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III プレ女王国連合の成立
Y子とスピネルとアンジェ玻璃音女王、それぞれの出発
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「はぁはぁ……いちいち魔ローダーの駐機場に行くのに城から出て山を降りないといけないとか、めんどくさいですわ、というかしんどい……」
「そのまま出発するのだし一緒でしょう」
ミミイ王女がタカラ山新城から魔呂駐機場に降りて来ただけで息が切れている。
「……山を下って息が切れている人を初めて見たわよ。どっか病気なんじゃない? 診察してもらったら?」
「私これでも王女なんですってば。色んな事を他人にやってもらう贅沢な生活に慣れ過ぎてるだけよ」
「ダメじゃない……」
「御二人さん、色々な兵達が見てるのよ、もうちょっと立派にやって頂戴」
煌びやかな王女の衣装を着るミミイと、黒いトンガリ帽子の魔女衣装のメランは一般兵達の地味な軍服の中で非常に目立っていた。
「それを言うならY子様の奇天烈なコスチュームが一番ヤバイですよ」
「……そうかしら? 最初は我もそう感じてたのだが、だんだん気に入って来た」
「Y子様のコスチューム、後ろから見るとむちむちのお尻が見えそうで見えない絶妙なミニスカ具合ですわ……」
「その目止めて、気持ち悪い」
「やーーーっメランさん嫉妬!!」
「違いますって」
等とバカ会話している内に駐機場に着いた。
「着く前から見えてはいたけど、これはちょっと目立ち過ぎでしょうに」
「元敵機ですから、これくらいしないと味方からも区別が付かないのよ」
メドース・リガリァの魔ローダーレヴェルは元々メタルグレーの様な地味な色合いだが、この鹵獲されたレヴェルは修理の後に全身真っ白に塗り替えられていた。魔呂で全身真っ白の機体は意外にも珍しい方だった。
「……でもミミイさんよく敵機体に乗れる心境になったな、いいのだろうか?」
Y子は兜越しにミミイの表情をちらっと見た。ちなみにレヴェルという敵機体名はコンソールに表示されていたので分かった。
「Y子様お気遣いありがとうございます! でも私は大丈夫です。この機体で必ず最初に襲って来たアノ黒い魔ローダーを倒してみせますわよ」
そう言いながらミミイ王女は腰に下げた小袋をぎゅっと握り締めた。黒い魔呂とはスピネルのデスペラードの事だ。
「……その小袋は? 確かリナさんの遺骨は失われたはず」
メランが怪訝な顔でミミイを見た。
「うふふ、中を見て」
「これは、おはじき?」
ミミイ王女が巾着袋を広げて中を見せると、色とりどりのおはじきが入っていた。
「これをリナだと思って一緒に戦うの……」
「………………」
Y子は会話に入れなかった。
「ではY子様と兎幸さんがル・ツーに、私がSRVに、そしてミミイが白いレヴェルに搭乗してトリッシュ国攻略に参加する訳ですね。案の定、黒い稲妻Ⅱいやル・ツーをY子様に取られてしまいました」
「ごめんなさい」
「レヴェルじゃない、ザンザスⅡよっ!! ル・ツーは伝説機体なんだから大将が乗るのは当然よね」
「中身はレヴェルなのにザンザスⅡって、ややこしいわねえ」
「じゃ、そろそろオゴ砦西の集結ポイントに行きますか?」
メランが皆に出発を促した。ちなみに兎幸は自分の空飛ぶ円盤、魔ローンでいつでも何処でも好きな場所に行けたから、皆と行く必要は無かった。
「おおおーーーーーーいいい、おおおーーーーーいいい!! 待たれーーーーい!!」
それぞれの魔呂に搭乗しようと歩き出した三人の後ろから、砂緒の呼び止める大きな声がした。
「おやあ、砂ちゃまが来ましたよY子さま~~~?」
何故かミミイ王女がにや~っと笑った。
「砂ちゃまって何よ、そんな呼び方した事ないわよ、いやないぞ」
「はぁはぁ間に合った。Y子殿、挨拶も無しに行ってしまわれるとは薄情ですぞっ!」
「は、はぁ、ども」
砂緒は兎幸と共に山を駆け下りて来たのであった。Y子こと雪乃フルエレはぺこりと頭を下げた。
「私はもうちょっと此処で遊んでから行くよっY子!!」
「うん、兎幸が居ると心強い、頼むわね」
「確かに兎幸さんの魔ローンがあると百人力です」
「そんな言い方しない!」
「Y子殿、れっきとした一軍の将にこの様な言い方は無礼で御座ろうが、Y子殿お一人で大丈夫ですかな? 私が付き従いましょうか??」
(え……? 砂緒来てくれるの??)
「い、いや砂緒殿はセレネ総司令官付きと言われておろう……その様な訳には」
正直に言って不安感で一杯だったY子は砂緒の随伴の申し入れが涙が出る程嬉しかった。
「いやいやセレネは実はああ見えて非情に優しい女の子なのですよ、私から言えば結局何でも言う事を聞いてくれるのです。私が是が非でもY子殿の軍に参加すると言えば最終的には許してくれるでしょう」
「そ、そう……」
「ホラホラもう甘えちゃえばいいじゃない?」
「私も砂緒さんが居てくれる方が何かと盾になってくれて安心です」
(確かに……このまま砂緒が来てくれる方が有難い……来てもらおうカナ……)
「セレネには兎幸に事情を伝えてもらって、私も一緒に出発しましょう」
「ど、どうしてそんなに優しいのです?」
「どうして? 理由が居るのですか? うーむ、強いて言えば私がY子殿に何故か関心があって、面白そうだからですが……」
「そ、そうか」
雪乃フルエレに言われている訳では無いのだが何故か嬉しかった。
「あああーーーーー間に合った!! ヤバイヤバイ!! Y子殿の見送りに間に合ったなハハ」
「あらーー来ちゃったわねえ」
大声がして振り向くと、セレネまでもが山を駆け下りて来た……ミミイとメランが頭を抱えた。
「砂緒優しいな。わざわざY子殿の見送りに来るなんてなっ」
等とセレネは言いながら、小さい胸を砂緒の腕に押し付けてしがみ付いた。
「なんですかセレネ人前ですよ、そこまでグイグイ押し付けなくとも胸は存在してるのはちゃんと知っています」
「フフ、そうだな、色々あったものなっ。Y子殿、私も砂緒もしっかり見送るので、安心して出発してくれ」
「あ、あう、それなのですがセレネ、相談したき事が」
(色々あったって何よ?)
「はい、お見送り有難う御座います、セレネ総司令官殿、砂緒殿……これより集結ポイントに向け出発しますっ!」
「うむ」
「あ、あうY子殿?」
Y子はシュッと敬礼した。それを見てセレネは不敵に笑った。
「Y子行くの?」
Y子の正体をちゃんと知っている兎幸とミミイとメランは心配した。
「ああ、じゃ後で来てね」
「うん」
「Y子殿、それで本当に良いのですか?」
「そうですわよっハッキリ言って下さい!!」
慌ててメランとミミイ王女が続けて聞いて来る。
「……いやこれで良い」
(私がアルベルトさんアルベルトさん言っている時にずっと砂緒の面倒見てくれてたもの、当然よね……)
それからY子は振り返る事も無く魔ローダール・ツーに乗ると、そのまま集結ポイントに向かって行った。
「……行ってしまったな。我らも司令部としての準備があるぞ」
「ええ、はい」
砂緒はル・ツーの後ろ姿を小さくなるまで見送った。
―メドース・リガリァ。
「スピネルよ物見の報告によれば同盟軍の動きがいよいよ活発化しているらしい。遂に総攻撃開始が近付いている可能性が高い。アンジェ玻璃音女王陛下の事、しっかり頼むぞ」
「ハッ!! 身命を賭して女王陛下の御身をお守りします!!」
貴嶋は遂に山越え作戦に出発するスピネルに声を掛けた。
「女王陛下、どうぞご無理を為さらない様に。どうか無事の御帰還を……」
「ええ、貴嶋、貴方こそ無理をしない様に。そしてこの作戦、必ず成功させましょう」
この場では人前であっさりしているが、女王と独裁者貴嶋は昨晩はしっかり別れを惜しんだのだった。少し離れた場所でサッワも敬礼をしている。スピネルはサッワに軽く目で合図すると、サッワはにっこりと笑った。
「よし、スピネルの隠密作戦部隊、出陣!! 行けっっ」
「ハッッ」
決して同盟軍に悟られない様に、極秘裏にスピネルのデスペラード・サイドワインダーカスタムⅢと随伴のレヴェル三機、そして千人の手練れの工作員部隊と作戦の主役アンジェ玻璃音女王が山越え作戦の為に、メド国の北バックマウンテンに向けて出発した。女王陛下は最も安全と思われるデスペラードに増設されたパイプ椅子に鎮座していた……
「そのまま出発するのだし一緒でしょう」
ミミイ王女がタカラ山新城から魔呂駐機場に降りて来ただけで息が切れている。
「……山を下って息が切れている人を初めて見たわよ。どっか病気なんじゃない? 診察してもらったら?」
「私これでも王女なんですってば。色んな事を他人にやってもらう贅沢な生活に慣れ過ぎてるだけよ」
「ダメじゃない……」
「御二人さん、色々な兵達が見てるのよ、もうちょっと立派にやって頂戴」
煌びやかな王女の衣装を着るミミイと、黒いトンガリ帽子の魔女衣装のメランは一般兵達の地味な軍服の中で非常に目立っていた。
「それを言うならY子様の奇天烈なコスチュームが一番ヤバイですよ」
「……そうかしら? 最初は我もそう感じてたのだが、だんだん気に入って来た」
「Y子様のコスチューム、後ろから見るとむちむちのお尻が見えそうで見えない絶妙なミニスカ具合ですわ……」
「その目止めて、気持ち悪い」
「やーーーっメランさん嫉妬!!」
「違いますって」
等とバカ会話している内に駐機場に着いた。
「着く前から見えてはいたけど、これはちょっと目立ち過ぎでしょうに」
「元敵機ですから、これくらいしないと味方からも区別が付かないのよ」
メドース・リガリァの魔ローダーレヴェルは元々メタルグレーの様な地味な色合いだが、この鹵獲されたレヴェルは修理の後に全身真っ白に塗り替えられていた。魔呂で全身真っ白の機体は意外にも珍しい方だった。
「……でもミミイさんよく敵機体に乗れる心境になったな、いいのだろうか?」
Y子は兜越しにミミイの表情をちらっと見た。ちなみにレヴェルという敵機体名はコンソールに表示されていたので分かった。
「Y子様お気遣いありがとうございます! でも私は大丈夫です。この機体で必ず最初に襲って来たアノ黒い魔ローダーを倒してみせますわよ」
そう言いながらミミイ王女は腰に下げた小袋をぎゅっと握り締めた。黒い魔呂とはスピネルのデスペラードの事だ。
「……その小袋は? 確かリナさんの遺骨は失われたはず」
メランが怪訝な顔でミミイを見た。
「うふふ、中を見て」
「これは、おはじき?」
ミミイ王女が巾着袋を広げて中を見せると、色とりどりのおはじきが入っていた。
「これをリナだと思って一緒に戦うの……」
「………………」
Y子は会話に入れなかった。
「ではY子様と兎幸さんがル・ツーに、私がSRVに、そしてミミイが白いレヴェルに搭乗してトリッシュ国攻略に参加する訳ですね。案の定、黒い稲妻Ⅱいやル・ツーをY子様に取られてしまいました」
「ごめんなさい」
「レヴェルじゃない、ザンザスⅡよっ!! ル・ツーは伝説機体なんだから大将が乗るのは当然よね」
「中身はレヴェルなのにザンザスⅡって、ややこしいわねえ」
「じゃ、そろそろオゴ砦西の集結ポイントに行きますか?」
メランが皆に出発を促した。ちなみに兎幸は自分の空飛ぶ円盤、魔ローンでいつでも何処でも好きな場所に行けたから、皆と行く必要は無かった。
「おおおーーーーーーいいい、おおおーーーーーいいい!! 待たれーーーーい!!」
それぞれの魔呂に搭乗しようと歩き出した三人の後ろから、砂緒の呼び止める大きな声がした。
「おやあ、砂ちゃまが来ましたよY子さま~~~?」
何故かミミイ王女がにや~っと笑った。
「砂ちゃまって何よ、そんな呼び方した事ないわよ、いやないぞ」
「はぁはぁ間に合った。Y子殿、挨拶も無しに行ってしまわれるとは薄情ですぞっ!」
「は、はぁ、ども」
砂緒は兎幸と共に山を駆け下りて来たのであった。Y子こと雪乃フルエレはぺこりと頭を下げた。
「私はもうちょっと此処で遊んでから行くよっY子!!」
「うん、兎幸が居ると心強い、頼むわね」
「確かに兎幸さんの魔ローンがあると百人力です」
「そんな言い方しない!」
「Y子殿、れっきとした一軍の将にこの様な言い方は無礼で御座ろうが、Y子殿お一人で大丈夫ですかな? 私が付き従いましょうか??」
(え……? 砂緒来てくれるの??)
「い、いや砂緒殿はセレネ総司令官付きと言われておろう……その様な訳には」
正直に言って不安感で一杯だったY子は砂緒の随伴の申し入れが涙が出る程嬉しかった。
「いやいやセレネは実はああ見えて非情に優しい女の子なのですよ、私から言えば結局何でも言う事を聞いてくれるのです。私が是が非でもY子殿の軍に参加すると言えば最終的には許してくれるでしょう」
「そ、そう……」
「ホラホラもう甘えちゃえばいいじゃない?」
「私も砂緒さんが居てくれる方が何かと盾になってくれて安心です」
(確かに……このまま砂緒が来てくれる方が有難い……来てもらおうカナ……)
「セレネには兎幸に事情を伝えてもらって、私も一緒に出発しましょう」
「ど、どうしてそんなに優しいのです?」
「どうして? 理由が居るのですか? うーむ、強いて言えば私がY子殿に何故か関心があって、面白そうだからですが……」
「そ、そうか」
雪乃フルエレに言われている訳では無いのだが何故か嬉しかった。
「あああーーーーー間に合った!! ヤバイヤバイ!! Y子殿の見送りに間に合ったなハハ」
「あらーー来ちゃったわねえ」
大声がして振り向くと、セレネまでもが山を駆け下りて来た……ミミイとメランが頭を抱えた。
「砂緒優しいな。わざわざY子殿の見送りに来るなんてなっ」
等とセレネは言いながら、小さい胸を砂緒の腕に押し付けてしがみ付いた。
「なんですかセレネ人前ですよ、そこまでグイグイ押し付けなくとも胸は存在してるのはちゃんと知っています」
「フフ、そうだな、色々あったものなっ。Y子殿、私も砂緒もしっかり見送るので、安心して出発してくれ」
「あ、あう、それなのですがセレネ、相談したき事が」
(色々あったって何よ?)
「はい、お見送り有難う御座います、セレネ総司令官殿、砂緒殿……これより集結ポイントに向け出発しますっ!」
「うむ」
「あ、あうY子殿?」
Y子はシュッと敬礼した。それを見てセレネは不敵に笑った。
「Y子行くの?」
Y子の正体をちゃんと知っている兎幸とミミイとメランは心配した。
「ああ、じゃ後で来てね」
「うん」
「Y子殿、それで本当に良いのですか?」
「そうですわよっハッキリ言って下さい!!」
慌ててメランとミミイ王女が続けて聞いて来る。
「……いやこれで良い」
(私がアルベルトさんアルベルトさん言っている時にずっと砂緒の面倒見てくれてたもの、当然よね……)
それからY子は振り返る事も無く魔ローダール・ツーに乗ると、そのまま集結ポイントに向かって行った。
「……行ってしまったな。我らも司令部としての準備があるぞ」
「ええ、はい」
砂緒はル・ツーの後ろ姿を小さくなるまで見送った。
―メドース・リガリァ。
「スピネルよ物見の報告によれば同盟軍の動きがいよいよ活発化しているらしい。遂に総攻撃開始が近付いている可能性が高い。アンジェ玻璃音女王陛下の事、しっかり頼むぞ」
「ハッ!! 身命を賭して女王陛下の御身をお守りします!!」
貴嶋は遂に山越え作戦に出発するスピネルに声を掛けた。
「女王陛下、どうぞご無理を為さらない様に。どうか無事の御帰還を……」
「ええ、貴嶋、貴方こそ無理をしない様に。そしてこの作戦、必ず成功させましょう」
この場では人前であっさりしているが、女王と独裁者貴嶋は昨晩はしっかり別れを惜しんだのだった。少し離れた場所でサッワも敬礼をしている。スピネルはサッワに軽く目で合図すると、サッワはにっこりと笑った。
「よし、スピネルの隠密作戦部隊、出陣!! 行けっっ」
「ハッッ」
決して同盟軍に悟られない様に、極秘裏にスピネルのデスペラード・サイドワインダーカスタムⅢと随伴のレヴェル三機、そして千人の手練れの工作員部隊と作戦の主役アンジェ玻璃音女王が山越え作戦の為に、メド国の北バックマウンテンに向けて出発した。女王陛下は最も安全と思われるデスペラードに増設されたパイプ椅子に鎮座していた……
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