25 / 46
act24 勉強する理由
しおりを挟む
「ハイ、あげる!」
蛍子が入学する前、匠が1年生、ヨーコ先輩が2年生の夏休み前。
ヨーコ先輩が参加したセクマイ・フェミニストの集いで配られた、
棒付きキャンディ仕立てにしたラテックスを、たくさんもらってきたから、
と、バンドのメンバーにばらまき始めた。
ありがたいような迷惑なようなお裾分けである。
「僕はいいです」
楽器を避けながら部屋の中を逃げ惑う匠に、ヨーコ先輩は容赦ない。
黒いTシャツいっぱいの弾けそうな身体を揺らして、匠に迫る。
「ダメよ、ショーちゃん、突然そのときになって、ないと困るんだから!」
他の先輩たちも面白がってめいめい、俺は持ってるからいいとか、
お前はモテるからやばいとか、ヨーコ先輩に乗って、
匠の目の前に積み上げていった。
「セクハラ!」
先輩たちのからかいにむっとして、
黒いセルの眼鏡越しに睨み上げる匠だったが、それが
「かわいい」
と、また先輩たちにさらにからまれるから、匠はもう黙ってラテックスを花束にして
持ち帰ることにした。
捨てるに捨てられなかったのだが、それが、
「まさか使用期限内で役に立つとは思わなかった」
お互いの身体を預けるということにだいぶ慣れてきてから、
匠が隣で休んでいる蛍子に話したことだ。
ヨーコ先輩が、ふたりの関係を見抜いて、ちょっかいを出していたとき、
「とうとうアレの出番ね」
と、ニヤニヤしながら匠の頭をはじこうとして、3発目は避けられ、
「がっつり使わせていただきます」
と匠が恋の勝者たる不敵な笑みで応えると、4発目で音高く叩かれたのは、
このことだったのか。
そして、ヨーコ先輩は蛍子に向き直ると、その力漲るおっぱいで
蛍子の頭をハグしてから、額に軽くキスをして、
「あー残念、残念」
と、あまりガッカリした様子もなく部屋を後にした。
凶暴おっぱいは、それでも仁義を知るひとのようで、
サークルのメンバーには、匠と蛍子のことはその後、しばらく
広まることはなかった。
あの日。
匠が涙をこぼし、蛍子がそれを拭った夜。
匠が胸の内を開き、それに応える形で、蛍子が身体を開いた。
それはひととして、とても正しいあり方なのだろうと、
蛍子は思う。
だって、とても幸せだもの
匠の引き締まった身体に身を寄せ、蛍子は満ち足りた気分だった。
ひとは幸せになるために生きている。
知性や教養といったものは、すべて、そのためにこそ、ある。
いくら勉強しても、不平不満を太らせるばかりでは、意味がないし惨めだ。
教壇に立つようになってからは、ますます強くそう思うようになった。
「こんなこと何の役に立つんですか?」
という生徒の問いには、
役に立てるも、立てないも、自分次第と答えている。
そのまま直接的に将来的に活きるかどうかわからないところで、
活動をする意義というものを彼ら自身でみつけて欲しいと思うものである。
蛍子が入学する前、匠が1年生、ヨーコ先輩が2年生の夏休み前。
ヨーコ先輩が参加したセクマイ・フェミニストの集いで配られた、
棒付きキャンディ仕立てにしたラテックスを、たくさんもらってきたから、
と、バンドのメンバーにばらまき始めた。
ありがたいような迷惑なようなお裾分けである。
「僕はいいです」
楽器を避けながら部屋の中を逃げ惑う匠に、ヨーコ先輩は容赦ない。
黒いTシャツいっぱいの弾けそうな身体を揺らして、匠に迫る。
「ダメよ、ショーちゃん、突然そのときになって、ないと困るんだから!」
他の先輩たちも面白がってめいめい、俺は持ってるからいいとか、
お前はモテるからやばいとか、ヨーコ先輩に乗って、
匠の目の前に積み上げていった。
「セクハラ!」
先輩たちのからかいにむっとして、
黒いセルの眼鏡越しに睨み上げる匠だったが、それが
「かわいい」
と、また先輩たちにさらにからまれるから、匠はもう黙ってラテックスを花束にして
持ち帰ることにした。
捨てるに捨てられなかったのだが、それが、
「まさか使用期限内で役に立つとは思わなかった」
お互いの身体を預けるということにだいぶ慣れてきてから、
匠が隣で休んでいる蛍子に話したことだ。
ヨーコ先輩が、ふたりの関係を見抜いて、ちょっかいを出していたとき、
「とうとうアレの出番ね」
と、ニヤニヤしながら匠の頭をはじこうとして、3発目は避けられ、
「がっつり使わせていただきます」
と匠が恋の勝者たる不敵な笑みで応えると、4発目で音高く叩かれたのは、
このことだったのか。
そして、ヨーコ先輩は蛍子に向き直ると、その力漲るおっぱいで
蛍子の頭をハグしてから、額に軽くキスをして、
「あー残念、残念」
と、あまりガッカリした様子もなく部屋を後にした。
凶暴おっぱいは、それでも仁義を知るひとのようで、
サークルのメンバーには、匠と蛍子のことはその後、しばらく
広まることはなかった。
あの日。
匠が涙をこぼし、蛍子がそれを拭った夜。
匠が胸の内を開き、それに応える形で、蛍子が身体を開いた。
それはひととして、とても正しいあり方なのだろうと、
蛍子は思う。
だって、とても幸せだもの
匠の引き締まった身体に身を寄せ、蛍子は満ち足りた気分だった。
ひとは幸せになるために生きている。
知性や教養といったものは、すべて、そのためにこそ、ある。
いくら勉強しても、不平不満を太らせるばかりでは、意味がないし惨めだ。
教壇に立つようになってからは、ますます強くそう思うようになった。
「こんなこと何の役に立つんですか?」
という生徒の問いには、
役に立てるも、立てないも、自分次第と答えている。
そのまま直接的に将来的に活きるかどうかわからないところで、
活動をする意義というものを彼ら自身でみつけて欲しいと思うものである。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
『 ゆりかご 』
設楽理沙
ライト文芸
- - - - - 非公開予定でしたがもうしばらく公開します。- - - -
◉2025.7.2~……本文を少し見直ししています。
" 揺り篭 " 不倫の後で 2016.02.26 連載開始
の加筆修正有版になります。
2022.7.30 再掲載
・・・・・・・・・・・
夫の不倫で、信頼もプライドも根こそぎ奪われてしまった・・
その後で私に残されたものは・・。
――――
「静かな夜のあとに」― 大人の再生を描く愛の物語
『静寂の夜を越えて、彼女はもう一度、愛を信じた――』
過去の痛み(不倫・別離)を“夜”として象徴し、
そのあとに芽吹く新しい愛を暗示。
[大人の再生と静かな愛]
“嵐のような過去を静かに受け入れて、その先にある光を見つめる”
読後に“しっとりとした再生”を感じていただければ――――。
――――
・・・・・・・・・・
芹 あさみ 36歳 専業主婦 娘: ゆみ 中学2年生 13才
芹 裕輔 39歳 会社経営 息子: 拓哉 小学2年生 8才
早乙女京平 28歳 会社員
(家庭の事情があり、ホストクラブでアルバイト)
浅野エリカ 35歳 看護師
浅野マイケル 40歳 会社員
❧イラストはAI生成画像自作
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる