヴのための進行の
最終確認をしていた。
他の下衆な男なら、女だというだけで蛍子にすら
邪な心を抱くこともあろうから、
他に誰も居ないボックスでふたりきりで過ごすことを
潔しとはしないのだが、
その関係はバンドのギタリストとキーボーディスト。
しかも相手は敬愛する匠である。
蛍子は安心しきっていた。
ひと通り、旋律とアドリブなどを確認して、
では先輩、よいお年を!
と、荷物をまとめて部屋を先に出ようとしたところ、
匠に呼び止められた。
「原さん」
いつになく、切迫した声音に、蛍子が不審そうに見上げると、
「僕のカノジョになってくれない?
なってください」
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