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III プレ女王国連合の成立
セレネ激怒 砂緒「?」 でも仲が良い……
しおりを挟む黒い兜で顔を隠したY子こと雪乃フルエレ女王は、手に手を取って二人で廊下に消えて行く砂緒とセレネを眉間にシワを寄せて無言で見送った。そんなY子をコーディエが遠くから見守っていた。
(砂緒、一緒に来てくれると思ったのに……)
「Y子殿、何をぼーーっとしてらっしゃるのです? そんなに砂緒さんとセレネ総司令官の事が気になりますかっ!?」
気が付くとメランが悪戯っぽく笑いながら横にいた。
「もうさっさと行きませんか? 私らここからオゴ砦西の集結ポイントに行かなきゃなりませんし、それに私のレヴェルという鹵獲魔ローダーの修理が終わってるんです。城前の平地に停めてるので見に来ませんか??」
今度はミミイ王女が反対側から話し掛けて来る。ミミイ王女はうっとうしいと思う事も多々あるが、二人が居てくれて感謝した。
「そうね、行きましょうか……」
「は~~い」
「はい」
三人は取り敢えず鹵獲して修理が終わった魔ローダーレヴェルの元に向かった。廊下に消えゆくY子の後ろ姿をコーディエは静かに見送り続けた。
再び視点を砂緒とセレネに戻す。
「セレネさん何をフグの様にぷく~~~~~っと頬を膨らませてるんですか? 凄く可愛いです」
「え、可愛い!? ……ってそうじゃない!! 分からないか??」
セレネはさらにさらに頬を限界まで膨らませて地団太を踏んだ。
「……リスさんの真似ですか? やっぱり凄く可愛いです……」
「ち・が・う!! 砂緒ちゃんとやってよっ!!」
再びセレネが黒いミニのタイトスカートにスーツ姿の大人びた格好で、子供の様に頬を膨らませて地団太を踏みながら言った。
「地団太踏みながらぷくっと頬を膨らませるのマイブームなんでしょうか、すいません、本当に何で怒っているのか全然良く分からないのです……」
「砂緒言ったよな、衣図ライグは友達だから信用出来るって! それが一気呵成にメド国に攻め入るって私の壮大な大計画がいきなり破綻し掛けたぞ!! ちゃんと首に縄をかけて制御しておけよ、お前が私の愛人って公言したのなら、お前のミスは全部あたしの恥になるんだからなっ!? 面目丸潰れだよっ!!」
セレネは激しく怒りながら砂緒に衣図ライグの独断専行を抗議した。
「……そうプンプン怒らないで下さい。確かに衣図ライグの事はすみませんでした。私が彼の事を見誤っていたようです。今度ちゃんと言っておきますから……そうだっお詫びにキスしませんか?」
「うんうんそうだな、キスしよーって、誤魔化されねーよ!」
セレネの怒りは簡単には収まりそうには無かった。
「では今度衣図ライグにあったらサクッと殺しておきます。それで良いですか?」
「い、いやいや、お前の数少ない友達なんだろ、殺さんで良いって……やめとけよ」
砂緒が無表情で衣図を殺すとまで言い出して、ほっといたら本当に実行しそうな気がしてセレネは慌てて砂緒に釘を刺した。
「ふぅー分かってもらえて良かったですよ」
「いや別に分かってねーって。怖いから止めただけだよ。だけど各国軍が圧倒的戦力で一斉に私の指揮でメドース・リガリァに攻め込む事の重要性を分かって欲しいんだ」
再びセレネは大軍勢で攻め込む事を自慢し始めた。
「メダ国だか面土国だか知りませんが、そんなに圧倒的な戦力差があるならもう放って置いたら良いんじゃないでしょうか? それに蛇輪で城をサクッと爆撃したら済む物をめんどくさい事をしますねえ」
「もーーーーーっ! 前にも同じ会話しただろうがっ同盟各国が歩調を合わせて行動する事に意味があるんだってばっ!!」
収まりかけていたセレネの怒りが砂緒の不用意な一言で再び火が付きかける。
「す、すいませんすいません、そうプンプン激怒らないで下さい。それよりも何ですかこの豪華な部屋は? なんかこの部屋だけ異常に装飾が綺麗で、あちらには天蓋付きのダブルベッドまで置いてあるのですが……なんだかこの山城には不釣り合いな気がしますが」
砂緒はあからさまに話題を逸らしたが、セレネはそれに気付いていたが乗っかってやった。
「うふふふ、ようやく気付いたな。此処はあたしと砂緒の共同の控室であり寝室なんだよ……公費を最大限流用して徹底的に豪華な部屋に設えたんだ……満足した?」
セレネは言いながら砂緒の手を取って天蓋付きのダブルベットに導き並んで座り肩を寄せた。セレネのさらさらつやつやのストレートな長い髪が砂緒の肩にかかり良い香りがする。
「な、何ですか、公費流用ってダメじゃないですか……兵隊さんは飲まず食わずで戦ってるって時に」
「飲まず食わずって何だよ、まだ戦い始まってねーし、兵糧は十分に準備してるわっ」
「そうですかあ? でも公費を勝手に使って豪華な自室を作るというのは……」
「お前そんな真面目な性格だったか? 安心しろ建設費用には猫呼先輩の私費も使われてる。お前も散々猫呼先輩の金で贅沢してるだろーがっそれと同じだよ」
セレネはさらに横から砂緒に抱き着いて来た。
「は、はあ……セレネさんくっつき過ぎではないでしょうか……変ですよ」
「Y子殿の事がそんなに気になる??」
セレネが激しく怒っていた本当の理由はこっちだった。
「はいーー凄く気になりますねえ、なんだかY子殿を見てると初めて会ったのにほうっておけないのですよ、フフフ。身体を見てるだけで分かります、彼女は私の好みの子ですよ……」
砂緒の無神経な言葉が再びセレネを激怒させる。
「むーーーーーーっバカかーーー!!! もうちょっと気の利いた事言えよっ!! 顔見えないからって身体じろじろ見てるとか変態かよ……」
「ハッ、すいません……私、セレネの事しか考えていません」
「遅いわ」
「じゃ、どうすれば怒りは収まりますか??」
セレネは砂緒に横から抱き着いたまま、目を閉じてしばらく黙ったままだった。
「……じゃ、さ、今晩此処で初めて一緒に寝よ……それで許す」
セレネは目を閉じながら、かなり赤面して勇気を出して言った。
「うっ……それはまだ早いです……そ、そうだっ戦争が終わったら、そういう所はじっくり二人で考えましょう……」
砂緒はそっと両手でセレネの肩を離すと、ベッドからすくっと立ち上がった。
「何故……あたしを壁に押し付けてキスを迫った野獣の様な砂緒は何処に消えた? 最近のお前はキバを抜かれたみたいになってるぞ……」
「若気の至りです。私がセレネをとても大事に思っているという事だけは理解して下さい」
「蛇輪の魔力源としてか?」
砂緒は一瞬黙った。
「…………………………違いますよ、そんな訳無いでしょう」
砂緒の目は激しく泳いでいた。
「あからさまに嘘やん」
しばらく沈黙が続いた。
「今晩は私、廊下で寝ますから」
「廊下で寝るな! ちゃんとお前専用の寝室も作ってあるぞ」
「ありがとう、やっぱりセレネは優しいですね」
「うるさいわ」
しかし何だかんだ言って仲が良い二人だった。砂緒はそのままセレネの巨大寝室から出て行った。
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