魔法の魔ローダー✿セブンリーファ島建国記 弥生史上最悪の悪役令嬢と記される最強魔力少女は最愛の不死従者を手に入れて破滅フラグを叩き壊します!

佐藤うわ。

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III プレ女王国連合の成立

リーダー王女ふたり、夕食会兼軍議で大ゲンカ 下 バルコニーで砂緒と……

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「ははははははは、その事なら橋は全て落とされ敵兵共は逃げる事は出来ない。逃げない兵を討つのであれば女王陛下の御命令は破っていないぞ」
「何よそれ屁理屈じゃないっ! しかも橋を落としたのは貴方でしょ!!」

 Y子は言葉遣いも忘れ猛抗議した。

「どうなされたY子殿、楽しい会食ですぞ落ち着かれてはどうか。Y子殿は七葉後川南側の約十数か国の小国が、行先も分からず放浪する敵兵数千の住み家となって迷惑を被っても良いとお考えかな? それこそ平和に反する事と言えよう。女王陛下も平和をお望みのはずだぞハハハハハハハハハ」

 セレネは座りながら余裕シャクシャクで反論したが、Y子は上手く言い返す事が出来ない。

(何よ……セレネなんてリュフミュランの喫茶スペースで赤面しながらモジモジしてた癖に、いつからこんなに偉そうになったのよ!?)

「セレネさんセレネさん、戦う前にあまり味方同士で波風立てない方が……Y子殿という方もお困りですぞ」

 黙々と豪華料理を食べ続けていた砂緒が、さも揉め事が迷惑そうにセレネをたしなめた。

「ごめんね砂緒ー、なんかあの子ヘンな感じがしちゃって、ついきつく言ったけど大丈夫だよ~~」
「はいはいセレネは本当は凄く優しい子だと分かってます分かってます」

 砂緒はセレネの頭をぽんぽんと撫で始めた。くっつきながらあからさまにイチャイチャし始めた二人だが、一瞬セレネはY子をじろりと見ると、クスクスと笑う様な顔をした。

(ぶっちーーん!)

 その瞬間、Y子こと雪乃フルエレは何故かぶちぎれた。

「ちょっと待て! こちらは真剣に女王のお考えを伝えている、その態度は何だ!!」

 気が小さい癖に気が短いY子ことフルエレは、ブチ切れた感情のまま再びガタッと椅子から立ち上がって、飛び掛からん勢いでセレネに抗議した。

「ちょっとY子さん落ち着いてっ!」
「ひゃーー怒っちゃダメです」

 ミミイ王女とメランが必死になだめに掛かる。

「おや、Y子さんとやら、アタシとやろうってのかい? どっからでも掛かって来なよ!」
「セレネさんや、完全に台詞回しがスケバンの悪役です。落ち着いて下さい」

 セレネも立ち上がりY子を挑発するのを砂緒が食べながら適当に止めようとする。

「おおそうだっY子殿にはいまだ伝えて無かったが、海と山とに挟まれた小さき王国には既に参戦要請の書簡を出しているぞ。我らの戦いにも早期に参戦して頂けるかもしれんな!! ハハハ」

 再びセレネがY子を挑発する様な事を言った。

「何ですって!? 海と山と国には深く関わるなともお達しがあったではないかっ!!」
「はっ? 海と山と国の自主性を尊べという事で関わるなとは……言う事がころころ変わってません?」

 再び半笑いでY子の言う事を否定するセレネだった。引き続き会場は静まりかえっている。

(いつもいつも私の考えと逆ばかり……セレネはいつからこんなんなっちゃったのよ)
「な、舐めないでよ! 私だって……」

 そう言うとY子は背中に引っ提げている長い棒を前に握って構えた。兜以外この衣装も背中の武器も猫呼ねここの部下の闇の冒険者が使っている物でどういう物かフルエレはよく分かっていなかった。

「おや、本当にあたしとやるってのかい? いいよ掛かって来なよ?」

 砂緒に肩に手を置かれたセレネが再び挑発する。Y子は震える手で棒を握り直す。

(えっとこれどうするのよ?)

 カチッ
 が、長い棒を握った時に何かのスイッチが押されてしまい、カシャカシャッと棒が突然大鎌に変形した。

「キャッ」

 ガチャッグサッッ
 大きな刃物が飛び出てY子の中のフルエレがびっくりして思わず変形した大鎌を床に落とす。しかし落ちた大鎌は余程の切れ味なのか、切っ先が床に突き刺さってヴィーンと震えて立った。

「危ないっ! 大丈夫ですか?」
「おみ足にお怪我はありませんか!?」

 思わずメランとミミイが立ち上がってY子の足元を見るが、ギリギリで足には突き刺さっていなかった。思い掛けず単なるいざこざに本当に刃物が出て来て、Y子にはイェラがセレネには砂緒が立ち上がって止めに入る。

「ハハハハハハ、Y子殿はご自分の武器の扱い方もお忘れかなっ」

「落ち着けY子とやら、本当に冗談では済まなくなるぞ」
「う、うんごめんイェラ……さん」

「セレネどうしたんです? らしくないですよ。セレネと対等に戦える人間なんてププッピ温泉で出会った妙な二人以外居ないはずですから」
「安心しろ、本気ではない……皆さん驚かせて済まない。これはY子殿に稽古を付けてもらう約束をしていたのだ。この場でする事では無かったな。また日を改めよう、はははははは」

 セレネは大きな声で冗談とも本気ともつかない言い訳をすると再び席に座り食事を始めた。その後の会場の雰囲気は大変に重い物となって誰も何も言わなくなった。

「Y子さんとにかく迅速にナメ国を落として即座にセレネさんに合流しましょう。それ以外に今は手が無いようですから」
「ありがとう、そうするしか無いわね」

 ミミイ王女が言ってくれて少しだけ落ち着いたY子も静かに食事を始めた。

(どうして砂緒……全然助けてくれないの? いつもいつも私を助けてくれたのに……)

 Y子の中のフルエレは随分身勝手な不満を感じていた。砂緒はY子がフルエレと気付いていない上に、フルエレ自身は最近ずっと砂緒をないがしろにし続けた事をもう忘れていた。


 食事後、Y子はなんだか一人になりたくて、ミミイとメランに断ってお城のバルコニーで夜風に当たっていた。兜越しだが興奮して火照っていた顔に風が心地よかった。

「おやY子殿こんな所にいらしたか、横いいですかな?」

 砂緒だった。

「ええ、砂緒殿でしたね。こうして二人で会話するのは初めてかな」
(砂緒ってこんな大人だったっけ……)

 人間かどうかも不審に思っていた砂緒が今や常識的に振るまっていて驚くY子だった。

「あのーーーセレネさんの事なのですが、嫌いにならないでやって下さい。あの子実は人前に出るのが特に苦手で……しかし平和を守る為、同盟をより強固にする為にああやって気を張っているのです。二人きりになるともうデレッデレの優しい子なんですよぉ。おや、少しのろけてしまいましたかなワハハハハハ」

 フルエレは内心、いや絶対にそうじゃ無くてだんだん調子に乗って性格が悪いのが出て来たんだろうと思った。その上セレネセレネ言い出す砂緒が全く面白く無かった。

「おお、そうなのですかな? しかし砂緒殿程の男ともなるとおモテになるでしょう? セレネ総司令以外にも意中の女性が一人や二人処では無くいらっしゃるのでは無いかな?」

 Y子は自分がフルエレだと全然気が付かない砂緒に自分の事をどう思っているのか知りたくて話題を振ってみた。

「ふふふ……実は居るには居ます秘めたる人が……」
(えっやっぱりまだ……?)
「ほほう、どの様な??」

 Y子は夜の景色を見ながら聞いた。

「実は……イェラが……彼女といるととても心が落ち着くのです……」
(え?)
「それに猫呼という猫耳の子、最近接点が薄いですが、実は妹として実に可愛く思っております」

 Y子は軽くコケた。

「さらには瑠璃ィるりいという熟女がおりまして実に色っぽく熟した肉体の持ち主で……最初はいがみ合っていたのですが、少し気になります」
「は、はあ気が多いのですな。他には」
「そうですなあ……気が重いのですがリナさんという美しき侍女がおりまして最近亡くなってしまいまして、心が痛みます」
「………………」
「あっ忘れてはいけない子が」
「ほうほう?」
兎幸うさこです……最近急成長しまして、私の中でも好感度が再上昇中なのですよフフ」
「へ、へえ、ほ、他は? もうさすがに居ないでしょう……」

 Y子はもう残り僅かだと再び聞いてみた。

「……はい、私の中でどうしても消せない想い出の素晴らしき女性が……」

 今までと少し違って砂緒が少し溜めて言葉を発し、遂に来たと思った。

「ほう、何と言う?」
「ええ、七華しちかというそれは素晴らしい美しい妖艶な王女で。最初は喧嘩をしたり意地悪されたりと色々あったのですが、今では思い返す度に赤面してしまう程良い思い出なのですよ、ふふまた会いたいです……」
(何よそれ……)

 フルエレにすればある意味一番聞きたくない名前だった。

「では、もうそろそろ仲間が待つゆえ……」

 Y子は兜の下で寂しい顔でその場を去ろうとした。

「あっ一番大切な人を忘れていました……」

 立ち去ろうとしたY子の足がぴたっと止まった。

「ほう、誰かな?」
(ふぅーーー砂緒ったら溜めに溜めて最後に……ヤレヤレ)

「はい……大きな声では言えないのですが、神聖連邦帝国聖帝のご息女、姫乃ソラーレという美しき姫が……ほんの一瞬の出会いでしたが、彼女はとある理由で七華よりも他の誰よりも今は特別な存在なのですよ……」

 言いながら砂緒は少し笑って遠くを見つめた。冗談で言っている様には見えない砂緒には珍しい爽やかな笑顔だった。

(何よそれ……誰よ……)

 雪乃フルエレは瑠璃ィに言われた、あの方こと姫乃ソラーレと自分自身、雪乃フルエレが顔も声もそっくりだという事など完全に忘れていた。そのまま一礼するとY子はバルコニーから立ち去った。

(フルエレ……どうしてますかね? 今もあいつと二人で居るんでしょうか……)

 Y子が立ち去った後、Y子が当の雪乃フルエレと全く気付かないまま、砂緒は心の中で当然の様にフルエレの事を思い返していた。姫乃ソラーレが彼の中で特別な存在なのはフルエレと完全に似ていて、なおかつそれで久しぶりにフルエレと心を通わす事が出来た気がしたからだった。そんな事をフルエレは知る由も無かった。
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