逃げる銀狐に追う白竜~いいなずけ竜のアレがあんなに大きいなんて聞いてません!~

結城星乃

文字の大きさ
40 / 117

第40話 銀狐、思い悩む 其の二

しおりを挟む
 
こう? どうしました?」

 
 不意に白霆はくていに顔を覗き込まれて、思考の内にいた晧はびっくりして身体を震わせた。だが自分を心配している彼の表情を見て、安心させたくて晧は笑って、なんでもないと答える。
 自分が今どんな顔をしているのか、分からないまま。
 気付けばくしゃりと白霆はくていの手櫛で、前髪を撫でられた。
 心の機敏のとんでもない時に彼の手の温もりを感じてしまって、思わず縋ってしまいそうになるのを俯いて堪える。
 触れられて全身が喜ぶ様を、本能とも言うべき部分が悦びに満ちている様を、晧は見て見ぬ振りをした。ぱたりと動きそうになる尻尾を懸命に押さえ込む。
 そんな晧の様子に白霆はくていは何を思ったのか。

 
「……部屋を二つ用意して頂けますか?」
「……っ」

 
 先程の魔妖の少女に言い付けるその言葉に、晧は息を詰める。少女は元気に返事をするとご案内しますと、歩き出した。

 
「朝から歩き詰めで疲れましたよね。少し休んで下さい。あとで一緒に夕餉に行きましょう、晧」

 
 優しい言葉遣いで話し掛ける白霆はくていの顔を、晧はついに見ることが出来ずに、分かったと応えだけを返したのだ。 

  
           ***

 
 相手がどんなに自分を口説くと宣言をしていても、昨日今日で知り合った相手だ。時間が経つにつれて色々と思うこともあるのかもしれない。
 夕餉を共に食べながら他愛もない会話して、晧と白霆はくていは部屋の前で別れる。
 ひとりで部屋に入り寝台に座った晧は、部屋の中がひどくがらんとしているように思えて仕方なかった。何かが足りなくて堪らないのに、その何かが分からない焦燥が心の渇きとなって現れて、胸を掻き毟りたくなる。
 紅麗の茶屋の二層目に泊まった時は、こんな感情に襲われることはなかった。この感情は全て白霆はくていに出会ってからだ。
 自分達は特別な間柄というわけではない。同じ南に向かって旅をする者同士だ。しかも自分は恩に報いる為に、白霆はくていと共にいる。
 だから宿が満室だとかそういう理由がなければ、部屋を二つ取るのは当然のことだ。

 
(……けどそれがどうして……)

 
 こんなにいきなり壁を作られたような、突然目の前で扉を閉められたような気持ちになるのだろう。

 
(これじゃあまるで……)

 
 ──同じ部屋がよかったと言っているようなものじゃないか。

 
 そう心内に思った途端、違うと否定する気持ち以上に心が叫ぶ。

  
 そうだ、と。
 離れたくなかったのだ、と。
 こんなにも好き、なのに。

 
「──え」
 
 
 
 
 
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

ギルド職員は高ランク冒険者の執愛に気づかない

Ayari(橋本彩里)
BL
王都東支部の冒険者ギルド職員として働いているノアは、本部ギルドの嫌がらせに腹を立て飲みすぎ、酔った勢いで見知らぬ男性と夜をともにしてしまう。 かなり戸惑ったが、一夜限りだし相手もそう望んでいるだろうと挨拶もせずその場を後にした。 後日、一夜の相手が有名な高ランク冒険者パーティの一人、美貌の魔剣士ブラムウェルだと知る。 群れることを嫌い他者を寄せ付けないと噂されるブラムウェルだがノアには態度が違って…… 冷淡冒険者(ノア限定で世話焼き甘えた)とマイペースギルド職員、周囲の思惑や過去が交差する。 表紙は友人絵師kouma.作です♪

竜の生贄になった僕だけど、甘やかされて幸せすぎっ!【完結】

ぬこまる
BL
竜の獣人はスパダリの超絶イケメン!主人公は女の子と間違うほどの美少年。この物語は勘違いから始まるBLです。2人の視点が交互に読めてハラハラドキドキ!面白いと思います。ぜひご覧くださいませ。感想お待ちしております。

悪役神官の俺が騎士団長に囚われるまで

二三@冷酷公爵発売中
BL
国教会の主教であるイヴォンは、ここが前世のBLゲームの世界だと気づいた。ゲームの内容は、浄化の力を持つ主人公が騎士団と共に国を旅し、魔物討伐をしながら攻略対象者と愛を深めていくというもの。自分は悪役神官であり、主人公が誰とも結ばれないノーマルルートを辿る場合に限り、破滅の道を逃れられる。そのためイヴォンは旅に同行し、主人公の恋路の邪魔を画策をする。以前からイヴォンを嫌っている団長も攻略対象者であり、気が進まないものの団長とも関わっていくうちに…。

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

過保護な父の歪んだ愛着。旅立ちを控えた俺の身体は、夜ごとに父の形で塗り潰される

中山(ほ)
BL
「パックの中、僕の形になっちゃったね」 夢か現か。耳元で囁かれる甘い声と、内側を執拗に掻き回す熱。翌朝、自室で目覚めたパックに、昨夜の記憶はない。ただ、疼くような下腹部の熱だけが残っていた。 相談しようと向かった相手こそが、自分を侵食している張本人だとも知らずに、パックは父の部屋の扉を開く。 このお話はムーンライトでも投稿してます〜

転生エルフの天才エンジニア、静かに暮らしたいのに騎士団長に捕まる〜俺の鉄壁理論は彼の溺愛パッチでバグだらけです〜

たら昆布
BL
転生したらエルフだった社畜エンジニアがのんびり森で暮らす話 騎士団長とのじれったい不器用BL

【完結】義妹(いもうと)を応援してたら、俺が騎士に溺愛されました

未希かずは(Miki)
BL
第13回BL大賞 奨励賞 受賞しました。 皆さまありがとうございます。 「ねえ、私だけを見て」 これは受けを愛しすぎて様子のおかしい攻めのフィンと、攻めが気になる受けエリゼオの恋のお話です。 エリゼオは母の再婚により、義妹(いもうと)ができた。彼には前世の記憶があり、その前世の後悔から、エリゼオは今度こそ義妹を守ると誓う。そこに現れた一人の騎士、フィン。彼は何と、義妹と両想いらしい。まだ付き合えていない義妹とフィンの恋を応援しようとするエリゼオ。けれどフィンの優しさに触れ、気付けば自分がフィンを好きになってしまった。 「この恋、早く諦めなくちゃ……」 本人の思いとはうらはらに、フィンはエリゼオを放っておかない。 この恋、どうなる!? じれキュン転生ファンタジー。ハピエンです。 番外編。 リナルド×ガルディア。王族と近衞騎士の恋。 ――忠誠を誓った相手を、愛してはいけないと思っていた。切ない身分差、年の差の恋。恋の自覚は、相手が成人してからになります。

処理中です...