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第40話 銀狐、思い悩む 其の二
しおりを挟む「晧? どうしました?」
不意に白霆に顔を覗き込まれて、思考の内にいた晧はびっくりして身体を震わせた。だが自分を心配している彼の表情を見て、安心させたくて晧は笑って、なんでもないと答える。
自分が今どんな顔をしているのか、分からないまま。
気付けばくしゃりと白霆の手櫛で、前髪を撫でられた。
心の機敏のとんでもない時に彼の手の温もりを感じてしまって、思わず縋ってしまいそうになるのを俯いて堪える。
触れられて全身が喜ぶ様を、本能とも言うべき部分が悦びに満ちている様を、晧は見て見ぬ振りをした。ぱたりと動きそうになる尻尾を懸命に押さえ込む。
そんな晧の様子に白霆は何を思ったのか。
「……部屋を二つ用意して頂けますか?」
「……っ」
先程の魔妖の少女に言い付けるその言葉に、晧は息を詰める。少女は元気に返事をするとご案内しますと、歩き出した。
「朝から歩き詰めで疲れましたよね。少し休んで下さい。あとで一緒に夕餉に行きましょう、晧」
優しい言葉遣いで話し掛ける白霆の顔を、晧はついに見ることが出来ずに、分かったと応えだけを返したのだ。
***
相手がどんなに自分を口説くと宣言をしていても、昨日今日で知り合った相手だ。時間が経つにつれて色々と思うこともあるのかもしれない。
夕餉を共に食べながら他愛もない会話して、晧と白霆は部屋の前で別れる。
ひとりで部屋に入り寝台に座った晧は、部屋の中がひどくがらんとしているように思えて仕方なかった。何かが足りなくて堪らないのに、その何かが分からない焦燥が心の渇きとなって現れて、胸を掻き毟りたくなる。
紅麗の茶屋の二層目に泊まった時は、こんな感情に襲われることはなかった。この感情は全て白霆に出会ってからだ。
自分達は特別な間柄というわけではない。同じ南に向かって旅をする者同士だ。しかも自分は恩に報いる為に、白霆と共にいる。
だから宿が満室だとかそういう理由がなければ、部屋を二つ取るのは当然のことだ。
(……けどそれがどうして……)
こんなにいきなり壁を作られたような、突然目の前で扉を閉められたような気持ちになるのだろう。
(これじゃあまるで……)
──同じ部屋がよかったと言っているようなものじゃないか。
そう心内に思った途端、違うと否定する気持ち以上に心が叫ぶ。
そうだ、と。
離れたくなかったのだ、と。
こんなにも好き、なのに。
「──え」
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