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第一部 嫉妬と情愛の狭間
第184話 成人の儀 其の五十★ ──赫色──
しおりを挟む仄暗い赫色が紫雨の指から流れている。
更に増す酒香と混ざり合った血の匂いに、香彩はどこか甘いものを感じて、酔い痴れそうになった。
真竜は血の穢れに弱い生き物だが、少量であれば活力剤にも興奮剤にもなる。神澪酒に媚薬の効果が現れてしまった自分のことだ。紫雨の術者としての血液にも反応しているのかもしれないと、香彩は頭の片隅でそんなことを思う。
療も、そして竜紅人も。
ほんの少しだけれども、香彩の血液を美味しそうに舐めていたのは事実だ。
その理由が今なら、何となく分かる気がした。
甘い、甘い赫色が、紫雨の骨張った指の線を伝い、手首の骨の出っ張った辺りから、ぽたりぽたりと、香彩の尾骶に滴り落ちる。
その温かさに。
次第に広がっていく熱さに。
「あっ……」
香彩は本当に堪らないのだと言わんばかりの、甘い喘ぎ声を上げ、熱い息をついた。与えられた赫の法悦を、身体と心の一番奥底で受け止めようとするかのように、紫雨から視線を外し、前を向いて背中を反らせる。
その体勢がより一層、紫雨と竜紅人を興奮させるのだということに、香彩は気付いていなかった。
紫雨からすれば、香彩の細い腰と妖艶で見事な括れを強調し、見せ付けられているような体勢だ。そして竜紅人からすれば、すっかり色付いてふっくりとした胸の漿果と暈を、触って欲しい舐めてほしいとばかりに突き出すような体勢だ。
「んっ……」
食い締める胎内の二本の雄の剛直さが、更に増した気がした。苦しいと香彩が思ったのは、ほんの刹那のことだ。胎内はすぐに馴染み、剛直を更に育てるかのように蠕動しながらも、きゅうきゅうと締め付ける。そしてもっと奥に欲しいのだと言わんばかりに、奥の蕾が楔の亀頭に、熱烈な接吻を贈るかのように吸い付くのだ。
ぽたり、と。
再び香彩の尾骶に、紫雨の赫が落ちる。
この血液に、この一滴に感じられるのは、紫雨の術力と、そして彼を取り巻く四神の気配だ。
香彩の身体に落ちたのは、ほんの数滴の血液だけだというのに、四神がすぐ側にいるようなそんな錯覚に陥る。
では四神をこの身に宿すとは、一体どういう感覚なのか。
術力を喰らわせ、護らせるのだと言ったのは彼だ。そして自分は喰らわせる餌が、もうないのだと。
それは長年彼を守り、そして香彩を守り、慈しんできたものだ。
いままさに香彩の身体を包み込むかのように展開される紫雨の術力を感じて、香彩は心のどこかで止めてほしいと思った。
今ここで『力』を使わなければ、今の『力』を継続しながら、ずっと保ち続けることが出来るのではないかと、そう思った。
だが現実は残酷だ。
年々減り続けて行く術力は、紫雨から大司徒としての祀りを行使する『力』を奪った。そして今はまだ維持されている『四神の護守』もまた、少しずつ壊れて行くことが予想された。紫雨の体内に巣食う四神に、術力を食われ続ける限り。
様々な感情が入り交じり、香彩はふるりと身を震わせた。
親愛と情愛の狭間で揺蕩う香彩の感情が、再びぽたりと落ちる紫雨の赫によって、一気に色欲へと引き上げられる。
僅かに。
「…ん、ぁ……っ」
胎内にある紫雨の剛直が動く。
まるで何かを確かめるかのように、卑猥な水音を立てて。
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