隣の彼女に呪われて

はなまる

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エピローグ

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 いつの間にかめちゃくちゃに荒れ狂っていた気配がなくなっていた。
 知らない間に手に握りしめていたお札はどこかに消えてしまっているのだが、それでも要は目をつむったまま黒神礼美を抱きしめ続けていた。

「あ、あの……」

 腕の中で身じろぎする気配を感じて要が目を開けると、すぐ近くに黒神礼美の真っ赤な顔があった。

「あ、ご、ごめん」

 慌てて要は抱きしめていた少女を離した。今になって要の方も顔が熱くなってくるのを感じた。考えてみれば女の子を抱きしめたのは人生でも初めての経験だ。
 あたふたと意味もなく両手を動かして、そこでお札がなくなっている事にも気がついた。

「終わったのか?」

 警戒するように辺りを見回して、そこで要はかわいらしい女の子を発見した。
 つまりは黒神礼美のことなのだけれど、彼女の印象はまるで違っていた。
 文字通り憑きものが落ちたといった感じだ。

「あ、あの、か、要くん」

 思わず見とれてしまっていた要に恥ずかしげに少女が話しかけてきた。

「え? 俺?」

 名前を呼ばれて要は我に返るどころか驚いてしまった。

「ご、ごめん。名前呼ぶの迷惑ですよね?」

 上目づかい要を見る少女は本当に別人のようだった。

「別にかまわないけど……」

「本当に! よかった」

 胸の前で両手を握りしめて症状はうれしそうにほほ笑んだ。
 その微笑みは今まで浮かべていた偽物の笑みとは違って、とてもいい笑顔だった。

「あのそれで、要くんは今彼女がいたりするのですか?」

「いやいないけど」

 少女の頬笑みに見惚れていた要は無意識に答えていた。

「じゃ、じゃあ、あの、私を要くんの彼女にしてください」
 頬を赤らめて少女、黒神礼美は言った。
 まるで別人だった。

「……………」

 黒神礼美の言葉の意味が要に伝わるまでに長い時間がかかった。
 少女は瞳を潤ませながら要の答えを待っている。

「え? は? ええっ! なんで?」

 要は思い切り混乱した。
 意味がわからない。
 なんでこうなったのかまったくわからない。
 はじめはただ単に席が隣になったからだった。

「いや待って、いやちょっと、ええっと」

「要さんははじめて私とちゃんと向き合ってくれました。ひどいことを言われて嫌いだと思いましたけど、こうやってまた話しかけてくれました」

「………」

「知っていますか。私みたいにまわりから拒絶されていたさみしい女の子は、ちょっと優しくされるとすぐに相手のことを好きになっちゃうのですよ」

「いやでもさ」

「私じゃダメですか?」

「いやダメとは言わないけど……」

「じゃあいいですよね。私、絶対に要さんのこと離しませんから。浮気したら、相手の女の子のこと呪っちゃいますから」

 笑顔でなんだか怖いことを言っていた。
 要はいまだ思考がついてきていなかった。

「きっと私、ヤンデレですよ」

 悪霊は祓うことができたけど、なんだか別の者にとりつかれたような気がする要だった。
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