お願い、婚約破棄をして

玄米茶

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プロローグ

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私の婚約者は、侯爵のご子息であるルドルフという少年だ。
このルドルフと言う男、バカでアホでクソで…仕方ない。
こいつと結婚なんてしたら、私の人生総崩れだと思う。

だけど、こいつは私にベタ惚れなのです。
結婚なんてしたくないのに、私からは断れない。なぜって、私より彼の家の方が位が高いから。

私たちの結婚は恋愛結婚じゃない。家同士の結婚。家に利益をもたらすための結婚。そんな相手でも好きになれたら、幸せね。けれど、私はどう頑張ったって好きになれそうにない。

私にべた惚れなら、うまく扱えばいいじゃないって?
確かにそれも一理あるわね。
けれど、それは難しいわ。
あの男、私にべた惚れっていったって、私のことを考えてくれるわけじゃないんだもの。
私も所有できる喜びを込めて、べた惚れなの。私をお人形さんくらいにしか思ってないわ。

ええ、そうね。べた惚れっていう表現が誤っていたわ。
彼は私を自分の所有物にして独占しようと躍起になっているだけ。
きっと、私と結婚して私を所有できたと思ったら、私のことなんか忘れてしまうわ。
そして、私は彼のお屋敷の中で人形のように座って、彼が当主になり没落していくのを見ていくしかないのよ。もちろん、私も没落に巻き込まれるしかない。

なぜ、彼をそこまで毛嫌いするかって?もう少し歩み寄ってみたらどうかって?
あなたは彼のアホさ加減を知らないからそう言えるのよ。
彼は人の話なんて聞かないの。自分が正しいと思ったら、突き進んじゃう。大抵間違った方向にね。

ある寒い日に事件は起こったの。
私は彼と生まれた時から結婚が決まっていたから、その日は彼が私の家に遊びに来ていたの。庭のベンチに座って、花を眺めながらお喋りをしていたわ。
その時はまだ、私は彼のヤバさに気づいていなかったわ。
私は「今日は寒いね」と話しのとっかかりを作るために言ったの。
そしたら彼、何をしたと思う?
「そうだね、寒いね。僕が暖かくしてあげるよ」
彼、そう言って何をしたと思う?
ポケットに入っていたマッチ箱を取り出したの。私はポカンとしていたわ。ここまで、説明したら想像つくわよね?彼はヤバいのよ。
お屋敷からすぐに人が飛んできて、必死に消火してくれたけど、間に合わなかったわ。
乾燥していたし、とても勢いよく燃えたわ。美しく咲いていた花々や芝生が無残に焼け焦げたの。

普通の人なら、「上着を貸してあげるよ」とかマッチをつけたとしても「小さい火でも暖かいね」っていうと思うわ。
その時に、この人ヤバいのかな?って少し思ったけど、その時はまだ自分の婚約者がそこまでヤバい人だと思いたくなかったのよ。

だから、マッチで遊んでいたら誤って落としてしまったのと二人で謝ったわ。その時、彼何で怒られているのか分からなかったようだけれどね。ポカンとしていたわ。私が彼がマッチをつけ、乾燥した芝生に火をつけたのをみていた時にポカンとしていたようにね。

他にもまだあるわよ。
友達の商人の家に遊びに行った時に、自分の方が優れた商才があると思ったのか、商談にいきなり口出しするとか。
見当違いのことばかり言っているから、相手はもちろんポカンとしていたわ。
これは、まだ小さいことね。これくらいなら、日常茶飯事よ。

他には人様の畑の果物を勝手に食べていたこともあったわね。自分の領地なんだから、これも俺のものだろう?ですって。
こんな奴が将来当主になると思うと寒気がするわ。

一番問題なのは何かって、彼の父親である現当主が彼のヤバさを全く分かってないことよ。

彼がいくらクソでアホでも公爵のご子息だから、取り巻きは無駄に多いの。けれど、取り巻きといっても従順に従っているわけじゃない。虎視眈々と上を引き摺り下ろそうと画策してるのよ。
取り巻きたちはクソバカボンクラ男が当主についた方が嬉しいから、彼がおかした問題行動をあの手、この手でもみ消してしまうのよ。
本当に余計なことはやめて欲しいわ。
私は身分的にもチクれないし、チクったとしても誰も信じてくれないでしょうしね。

生まれた時からの許嫁に婚約破棄されたら、当然私がヤバい女の思われで、二度とお嫁に行けないかもしれないわ。
けれど、お嫁に行けなくても、私は何とか一人で生きていけると思うの。
というか、彼と結婚するリスクより、婚約破棄されてヤバい奴と思われるリスクの方が小さいわ。


さあ、どうしようかしら。

何とかして、あいつに嫌われなくっちゃ。
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