7 / 7
エピローグ
しおりを挟むいつの間にかめちゃくちゃに荒れ狂っていた気配がなくなっていた。
知らない間に手に握りしめていたお札はどこかに消えてしまっているのだが、それでも要は目をつむったまま黒神礼美を抱きしめ続けていた。
「あ、あの……」
腕の中で身じろぎする気配を感じて要が目を開けると、すぐ近くに黒神礼美の真っ赤な顔があった。
「あ、ご、ごめん」
慌てて要は抱きしめていた少女を離した。今になって要の方も顔が熱くなってくるのを感じた。考えてみれば女の子を抱きしめたのは人生でも初めての経験だ。
あたふたと意味もなく両手を動かして、そこでお札がなくなっている事にも気がついた。
「終わったのか?」
警戒するように辺りを見回して、そこで要はかわいらしい女の子を発見した。
つまりは黒神礼美のことなのだけれど、彼女の印象はまるで違っていた。
文字通り憑きものが落ちたといった感じだ。
「あ、あの、か、要くん」
思わず見とれてしまっていた要に恥ずかしげに少女が話しかけてきた。
「え? 俺?」
名前を呼ばれて要は我に返るどころか驚いてしまった。
「ご、ごめん。名前呼ぶの迷惑ですよね?」
上目づかい要を見る少女は本当に別人のようだった。
「別にかまわないけど……」
「本当に! よかった」
胸の前で両手を握りしめて症状はうれしそうにほほ笑んだ。
その微笑みは今まで浮かべていた偽物の笑みとは違って、とてもいい笑顔だった。
「あのそれで、要くんは今彼女がいたりするのですか?」
「いやいないけど」
少女の頬笑みに見惚れていた要は無意識に答えていた。
「じゃ、じゃあ、あの、私を要くんの彼女にしてください」
頬を赤らめて少女、黒神礼美は言った。
まるで別人だった。
「……………」
黒神礼美の言葉の意味が要に伝わるまでに長い時間がかかった。
少女は瞳を潤ませながら要の答えを待っている。
「え? は? ええっ! なんで?」
要は思い切り混乱した。
意味がわからない。
なんでこうなったのかまったくわからない。
はじめはただ単に席が隣になったからだった。
「いや待って、いやちょっと、ええっと」
「要さんははじめて私とちゃんと向き合ってくれました。ひどいことを言われて嫌いだと思いましたけど、こうやってまた話しかけてくれました」
「………」
「知っていますか。私みたいにまわりから拒絶されていたさみしい女の子は、ちょっと優しくされるとすぐに相手のことを好きになっちゃうのですよ」
「いやでもさ」
「私じゃダメですか?」
「いやダメとは言わないけど……」
「じゃあいいですよね。私、絶対に要さんのこと離しませんから。浮気したら、相手の女の子のこと呪っちゃいますから」
笑顔でなんだか怖いことを言っていた。
要はいまだ思考がついてきていなかった。
「きっと私、ヤンデレですよ」
悪霊は祓うことができたけど、なんだか別の者にとりつかれたような気がする要だった。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
手が届かないはずの高嶺の花が幼馴染の俺にだけベタベタしてきて、あと少しで我慢も限界かもしれない
みずがめ
恋愛
宮坂葵は可愛くて気立てが良くて社長令嬢で……あと俺の幼馴染だ。
葵は学内でも屈指の人気を誇る女子。けれど彼女に告白をする男子は数える程度しかいなかった。
なぜか? 彼女が高嶺の花すぎたからである。
その美貌と肩書に誰もが気後れしてしまう。葵に告白する数少ない勇者も、ことごとく散っていった。
そんな誰もが憧れる美少女は、今日も俺と二人きりで無防備な姿をさらしていた。
幼馴染だからって、とっくに体つきは大人へと成長しているのだ。彼女がいつまでも子供気分で困っているのは俺ばかりだった。いつかはわからせなければならないだろう。
……本当にわからせられるのは俺の方だということを、この時点ではまだわかっちゃいなかったのだ。
幼馴染同士が両想いらしいので応援することにしたのに、なぜか彼の様子がおかしい
今川幸乃
恋愛
カーラ、ブライアン、キャシーの三人は皆中堅貴族の生まれで、年も近い幼馴染同士。
しかしある時カーラはたまたま、ブライアンがキャシーに告白し、二人が結ばれるのを見てしまった(と勘違いした)。
そのためカーラは自分は一歩引いて二人の仲を応援しようと決意する。
が、せっかくカーラが応援しているのになぜかブライアンの様子がおかしくて……
※短め、軽め
隣人の幼馴染にご飯を作るのは今日で終わり
鳥花風星
恋愛
高校二年生のひよりは、隣の家に住む幼馴染の高校三年生の蒼に片思いをしていた。蒼の両親が海外出張でいないため、ひよりは蒼のために毎日ご飯を作りに来ている。
でも、蒼とひよりにはもう一人、みさ姉という大学生の幼馴染がいた。蒼が好きなのはみさ姉だと思い、身を引くためにひよりはもうご飯を作りにこないと伝えるが……。
大丈夫のその先は…
水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。
新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。
バレないように、バレないように。
「大丈夫だよ」
すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
**2026.01.02start~2026.01.17end**
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる