176 / 562
III プレ女王国連合の成立
リーダー王女ふたり、夕食会兼軍議で大ゲンカ
しおりを挟む
ロミーヌ王国王城では、北部海峡列国同盟が間借りしていない方の本城の大広間で、ロミーヌ王を中心に座らせその横にセレネと砂緒が座り、ロミーヌ王が主催者という体裁で戦勝祝いの晩餐会と今後の軍議が開かれた。
「何よ偉そうに何で砂緒さんが上座に座ってるの? これも愛人パワーかしらね」
豪華料理を前にしてミミイがぶつくさ文句を言っている。
「あーー私失敗しちゃったわ。こんな豪華料理が出て来るなら空腹をキープしとくんだったわ。ねえY子さま」
同じく大量の料理を前にして兜のスリットから目を白黒させているのが見えるY子こと雪乃フルエレに向かってメランが半分冗談ぽく言った。
「そ、そうだな」
(うっわーこれは大失敗よ……さすがに欲張り過ぎたわ)
Y子は馬鹿みたいに大量のお菓子を食べまくった自分の意地の張り具合を呪った。
「どうした? まさか私だけのけ者にして皆で美味しい物食べて来たんじゃないだろうな?」
同じ並びに座るイェラが不審な三人の様子を細目で睨んで言った。
「い、いえ違うのよ、まだ用心で寝込んでる兎幸ちゃんに残す分を考えてるの。これってタッ〇ーに入れてもらえるのかしら?」
「そうか」
メランがとても庶民的な事を言って微笑ましくてイェラがにっこり笑った。
「うむ、全員揃ったようだな、ここでこの会の主催者であるロミーヌ王から有難い挨拶がある。皆心して聞け!」
「何よ、えらっそーに」
同じ対等な同盟国の王女格であるはずのミミイが、立ち上がり皆に会の開始を告げるセレネにあからさまに嫌悪の顔を向ける。
「あーーー、皆さまどうぞお気楽にお食事を楽しんで頂きたい。我が料理人が腕によりをかけて作った数々の料理皆さんのお口に合えば良いのですが……しかし思えば我が小国ロミーヌ王国が思いも寄らずここにおられる美しき総司令官セレネ王女のご温情を賜り、今や女王陛下の同盟国の一角を為した事は、まことに奇特と言うべきか幸運の至りというべきか、そう、それは私がまだ二十歳頃の若き日に学問の師匠である、あーーニナルティナの……」
「これ、何時まで続くの? 誰も聞いてないわよ」
「しっ」
今度はロミーヌ王の挨拶にまでケチを付け始めたミミイをメランが叱り、Y子が兜の下で苦笑いした。
「おお、なんと有難いご挨拶か。このセレネ痛み入る。今後もロミーヌ王国には同盟軍にご協力願いたい。皆の者ロミーヌ王に最大の拍手を」
「い、いいやまだ、これから……」
パチパチパチ。
同じく話が長いと思ったのか、セレネがいきなり立ち上がり王様のスピーチをぶっちぎって無理やり終了させた。王様は非常に不満そうだが総司令セレネの言葉なので逆らえず、そのまま静かに座った。しかしこれ以降、ロミーヌ王は城と土地を貸すばかりでほぼ発言権は無くなった……
「では、ロミーヌ王国の栄光と同盟軍のさらなる勝利を願って乾杯ッッ!!」
「乾杯」
人々の魂の籠っていない乾杯の声が響いた。
「ではどうぞ自由に料理を楽しんで欲しい。ここからは私から今後の方針について述べて行く。もし意見がある方は自由闊達に述べてもらいたい」
セレネの言葉を切っ掛けにあちこちからカチャkチャと料理を食べるフォークとナイフの音が響き始める。
(セレネっていつからこんな仕切り魔になったのよ……)
Y子もゆっくりと食事を始めた。セレネの横では無邪気な子供の用に砂緒も食べまくっている。
「貴方よくそんなに食べれるわね?」
「別腹なのよ」
「順序が逆でしょ」
ミミイとメランがぶつぶつ言いながらも豪華料理を食べ始めた。
「ではまず、東のユッマランド王に謝意を伝えたい。明日早朝にはユッマランド兵三千が当地に到着するそうだ。ミミイ王女、お聞き及びか? 私から感謝していると父君にお伝え願いたい。これで足踏みしていた我々の行動も再開出来るという物だ」
言うとセレネは座ったままだがミミイ王女に向かって深々と頭を下げた。
「うっっ、ごふごふ」
突然の指名に喉に食べ物が詰まるミミイ王女。
「本当なの?」
「うん、ちょっと待って……ええセレネ殿父王も同盟の為に有効に使ってくれと仰ってました」
横で聞くメランを遮り、遠慮がちに小声で応対するミミイ王女。本来は侍女リナの仇を討つため好戦的な彼女だが、Y子つまり実はその正体フルエレの手前どう振舞えば良いか分からなかった。
「という事で来て頂く兵達には強行軍になるが、明日早速行動を開始する。まず総兵力で四千数百程に膨れ上がった我が軍を二つに別け、あたしが砂緒と一緒に旗機蛇輪に乗りさらにイェラ殿にも副将として来て頂いて二千の兵と十両の魔戦車を引き連れ西のタカミーに攻め入り、さらにY子殿を大将としてミミイ王女とメラン殿を副将に黒い稲妻Ⅱに乗り南のナメに残りの兵と同じく魔戦車十両を引き連れ攻め込んで頂きたい」
セレネが兵力を二つに別け、七葉後川南側の二か国を攻め入る方針を告げた。
(何よ勝手に決めて蛇輪を乗り倒して……あれは私の物よ、砂緒も何も言わないで食べてばかり……)
「ねえ、なんかナメってやらしい地名よねえ、そう思わない?」
「もしかして貴方小学生男子なんじゃない?」
食べながらあまりにもしょーもない事を言い出すミミイにメランが皮肉を言った。
(やばっ、私も少し思った……)
Y子も同じ事を感じていた……
「良いでしょうか?」
「ははっ」
「よろしいかと」
一応一般兵のメランは兎も角、重要人物のY子とミミイ王女ふたりは無表情で返事をした。
「で、その後だが、恐らく女王の名代Y子殿ならナメなど瞬殺で落とすであろう。その後は軍団と魔戦車はそのまま防衛の為にその場に置き、黒い稲妻Ⅱだけで我が方の部隊に合流してもらいたい。その後いよいよ七葉後川チャイムリバー橋近辺に集結するメドース・リガリァ残存兵達を川に叩き落として殲滅する!!」
(へ? 何よそれ……)
「ちょっと待ってもらいたい。セレネ総司令殿、女王陛下のお言葉をお忘れか? 同盟女王雪乃フルエレ様は逃げる兵は討つなと仰っておいでだが」
思わずY子は立ち上がって異を唱えた。会場は皆食事をする手が止まり、水を打った様にシーーンと静まりかえった。あからさまに下を向いて関わり合いを避ける者達も居た。
「何よ偉そうに何で砂緒さんが上座に座ってるの? これも愛人パワーかしらね」
豪華料理を前にしてミミイがぶつくさ文句を言っている。
「あーー私失敗しちゃったわ。こんな豪華料理が出て来るなら空腹をキープしとくんだったわ。ねえY子さま」
同じく大量の料理を前にして兜のスリットから目を白黒させているのが見えるY子こと雪乃フルエレに向かってメランが半分冗談ぽく言った。
「そ、そうだな」
(うっわーこれは大失敗よ……さすがに欲張り過ぎたわ)
Y子は馬鹿みたいに大量のお菓子を食べまくった自分の意地の張り具合を呪った。
「どうした? まさか私だけのけ者にして皆で美味しい物食べて来たんじゃないだろうな?」
同じ並びに座るイェラが不審な三人の様子を細目で睨んで言った。
「い、いえ違うのよ、まだ用心で寝込んでる兎幸ちゃんに残す分を考えてるの。これってタッ〇ーに入れてもらえるのかしら?」
「そうか」
メランがとても庶民的な事を言って微笑ましくてイェラがにっこり笑った。
「うむ、全員揃ったようだな、ここでこの会の主催者であるロミーヌ王から有難い挨拶がある。皆心して聞け!」
「何よ、えらっそーに」
同じ対等な同盟国の王女格であるはずのミミイが、立ち上がり皆に会の開始を告げるセレネにあからさまに嫌悪の顔を向ける。
「あーーー、皆さまどうぞお気楽にお食事を楽しんで頂きたい。我が料理人が腕によりをかけて作った数々の料理皆さんのお口に合えば良いのですが……しかし思えば我が小国ロミーヌ王国が思いも寄らずここにおられる美しき総司令官セレネ王女のご温情を賜り、今や女王陛下の同盟国の一角を為した事は、まことに奇特と言うべきか幸運の至りというべきか、そう、それは私がまだ二十歳頃の若き日に学問の師匠である、あーーニナルティナの……」
「これ、何時まで続くの? 誰も聞いてないわよ」
「しっ」
今度はロミーヌ王の挨拶にまでケチを付け始めたミミイをメランが叱り、Y子が兜の下で苦笑いした。
「おお、なんと有難いご挨拶か。このセレネ痛み入る。今後もロミーヌ王国には同盟軍にご協力願いたい。皆の者ロミーヌ王に最大の拍手を」
「い、いいやまだ、これから……」
パチパチパチ。
同じく話が長いと思ったのか、セレネがいきなり立ち上がり王様のスピーチをぶっちぎって無理やり終了させた。王様は非常に不満そうだが総司令セレネの言葉なので逆らえず、そのまま静かに座った。しかしこれ以降、ロミーヌ王は城と土地を貸すばかりでほぼ発言権は無くなった……
「では、ロミーヌ王国の栄光と同盟軍のさらなる勝利を願って乾杯ッッ!!」
「乾杯」
人々の魂の籠っていない乾杯の声が響いた。
「ではどうぞ自由に料理を楽しんで欲しい。ここからは私から今後の方針について述べて行く。もし意見がある方は自由闊達に述べてもらいたい」
セレネの言葉を切っ掛けにあちこちからカチャkチャと料理を食べるフォークとナイフの音が響き始める。
(セレネっていつからこんな仕切り魔になったのよ……)
Y子もゆっくりと食事を始めた。セレネの横では無邪気な子供の用に砂緒も食べまくっている。
「貴方よくそんなに食べれるわね?」
「別腹なのよ」
「順序が逆でしょ」
ミミイとメランがぶつぶつ言いながらも豪華料理を食べ始めた。
「ではまず、東のユッマランド王に謝意を伝えたい。明日早朝にはユッマランド兵三千が当地に到着するそうだ。ミミイ王女、お聞き及びか? 私から感謝していると父君にお伝え願いたい。これで足踏みしていた我々の行動も再開出来るという物だ」
言うとセレネは座ったままだがミミイ王女に向かって深々と頭を下げた。
「うっっ、ごふごふ」
突然の指名に喉に食べ物が詰まるミミイ王女。
「本当なの?」
「うん、ちょっと待って……ええセレネ殿父王も同盟の為に有効に使ってくれと仰ってました」
横で聞くメランを遮り、遠慮がちに小声で応対するミミイ王女。本来は侍女リナの仇を討つため好戦的な彼女だが、Y子つまり実はその正体フルエレの手前どう振舞えば良いか分からなかった。
「という事で来て頂く兵達には強行軍になるが、明日早速行動を開始する。まず総兵力で四千数百程に膨れ上がった我が軍を二つに別け、あたしが砂緒と一緒に旗機蛇輪に乗りさらにイェラ殿にも副将として来て頂いて二千の兵と十両の魔戦車を引き連れ西のタカミーに攻め入り、さらにY子殿を大将としてミミイ王女とメラン殿を副将に黒い稲妻Ⅱに乗り南のナメに残りの兵と同じく魔戦車十両を引き連れ攻め込んで頂きたい」
セレネが兵力を二つに別け、七葉後川南側の二か国を攻め入る方針を告げた。
(何よ勝手に決めて蛇輪を乗り倒して……あれは私の物よ、砂緒も何も言わないで食べてばかり……)
「ねえ、なんかナメってやらしい地名よねえ、そう思わない?」
「もしかして貴方小学生男子なんじゃない?」
食べながらあまりにもしょーもない事を言い出すミミイにメランが皮肉を言った。
(やばっ、私も少し思った……)
Y子も同じ事を感じていた……
「良いでしょうか?」
「ははっ」
「よろしいかと」
一応一般兵のメランは兎も角、重要人物のY子とミミイ王女ふたりは無表情で返事をした。
「で、その後だが、恐らく女王の名代Y子殿ならナメなど瞬殺で落とすであろう。その後は軍団と魔戦車はそのまま防衛の為にその場に置き、黒い稲妻Ⅱだけで我が方の部隊に合流してもらいたい。その後いよいよ七葉後川チャイムリバー橋近辺に集結するメドース・リガリァ残存兵達を川に叩き落として殲滅する!!」
(へ? 何よそれ……)
「ちょっと待ってもらいたい。セレネ総司令殿、女王陛下のお言葉をお忘れか? 同盟女王雪乃フルエレ様は逃げる兵は討つなと仰っておいでだが」
思わずY子は立ち上がって異を唱えた。会場は皆食事をする手が止まり、水を打った様にシーーンと静まりかえった。あからさまに下を向いて関わり合いを避ける者達も居た。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
36
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる