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Ⅴ 千岐大蛇(チマタノカガチ)
出会い、姫乃ソラーレと依世 中 尋問と連絡途絶 仮初め姉妹①
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―神聖連邦帝国、聖都ナノニルヴァ統帥本部。
猫弐矢とフゥーと根猫三世と別れた貴城乃シューネは、真面目にも魔車で山を越え早速当庁して帰投を報告した。しかしその後軍部の高官達に密室に押し込まれ、ぐるりと囲まれて半ば尋問を受ける様な状態になっていた。
「一体あの金輪の姿は何なのかな? 偉大な四旗機の金輪があの様な状態になるなど異常」
「そうだ、少し七葉島を視察に回るだけが何故あの様な状態になるのですか?」
「七葉島の女王国連合とやら、そこまでに力を付けているのか?」
「武者修行の旅に出られた若君は御無事なのですかな」
「聖帝陛下のご親征は本当に可能なのか?」
本当は大声で怒鳴り散らしてなじりたい場面だが、姫乃殿下の御学友であり重臣の一人でもある貴城乃シューネをどの様に攻略すれば良いか、まだまだ距離感を図りながらの尋問であった。
「それらの事全て機密に関する事です。聖帝陛下に直々に申し開きするまでは詳細に語る事は出来かねます。どうかご容赦を」
シューネは慇懃に頭を下げたが、その答えは木を鼻でくくった様な物言いだった。
「ふん、姫乃殿下の御学友である事を鼻にかけ、最大限利用してのし上がった者がっ!」
「今度こそそのお高くとまった態度がいつまで続く物やら」
「これ、シューネ殿も元を辿れば聖帝一族に連なる高貴なお家柄、失礼な物言いは許されませんぞ」
「これは謝ろう」
「ふんっ」
軍部の高官達の中でもまだまだ足並みは揃っていない部分があった。
「全て私の不徳の致すところです。重ねて謝罪致します」
シューネはひょうひょうと心の籠っていない態度で頭を下げた。
「……しかしよもや夜叛モズと示し合わせているのではあるまいな?」
「そうだ、そうとしか思えぬ」
突然訳の分からない話が出て来て、シューネはふっと周囲を見回した。その自然な態度を見て高官達は顔を見合わせた。
「もしかして知らぬのですかな?」
「いえ、一体何の話でしょうか?」
高官達は再び顔を見合わせた。まるで浦島太郎でも見る様な態度でシューネを見直した。
「シューネ殿が帰投しない間クラウディア王国からの連絡が途絶え、あまつさえ三方の関所まで封鎖されて情報が入って来ない状態にて、すわもしや夜叛モズと貴城乃殿二人による反逆ではないかと騒ぎになった直後に其方が帰投したのですぞ。このままクラウディアに軍を派遣する手筈の所でしたぞ」
「何っ!?」
シューネは思わず席を立った。
「そのご様子では本当に知らなかった様ですな」
「しかし我々の間ではもっぱらシューネ殿は七葉島の女王国連合とやらと手を組み、さらには同じく行方不明の瑠璃ィキャナリー殿のスィートスとも連携して、神聖連邦帝国の西半分を支配する王国を作ろうと画策していると噂しておりましたぞ」
ドンッ!!
突然シューネは机を叩いた。冷静な彼にしてはありえない態度だった。
「断じてその様な事は無い!!」
若いシューネの大声で何名かの高官は思わずビクッとしてしまう。
「まあ落ち着きなされ。あの金輪の無残な姿を引っ提げて帰投した以上、貴殿が反逆とやらに加担している事は無いであろうが、モズの今後の動き如何では貴殿にも責任の類が及ぶであろうな」
シューネは激しく冷や汗を掻いた。自分が知らない間に、セブンリーフで割と楽しく過ごしている内に、何か得体の知れないトンデモ無い事態が進行している事を知った。
(モズよ、何をやっておるのだ~~!?)
一体これからどうすれば良いのかシューネですら少し頭が混乱した。
「まあまあ座って、少し落ち着きなされ」
先程までと完全に立場が逆転して高官達が笑いながら彼をなだめた。
「そうですぞ、丁度良い時に帰投されたのです」
「貴殿はクラウディアに派遣する追加部隊の長として事態を収拾してもらう事となる」
「聖帝陛下の前で懸命に釈明する事ですな」
「おっとその前に姫殿下に助け船のご依頼ですかなククク」
状況が状況だけにもはや言い返す言葉も無かった。
「ははっ謹んで拝命します……」
「良い心がけですぞふふふ」
散々なじられた挙句、ようやくシューネは解放されたのだった。
「……やはり姫乃に会わねばならぬ、急がねば」
シューネはナノニルヴァの宮に急いだ。
―夕方、ナノニルヴァの津。
日が傾くにつれて作業員達の姿も減り、人々はまばらになって来ていた。
パカッ
大型船の物陰に置かれていた大きな樽の一つに、丸い穴が突然開いた。
キョロキョロ
その器用に開けられた穴から外界を観察する二つの瞳が見えた。
「紅蓮、殆ど人影は無いよ! もう樽から出てもいいんじゃないかな~~」
多少イラついた声の主は美柑だった。
「シッダメだよ。樽移動は潜入調査の醍醐味さっ! こうして樽からニョキッと手足を出して移動するんだっ!」
パカッ
本当に樽から紅蓮の手足が生えて来た。彼らはこの姿で船底から此処まで移動して来たのだった。
「何で樽移動なの? もしかして神聖ナントカの王子で城持ちとか許嫁が十人とか全部ウソなの? もう嘘でもいいわっ樽から出たいよ」
「ウソじゃ無いって、本当に僕は神聖連邦帝国の聖帝の息子なんだってば」
「説得力無いわーっ!!」
バキッ!!
遂にキレた美柑は魔法で内側から樽を破壊した。
「あっ美柑!? せっかく加工した潜入用樽スーツが!!」
「もういいっ! 私聖都のお城まで飛んで行く! 落ちないでねフェレット」
怒りながら叫ぶと美柑はフェレットを強く抱いたまま、ビューーーンと飛行魔法で東に飛んで行った。
「あーーー美柑待ってーーー!!」
それを見た紅蓮もバキッと樽スーツを破壊して飛び出し、そのままセレネに劣らない脚力で聖都に向けて走り出した。
猫弐矢とフゥーと根猫三世と別れた貴城乃シューネは、真面目にも魔車で山を越え早速当庁して帰投を報告した。しかしその後軍部の高官達に密室に押し込まれ、ぐるりと囲まれて半ば尋問を受ける様な状態になっていた。
「一体あの金輪の姿は何なのかな? 偉大な四旗機の金輪があの様な状態になるなど異常」
「そうだ、少し七葉島を視察に回るだけが何故あの様な状態になるのですか?」
「七葉島の女王国連合とやら、そこまでに力を付けているのか?」
「武者修行の旅に出られた若君は御無事なのですかな」
「聖帝陛下のご親征は本当に可能なのか?」
本当は大声で怒鳴り散らしてなじりたい場面だが、姫乃殿下の御学友であり重臣の一人でもある貴城乃シューネをどの様に攻略すれば良いか、まだまだ距離感を図りながらの尋問であった。
「それらの事全て機密に関する事です。聖帝陛下に直々に申し開きするまでは詳細に語る事は出来かねます。どうかご容赦を」
シューネは慇懃に頭を下げたが、その答えは木を鼻でくくった様な物言いだった。
「ふん、姫乃殿下の御学友である事を鼻にかけ、最大限利用してのし上がった者がっ!」
「今度こそそのお高くとまった態度がいつまで続く物やら」
「これ、シューネ殿も元を辿れば聖帝一族に連なる高貴なお家柄、失礼な物言いは許されませんぞ」
「これは謝ろう」
「ふんっ」
軍部の高官達の中でもまだまだ足並みは揃っていない部分があった。
「全て私の不徳の致すところです。重ねて謝罪致します」
シューネはひょうひょうと心の籠っていない態度で頭を下げた。
「……しかしよもや夜叛モズと示し合わせているのではあるまいな?」
「そうだ、そうとしか思えぬ」
突然訳の分からない話が出て来て、シューネはふっと周囲を見回した。その自然な態度を見て高官達は顔を見合わせた。
「もしかして知らぬのですかな?」
「いえ、一体何の話でしょうか?」
高官達は再び顔を見合わせた。まるで浦島太郎でも見る様な態度でシューネを見直した。
「シューネ殿が帰投しない間クラウディア王国からの連絡が途絶え、あまつさえ三方の関所まで封鎖されて情報が入って来ない状態にて、すわもしや夜叛モズと貴城乃殿二人による反逆ではないかと騒ぎになった直後に其方が帰投したのですぞ。このままクラウディアに軍を派遣する手筈の所でしたぞ」
「何っ!?」
シューネは思わず席を立った。
「そのご様子では本当に知らなかった様ですな」
「しかし我々の間ではもっぱらシューネ殿は七葉島の女王国連合とやらと手を組み、さらには同じく行方不明の瑠璃ィキャナリー殿のスィートスとも連携して、神聖連邦帝国の西半分を支配する王国を作ろうと画策していると噂しておりましたぞ」
ドンッ!!
突然シューネは机を叩いた。冷静な彼にしてはありえない態度だった。
「断じてその様な事は無い!!」
若いシューネの大声で何名かの高官は思わずビクッとしてしまう。
「まあ落ち着きなされ。あの金輪の無残な姿を引っ提げて帰投した以上、貴殿が反逆とやらに加担している事は無いであろうが、モズの今後の動き如何では貴殿にも責任の類が及ぶであろうな」
シューネは激しく冷や汗を掻いた。自分が知らない間に、セブンリーフで割と楽しく過ごしている内に、何か得体の知れないトンデモ無い事態が進行している事を知った。
(モズよ、何をやっておるのだ~~!?)
一体これからどうすれば良いのかシューネですら少し頭が混乱した。
「まあまあ座って、少し落ち着きなされ」
先程までと完全に立場が逆転して高官達が笑いながら彼をなだめた。
「そうですぞ、丁度良い時に帰投されたのです」
「貴殿はクラウディアに派遣する追加部隊の長として事態を収拾してもらう事となる」
「聖帝陛下の前で懸命に釈明する事ですな」
「おっとその前に姫殿下に助け船のご依頼ですかなククク」
状況が状況だけにもはや言い返す言葉も無かった。
「ははっ謹んで拝命します……」
「良い心がけですぞふふふ」
散々なじられた挙句、ようやくシューネは解放されたのだった。
「……やはり姫乃に会わねばならぬ、急がねば」
シューネはナノニルヴァの宮に急いだ。
―夕方、ナノニルヴァの津。
日が傾くにつれて作業員達の姿も減り、人々はまばらになって来ていた。
パカッ
大型船の物陰に置かれていた大きな樽の一つに、丸い穴が突然開いた。
キョロキョロ
その器用に開けられた穴から外界を観察する二つの瞳が見えた。
「紅蓮、殆ど人影は無いよ! もう樽から出てもいいんじゃないかな~~」
多少イラついた声の主は美柑だった。
「シッダメだよ。樽移動は潜入調査の醍醐味さっ! こうして樽からニョキッと手足を出して移動するんだっ!」
パカッ
本当に樽から紅蓮の手足が生えて来た。彼らはこの姿で船底から此処まで移動して来たのだった。
「何で樽移動なの? もしかして神聖ナントカの王子で城持ちとか許嫁が十人とか全部ウソなの? もう嘘でもいいわっ樽から出たいよ」
「ウソじゃ無いって、本当に僕は神聖連邦帝国の聖帝の息子なんだってば」
「説得力無いわーっ!!」
バキッ!!
遂にキレた美柑は魔法で内側から樽を破壊した。
「あっ美柑!? せっかく加工した潜入用樽スーツが!!」
「もういいっ! 私聖都のお城まで飛んで行く! 落ちないでねフェレット」
怒りながら叫ぶと美柑はフェレットを強く抱いたまま、ビューーーンと飛行魔法で東に飛んで行った。
「あーーー美柑待ってーーー!!」
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