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Ⅳ セブンリーフ新北中同盟女王選定会議

貴城乃シューネ追い出される 中 黒猫仮面Ⅱ世の欲望

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「え、どゆこと? 猫呼ねここの二番目のお兄様の猫弐矢ねこにゃさんが黒猫仮面スーツを持ち去って着てるのじゃないの? もしかしてスピナさん??」

 それまで緊急事態にも関わらず明るく笑っていた猫呼の顔が一瞬で凍り付いた。この場のみ雪布瑠ユキ・ふること雪乃フルエレ女王の大切な人、為嘉なかアルベルトを魔ローダーで殺害した一番目の兄、猫名ねこなこそがスピナの正体である。そのスピナが再び現れたとすれば彼女にその事実が伝わるかもしれない。自分の兄がアルベルトを殺害した事、そしてそれをひた隠しにしている事がフルエレに知れればもうこれまで通り友達でいられなくなるかもしれない……その恐怖がよぎって言葉が出なくなった。

「くくくくく、この七華くんは僕がもらった、はははははは」

(……七華くん? 僕? 確実に猫弐矢お兄様じゃん……)

「待って! 七華を連れて行かないで!!」
「……貴方猫弐矢お兄様ね?」

 猫呼はおもむろに黒猫仮面にズバリと名前で呼び掛けた。

「ち、ちが、違う。僕は猫弐矢等という男では無い! 黒猫仮面Ⅱ世だっ!」
「黒猫仮面にせい?」

 雪は思わず復唱した。

「貴方……一体今まで何してたの? 食事は??」
「僕は晩餐会とか苦手だからね、シューネに断って一人で部屋で図書室から借りた本を読んでいたよ!」
「やっぱり猫弐矢お兄様じゃない!?」
「はっち、違う! 本など読んでいない。地下室で獣を殴りながら蝋人形を作っていたぜ!!」
「あからさまに嘘っぽいわ」
「では、この辺でさらばだっ!」

 焦った黒猫仮面Ⅱ世は気を失った七華メイドを抱えたままそそくさと走り去ろうとする。

「待って!! じゃあいったい貴方、七華をどうするおつもり?」

 猫呼は力の限り大きな声で呼び止めた。

「……七華をどうするかだって!? ハァハァ……そ、それは七華くんを……我が物にする!!」
「我が物にするってどういう事!?」
「猫呼、詳しく聞かなくとも分かるでしょ?」

 雪は猫呼の肩を掴んだ。

「分からないよ……猫弐矢お兄様はいつもにこにこしてて本を読んでて物静かで、優しくて朴訥で女の子ともあんまり話さない……そんなお兄様がどうしてしまったの!?」
「くっくっくっ優しくて物静かで女の子ともあんまり話さないだって?」

 黒猫仮面Ⅱ世は不気味に笑い出した。

「どうしたのお兄様!?」
「くっくっくっそんなの全て嘘だね。本当は普段いつもいつもエロい事ばかり考えていたよ」
「嫌……嘘よ……そ、そんなハズないわっ! お兄様は永遠の清純派よ!!」

 雪は良く分からない兄妹の会話に固唾を飲んだ。

「ごくり……」
「くっくっ違うな。いつもいつもエロい事を考えていた僕の目の前に遂に理想のエロい女性、七華が現れた……その時に僕はもう欲望を抑える事が出来なくなってしまったんだ……彼女の身体を好き勝手に我が物にしたい、そうそれが僕の本性さっ!!」
「いやあああ……お兄様がそんな訳が無い! きっと何かの間違いよ、きっとその黒猫スーツがそうさせるのね!?」
「まあまあ落ち着きなさいって、男なんてあれでフツーよフツー」

 雪は必死に猫呼の肩を揺するが猫呼も聞く耳を持たない。

「確かにリュフミュラン城で黒猫スーツを発見した時、僕は何かに目覚めてしまった……そして今このスーツを着た瞬間から、僕は欲望のままに生きる事を決意した! もう恥も外聞も無い! 今こそ七華の身体を我が物にするんだ!!」
「いやあああああ、我が物にするって具体的にはどうするの?」
「バカなの? やめなさいって、どうして具体的に聞くのよ?? 大体分かるでしょ!?」
「んーん、全然わかんにゃーい」

 雪はあっけに取られた。しかしこのやり取りで猫弐矢だけじゃなく猫呼も少しおかしくなりかかっている事にようやく気付いた。
 パシパシパシパシパシ
雪は連続ビンタをした。

「あぶぶぶぶぶぶぶ」
「目を覚ましなさい!!」
「ふにゃ? で、具体的にはどんな事をしちゃうの??」
「ハァハァ 教えてやろう、まずはベッドに静かに寝かせ、そしてそして……ハァハァ……服をゲホゲホッ」

 黒猫仮面Ⅱ世は自分の想像でむせて咳き込んだ。雪はさじを投げてたじろぐ。

「お兄様、落ち着いてゆっくり冷静に具体的に言うのよ?」
「そ、そうだね、まずは服を脱がせ……七華の豊かで白い胸を……ごくり」
「いやああああああどうするの? 一体どうするの?」
「何なのこのバカ兄妹、一体目の前で何が起こっているの??」
「は、ハハハハハ、茶番は此処までだ! 私は忙しいのでね、ではっ!!」
「聞いてて恥ずかしいわっ!!」

 バシッ!!

「あう!?」

 いつのまにか戻って来ていたセレネが後頭部に当て身をすると、黒猫仮面Ⅱ世は一瞬で床に崩れ落ちた。
 ドサッ!!

「お兄様!?」
「七華!!」

 慌ててスナコちゃんが七華の身体を支えた。

「ふぉっふぉっふぉっ、そ奴が何者かマスクを剥いでみればどうじゃ?」

 ようやく食事を終えた庭師猫弐矢が立ち上がって提案した。

「そうだな、早速剥いでみっか?」

 ペリペリペリ
 猫呼始め、皆が固唾を飲む中顔を覆う黒猫マスクが剥がされると、やはり中身は眼鏡を外した猫弐矢だった。ポケットには彼の折りたたまれた眼鏡が入っていた。

「と、するとこの庭師はもしや怪〇二十面〇では?」
「誰だよそりゃ」
「ワシは本当にただの庭師じゃ! 怪人じゃないぞ」

 疑いを持たれた庭師が激しく首を振った。

「その人は怪人とかじゃないよ、どっちかが本当の庭師でどっちかがネコニャーさんとか言う人だ。この男が玉座の間の結界装置を暴走させた結果、みんな少しづつおかしくなってるんだ!」

 ドシュッ!!

「にゃうっ!?」

 同じく戻って来た紅蓮の言葉を聞いて何故か突然セレネが猫呼にまで当て身をして気絶させてしまった。
 どしゃっ

「え、なんで?」

 スナコは慌てて猫呼も支えながら驚いてセレネを見た。
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