かりそめの永遠ーアナタに逢えてよかった

てるる

文字の大きさ
19 / 46

act18 如金太郎飴

しおりを挟む
やっと3週目の地獄がひとつ終わり、
今日は天国が終わり、地獄なうである。
1週間が天国で終わるのが、せめてもの救いであろうか。

それにしても…

と、誰も見ることのない黒板にテキストを書き出しながら思う。

顔立ちが、ひどい

造作の問題ではない。
それはまるで、捨て猫や野良犬のように、
一度はひとの手の中にあったものが、遺棄され、
人間不信ゆえに無残な姿になっているのと似ていると蛍子は思った。
イヌやネコなら、愛情をこめて手入れをしたら心を開き、
元の美しい姿を取り戻すこともあろうが、蛍子はため息をつく。
ヒトは彼らほど簡単にはいかない。
何か事件が起こるたびに、「どうしてもっと早く」とか
「助けを求めてくれていたら」とか「行政はどうした!?」という声が上がる。
しかし恐らく、いろんな事情でそれが叶わないのだろう。
差し伸べられる手を拒むどころか、はねのけるひとが、いる。
一番支援が必要な状況であっても。


「高偏差値高顔面偏差値説」

というのを、同じバンドの先輩が打ち立てていた。
感じ悪い!と、みんなの顰蹙を買っていたが、先輩は意に介さずで、
曰く、顔は人間性が出るところだから、賢いひとは清々しい顔に、
意地悪なひとは険のある顔になる、と。
それについては、蛍子も異論はない。
確かに、蛍子の通う大学には美男美女、
そうでなくてもスマートなルックスの学生が多い。
性格のいい人間は、ひと好きのする面立ちになるものだ。
大切に育てられた子どもは、おしなべて愛くるしい。
子どもは、見た目どうこうではなく、誰がなんと言おうが、
親がその存在を認めて喜び、一番かわいがらなくてはならないのだ。
自尊心や自己肯定感を育てるのは、まずは家庭から、なのだから。

もし、たら、れば。

もし、経済的に豊かだったら、愛情深い家庭で育っていれば。

蛍子は改めて、生徒たちを眺める。
先輩のご高説を賜っているとき、逆パターンとして、
「ヤンキー美男美女説」も挙げられた。
それも間違いではないだろう。
実際数名ほど、キャバ嬢風味ではあったが、目を引く生徒が居る。
自分が女として男の目を引く魅力があることを知り尽くした様子である。
生徒募集に困る学校にありがちなかわいい制服が、
だらしなく着崩されることで一段とそのただれたムードを
増幅しているかのようだ。この中で、何人くらいの生徒が、
男と枕を交わすことを当たり前にしているのだろうか。
ついこの前中学を卒業したばかりのまだ15や16の子どもだ。
相手がまともな男であるはずがない。
子どもをなおざりにするような居づらい家庭から、
とりあえず男に逃れ、避妊もしてもらえず10代で母になり、
そのまま首も据わらぬ赤ん坊を連れて役場で生保を
申請するようなことになれば、貧困の連鎖を絵に描いたようである。

トルストイだったか。
「不幸はたくさん種類があって、幸福はひとつ」と言っていたのは。
蛍子の印象は、逆である。
幸せの形はそれぞれだが、不幸は判で捺したようだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

秘書と社長の秘密

廣瀬純七
大衆娯楽
社内の調査のため、社長・高橋健一はこっそり秘書・木村由紀と不思議なアプリで入れ替わることに。 突然“社長役”を任された由紀と、自由に動ける立場を手に入れた高橋。 ふたりの秘密の入れ替わり作戦は、どの様な結末になるのか?

✿ 私は夫のことが好きなのに、彼は私なんかよりずっと若くてきれいでスタイルの良い女が好きらしい 

設楽理沙
ライト文芸
累計ポイント110万ポイント超えました。皆さま、ありがとうございます。❀ 結婚後、2か月足らずで夫の心変わりを知ることに。 結婚前から他の女性と付き合っていたんだって。 それならそうと、ちゃんと話してくれていれば、結婚なんて しなかった。 呆れた私はすぐに家を出て自立の道を探すことにした。 それなのに、私と別れたくないなんて信じられない 世迷言を言ってくる夫。 だめだめ、信用できないからね~。 さようなら。 *******.✿..✿.******* ◇|日比野滉星《ひびのこうせい》32才   会社員 ◇ 日比野ひまり 32才 ◇ 石田唯    29才          滉星の同僚 ◇新堂冬也    25才 ひまりの転職先の先輩(鉄道会社) 2025.4.11 完結 25649字 

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

処理中です...