かりそめの永遠ーアナタに逢えてよかった

てるる

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act25 美しい野獣たち

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本当に一線を越えてからは、
匠の部屋に居るときは、服を着ているときも着ていないときも
ずっとベッドの上で過ごしている。
多分、ほとんど服は着ていない。

「残酷だなあ」

まだ20にもなってないのに、と謝りながら、匠は
掌にすっぽり収まる蛍子の乳房を撫でる。
蛍子がサイズを恥じらうと、

「僕は、原さんのおっぱいがいいの。
そもそも大きいの好きじゃないから」

ヨーコ先輩は怖い、と笑う。
蛍子が巨乳の持ち主であれば、きっと
逆のことを言うだろう。

体型の好みで言えば、蛍子は偉丈夫、マスキュリンな男が
タイプであることを公言していた。
それが匠のような細マッチョのイケメン枠の男と恋に落ちようとは、
わからぬものである。
今は、ほっそりとしながらも、力強く自分の肌を巻き締める
匠の身体が狂おしく愛おしい。

匠はいつでも優しかったし、自分の来し方を告白してからは、
さらに優しくなったと蛍子は思う。

楽器の鳴りを確認するように、匠は蛍子の身体に
指を丁寧かつ巧みに滑らせていく。

弦楽器は官能的だと、蛍子は思う。
昔、ヴァイオリンの超絶技巧の演奏で失神する女性が
後を絶たなかったという話を聴いたことがあるが、
ギターも同様に、ひとの心の琴線に直接触れる、
人間臭い楽器のように思える。
ピアノは長らくクラッシック畑で過ごし、
バンドの演奏などを聴いても、特に
強く心を動かされることのなかった蛍子が、
初めて匠のギターを聴いたとき、「痺れ」た。
思えば、そのとき匠のギターに惚れてしまった蛍子は、知らず、匠にも
惚れていたと言っていいのかもしれない。
緩急自由自在に揺らし、出るときは、出、
引くときは、引く。
ヴォーカルに気持ちよく歌ってもらうことを
最大限意識しながらも、全体のハーモニィを守り、自分の個性も殺さない。
無口な匠の、雄弁なギター。
蛍子もキーボードで参加するようになって、ギターを通して、
改めて匠の人間性まで垣間見るような思いだった。

その匠の稀なるギターのテクニックがこんなところで
活かされようとは。
タコのできた指で、皮膚の薄いところを撫でまわされ、


先輩がギター弾いてるときに思い出しちゃう


と、匠の下で息も絶え絶えに訴える蛍子に


「思い出してよ」


と、匠はますます丹念に蛍子の身体の反応を確かめる。

「ごめんね。僕も男なんだよね、やっぱり」

いくら窓を閉め切っているとはいえ、部屋の音が、どう外に
漏れるか、わからない。
ベッドの中で、蛍子はなるべく声を上げまいとしていた。
匠は、必死に口を押えようとする蛍子の手を抑え込み、

「もっと乱れていいから」

と囁く。
これが、20や21の男の言うことだろうか?

はずみで肩口に歯が触れたとき、全身を電流が貫いたような
感覚に襲われ、蛍子はたまらず切なげな声を
上げてしまったが、これが匠を喜ばせた。
手際よく蛍子を裏にしたり表にしたりして、
さらに執拗に責め立てる。


比較はできないからわからないけれど、蛍子と匠はきっと
どんなカップルも呆れるばかりに、時間をかけて
お互いの身体を愉しんでいると思われる。
笑い声を立てながら、上になったり下になったり、ベッドの上を
転げて求め合うさまは、若く美しい野獣のようだと蛍子は思った。

Beautiful Beasts

素敵に頭韻も踏んでいるこの言葉が蛍子は気に入った。


ヨーコ先輩にもらったラテックスはあっという間になくなってしまった。
それからいくつ消費したことだろう。
使わないこともあったから、なかなかの回数、
経験を積み重ねたことになる。

もう一生分くらいしちゃったかもね

蛍子は、彼女を清楚なお嬢さんとして知るひとたちの
鼻を明かしてやった気分で、愉快になった。


それから10年近く経った今も、匠と蛍子は美しい野獣のままである。
情熱的であるよりは、より安心感と満足感が深まったのが成長だろうか。
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