195 / 409
第一部 嫉妬と情愛の狭間
第195話 成人の儀 其の六十一★ ──獅子と真竜──
しおりを挟む華奢な香彩の白い身体を組み敷き、見下ろす紫雨の深い翠水は、捕食者のような光を宿していた。一夜の夢でしか与えられない獲物に、甘美で淫猥な感情を隠しもせず、ただひたすら貪り食う。だがその姿はけっして醜いわけではなく、むしろ近寄り難い高貴な獅子の姿を思い起こさせた。獅子は先程のどこか超然とした表情を捨て去ったのか、舌舐めずりでもするかのように薄く笑い、その息を荒らげる。
そして香彩の耳元でもまた、荒々しい息遣いがした。目の前の獅子に囚われてくれるなとばかりに、熱い息と、時折混じる真竜の唸り声を、香彩の耳に吹き込む。見ることは叶わないが、どこか冷たく、だが熱い眼光の鋭さをもった真竜の眼で、自分を見ているのだろうと香彩は思った。
「あ…、ああっ!あ…、あっ、あ……っんんっ…… 」
圧倒的な質量を持ったふたつの熱の肉塊が、胎内を更に蕩けさせていく。
その熱さと。
凄然たる心。
獅子のような鋭い深翠の眼光は、香彩を冷然とした過去へと突き落とす。
だが獲物を求める真竜の唸り声と熱い息遣いが、香彩を現実に縛り付ける。
冷水を浴びせられたような心とは裏腹に、身体は三度の熱を浴びたにも関わらず、最後の熱を求めて自ら腰を揺らす。
身体が震えた。
腹の底が燃えるように熱くなり、視界が更に潤んで揺らいでいく。
気付けば腹の辺りに掛かる、とろりと溢れ出るものに、香彩はそれが自分の熱だと遅れて理解した。勢いのないそれは、だらだらと腹から腰へと流れ落ちる。
やがて幾度も幾度も腹奥から押し寄せる、深い悦楽の波に、竜紅人に押さえ付けられている香彩の白い足が、受け止めきれなかった快楽を散らすように、びくりと跳ねた。
「は…、はぁ……ああっ、あぁ……」
「……かさい……っ!」
身の内からくる快楽に灼かれながら香彩は、どこか苦し気な声を聞く。
自分を見下ろす男の、欲を顕にした顔を見た。
だがその色欲を孕む、自分と同じ深翠がどこか濡れて光り、揺れた気がして、香彩は刹那の内に息を呑む。
「……あの時のことを……忘れたことなど一度もない」
荒々しく息を吐きながら、欲に掠れた官能的な低い声が、上から降ってくる。
「ずっと……ずっと後悔をしていた。お前にどう償えばいいのか分からないまま、ここまで……ここまで来てしまった……かさい」
何かとても大事なことを言われている気がするというのに、今の香彩には目の前の紫雨が、欲に浮かされながらも、どこか痛く切ない表情をしていること以外、理解出来ないでいた。
0
あなたにおすすめの小説
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
過保護な父の歪んだ愛着。旅立ちを控えた俺の身体は、夜ごとに父の形で塗り潰される
中山(ほ)
BL
「パックの中、僕の形になっちゃったね」
夢か現か。耳元で囁かれる甘い声と、内側を執拗に掻き回す熱。翌朝、自室で目覚めたパックに、昨夜の記憶はない。ただ、疼くような下腹部の熱だけが残っていた。
相談しようと向かった相手こそが、自分を侵食している張本人だとも知らずに、パックは父の部屋の扉を開く。
このお話はムーンライトでも投稿してます〜
秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~
めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆
―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。―
モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。
だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。
そう、あの「秘密」が表に出るまでは。
【完結】幼馴染から離れたい。
June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。
βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。
番外編 伊賀崎朔視点もあります。
(12月:改正版)
8/16番外編出しました!!!!!
読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭
1/27 1000❤️ありがとうございます😭
3/6 2000❤️ありがとうございます😭
4/29 3000❤️ありがとうございます😭
8/13 4000❤️ありがとうございます😭
12/10 5000❤️ありがとうございます😭
わたし5は好きな数字です💕
お気に入り登録が500を超えているだと???!嬉しすぎますありがとうございます😭
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
黒の執愛~黒い弁護士に気を付けろ~
ひなた翠
BL
小野寺真弥31歳。
転職して三か月。恋人と同じ職場で中途採用の新人枠で働くことに……。
朝から晩まで必死に働く自分と、真逆に事務所のトップ2として悠々自適に仕事をこなす恋人の小林豊28歳。
生活のリズムも合わず……年下ワンコ攻め小林に毎晩のように求められてーー。
どうしたらいいのかと迷走する真弥をよそに、熱すぎる想いをぶつけてくる小林を拒めなくて……。
忙しい大人の甘いオフィスラブ。
フジョッシーさんの、オフィスラブのコンテスト参加作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる