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I ニナルティナ王国とリュフミュラン国
待ってくれ砂緒さん 勝利 ..-(短縮化工事2025)
しおりを挟む「敵じゃない、敵じゃないぜ!」
目が合った衣図は全力でアピールする。
ギシギシギシ……
魔戦車をひしゃげさせていた砂緒は、割と中途半端な所で止めてひょいっと降りた。
「何だ貴様は」
(うーむ、敵じゃ無いってフルエレが逃げ込んだ側か? ま、いいか行こう)
彼はそのままあらぬ方向に走って行く。
「なんだぁ? 何で行っちゃうかなあ一緒に戦おうぜ~~」
しばらくして突然敵兵達がぽいぽいと空中に吹き飛ばされ始める。
ドシーーン! バシーーーン!!
「うわーーっ」
「ぐはーーーっ」
衣図は一瞬手を止めて異様な光景に見入った。
「今度はなんだぁ?」
「うおりゃあああ重くなれーーーーーハハハハハハハ」
スタタタタ……
彼は一旦後ろにバックして助走をつけながら徐々に重量を増加して、慣性で敵兵にぶつかるという戦い方を思い付いたのだった。
「ハハハハハ○ョ○Q戦法だっ!」
ドカドカドカッ!
とても地味な戦い方だが威力は絶大だった。重い暴走トラックの様になった砂緒が敵兵の列にぶつかると、ボウリングピンの様に敵兵が吹き飛ばされて行く。
「何だアレは!?」
「に、逃げろォー!!」
「ぶつかるぞーうわーーっ」
魔銃や魔法を撃っても跳ね返す暴走人間に、敵兵達は逃げ惑った。
「なんだか良く分からんが野郎ども体勢を立て直し今度は南林の部隊に向かう!」
(さて、南はどうなっているか……)
ニナルティナ軍の軍師であり今回の作戦を立案し、今は南側伏兵の指揮を担当している有未レナードも困惑していた。
「マズイ……ヤバイもうヤバイ。マジでヤバイ」
イケメンの外見とは裏腹に性格的に残念な部分があるこの男は、大軍を擁しての負け戦に焦り倒していた。
「なんだか衣図の騎馬隊がこっちに向かって来てますが」
副官の眼鏡女が慌てて報告に来る。
「ええ、なんで!? やっぱり隠れてたのバレてた?? えいわざわざ大将が向かって来るなら返り討ちにしてやれっ!」
有未レナードは部隊に隠れて撃つ様に命じた。
ドドド……
自分に気付かず衣図の部隊は突っ込んで来る、彼は楽に勝てると思った直後だった。
「後ろだ、おりゃーーーっ」
「なぬっ?」
ドドド……
突然、有未レナードの後ろから軍勢が殺到する気配が迫って来て振り返った。
「ぎょぎょ」
息を潜めて迂回していたイェラの部隊がグッドタイミングで攻勢を掛けたのだ。
「イカン、負ける……」
結局突然の後方からの敵襲に大混乱となった。前後から挟まれ敗色濃厚と感じた彼は、眼鏡の副官と共に逃げ始めてしまう。
「逃げるな待てコラーッ」
「誰が待つか~~」
イェラはしつこく追い掛けたが、敵司令官有未レナードを取り逃がしてしまう。
ー陣砦前の主戦場。
もはや戦いは最終盤だった。守勢側だったリュフミュラン軍が今度は逆にちりじりに逃げる残敵を掃討する場面になっていた。
そうなるとフルエレは率先して戦いに参加する意欲を急激に失っていく。そんな時、彼女はリュフ軍に交じって進む砂緒をようやく見つけた。
「あぁ砂緒ーーっ! ここだよーーーっ!!」
ホッとして涙交じりの満面の笑みで叫び、両手を大きく振りまくるフルエレだったが……
「あー~~? 来てたのですかフルエレ」
それは駅前で友人に再会した程度の砂緒の反応だった。
(反応薄っ)
「すなお~~~!!」
感動とテンションに格段の違いを感じながら、なおも大声で砂緒を呼ぶフルエレ。
「はいーフルエレ~~?」
「すなおーーー!!」
何故か面白くなって来た砂緒は擱座した魔戦車の上に乗ると、手を振りもう一度大声で呼んでみた。
「はーいフルエレーーー!!」
釣られて突然砂緒の周囲の男共が同調して叫び出す。
「フルエレ! フルエレ! フルエレ!」
どんどん声は多く大きくなり、勝どき代わりのフルエレの大合唱となった。
「やめてー恥ずかしいッ」
その時自分の手を見てようやく気付いた。
(うっ)
今自分の姿は、純白のドレス姿で金髪をなびかせ魔銃を両手で大きく振り回し、目立ちたがり屋の勝利の女神みたいな恥ずかしいモノだった。
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