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魔呂学科実習
訓練開始だ!
しおりを挟む『そんな、敵なんて何処にいるのよ?』
雪布留は、セレネがいつもの様に勢い良くジャンプしてXS25に乗り込んだのを確認すると、セレネの機体とル・ツーの砂緒にのみ聞こえる秘匿通信で話し掛けた。
『何を言うのですか、西には三つに分かれた域外の帝国と東にはくっ付いて近くなった神聖連邦帝国、さらに南にはまおう軍がおります!』
セレネは躊躇なく即座に答えた。
『何を言っているの? 域外の帝国にはレナードさんとライス氏が勝手に使節を送ってくれてる様だし、南のまおう軍の抱悶ちゃんとは大同盟を組んだじゃない! それに東の神聖連邦帝国だって姫乃ソラーレさんって女王が凄く良い人そうだって依世の話よ? もう同盟は完璧に安泰じゃない』
『フルエレ、使節を勝手に送ってもらったらダメでしょ関わらないと』
三人の話を聞いていた猫呼が肩をすぼめた。
『砂緒安心しろ、域外の帝国への使節についてはユティトレッドを通るから、ちゃんと内容は監視している』
『奴隷とか送ってないですよね?』
『安心しろ』
『砂緒も姫乃さんに会ったんでしょ?』
フルエレは急に砂緒に振ってみた。
『い、いやーーどうでしたっけ……』
『会っただろーがよ、一緒にタコの入った丸い食べ物食べてたじゃないか? あれは幻覚か』
『あれーー、そんな事ありましたっけ?』
『とにかくだ、南のまおう軍と神聖連邦帝国はまだまだ信用出来ない、その為の訓練でもある!』
『えーー、こんな可愛い学生さん達が戦場に出るなんて悪夢だわ』
『あんたも学生なのよ?』
黙っていた猫呼も話し始めた。
『安心して下さい、そうそう大きな戦いなんてしょっちゅう起きませんから』
等と砂緒が言った時点で、当の学生達が話し込んで動かないセレネ教官の機体をじーっと見ている事に気付いた。
『おっといけない、それでは早速行進の訓練だ!』
セレネのXS25が大型の竹刀を振ると、学生達のXS25はぎこちなく行進を始めた。
『うーん、歩くだけでもフラフラな機体がいますね』
『魔ローダーの操縦って結構大変なのねえ』
『砂緒もフルエレさんも最初から普通に蛇輪操縦出来ましたからね、結構天才なのかも知れません……そこ、しっかり足を上げて歩け!』
セレネが竹刀を向けると、XS25はビクッとなる。
『栄光のユーキュリネイドに一般生徒と同じに行進させるなんてバカにしてますわ』
『でも意外ですね、教官はテッキリSRV2ルネッサに乗られると思ってましたが』
『何か考えがあるのかも知れませんわ』
フルエレ達と同様に、生徒会長も書記と秘匿通信を行っていた。
『お前らまさかとは思うが今は授業中だからな、秘匿通信でぺちゃくちゃ喋る事は禁止だぞ!』
突然セレネが共通回線で叫んで、大半の生徒達がびくっとした。ほぼ全ての生徒達がこっそり誰かとお喋りしていたのだった。
『うむ……なかなか出来上がって来たな。まあこれまでクラスごとに基礎動作はして来た訳だしな……よし、少し走ってみよう!』
雪布留はコケた。
『やっぱり走るんじゃない!』
『魔呂で腕立てや組体操する訳じゃないからセーフだ』
『え、何の話してるんですか?』
等と言いながらも魔呂で学園のグラウンドを飛び出し、学園の北側にある山に向けて走り出した。本当の戦いともなれば狭いセブンリーファを北に南に走り回る事になるので、地味だが結構有益な訓練ではあった。各機体はオープン回線で生身の時と同様の掛け声を叫びながら山頂に到達した。
『わーーー、海だーーー!』
『魔ローダーから眺める海は綺麗ねーーっ!』
『なんだか気持ちがいいわー』
生徒達が山の頂から見える北海岸の海を見て口々に叫んだ。
バシバシッ!
突然セレネのXS25は巨大竹刀で地面を叩いた。
『お前ら観光に来たんじゃないぞ、帰りは全機ダッシュだっ!! 最後に着いた者は魔呂で腕立て50回だっ!』
『セレネさん?』
『遂に魔ローダーで腕立てまで……』
詳細は省くが、山頂から学園までダッシュした生徒の中でビリだった無名一般生徒が、魔呂で腕立てを50回したのであった。
ー少しの休憩を挟んで実習は再開した。
『よーし、ウォーミングアップは終了だ! これから本番の訓練を開始するぞ。各機体に大型木剣を渡す、それを持って好きな相手と組になれ!』
言いながらセレネ教官は大型の箱に無造作に立て掛けられた、樹齢数百年の木で出来た巨大な木剣を配って行く。ちなみにこの異世界には日本刀は存在しないので、同様に木刀も存在しない。
『好きな相手とですか……じゃあセレネ教官と』
スナコのル・ツーは教官のXS25の腕を掴んだ。
『じぇえい! 教官以外でだ!』
少し赤面しながらセレネのXS25は即座にル・ツーの腕を払った。
『じゃあ、私は雪布留とでも……』
『雪布留さん! どうです、私と組みませんこと?』
ル・ツーのスナコが言い掛けた所で、ユーキュリーネが割って入った。
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