B.B.HEARTS

池谷光

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勇士集う

交戦

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 あまりの一瞬の出来事に二人は思わず呆然としていたが、男の悲痛な叫び声を聞いて我に返る。そしてしばらく音が止んだかと思うとふいに右方の草むらが音を立てて動いた。さらにそれに合わせるかのように左方の草も揺れ始める。まるで何かがいるかのような草むらの揺れ方に二人は息を潜める。そして動きが止まったかと思われた瞬間、二人にむかって左右から何かが襲いかかった。二人はそれぞれ前方と後方に避けて攻撃を回避する。

「やっぱり・・・!メタルモンキー・・・!」
「メタルモンキー!?」

 二人の襲ったのはメタルモンキーと呼ばれている猿であった。体格自体はサイガ達と同じくらいの大きさであるが、その身体は全身が紫色で尻尾が短く、筋肉質な腕が特徴的である。二匹の内片方は左眼に傷を負っており、もう片方は木でできた棍棒を持っている。

「金属を主食としている猿よ。たしか金属の種類を匂いで見極められるの」
「金属を主食?しかも匂いで種類がわかる?すげぇ猿だな・・・」
「性格は凶暴で金属を見つけたらその持ち主を殺してまでも手に入れようとするらしいよ」
「なるほど、つまり俺たちは今殺されそうなわけだ」
「でも私は目立った金属なんて身につけてないと思うんだけど・・・」

 そう言ってアリシアはサイガを見る。明らかに疑いを含んだその目は、お前のせいじゃないのかと訴えていた。

「なんだその目は。金属だったらあんただってちゃんと持っているだろうが。金って言う金属の塊をよ」

 見ろと言ってサイガは地面に落ちていた金属貨幣の欠片を指さす。貨幣の種類によって残っている欠片の大きさに差があり、どうやらメタルモンキーは金属の中でも好みがあるらしい。

 棍棒を持っているメタルモンキーは片目のメタルモンキーに身振り手振りしながら何か話しかけており、片目のメタルモンキーも何回も頷いている。そしてお互い手をたたき合うと棍棒を持っている方はサイガに、片目の方はアリシアに対して身体を向けて身構えた。どうやらお互い一対一で戦うつもりらしい。

「どうやら一匹はそっちにむかっていくっぽいぞ。大丈夫か?」
「大丈夫、任せてよ」
「きつかったらそこら辺に隠れてても良いんだぞ」
「まだ子供扱いしてるでしょ!心配しなくても大丈夫だってば!するなら自分の心配しなよ」

 わかったよと言ってサイガは目の前の相手を見据える。相手もサイガを見据えると、空にむかって跳んだ。そして棍棒を両手で力強く持ち振りかぶると、地上のサイガにむかって思い切り振り下ろした。

 サイガは真横に跳んでそれを避ける。振り下ろされた棍棒は轟音とともに思い切り地面に叩きつけられた。あまりの衝撃にサイガは思わず声を上げる。

「メタモンは腕力が強いから気をつけてね!握力は岩を砕くほどだから!」

 メタルモンキーの略称が若干気がかりになりながらも、そういうことは先に言っといてくれと心中思いを巡らせるサイガ。アリシアも片目のメタルモンキーと交戦しているのがうかがえた。

 メタルモンキーは回避したサイガを眼で捉えると即座に棍棒を横薙ぎに振るった。それに対してサイガは高く跳んでその攻撃を避ける。再度攻撃を避けられたことに驚いたような顔を見せるメタルモンキー。サイガは跳んでいる最中それを確認しながら、メタルモンキーの顔を蹴り飛ばした。メタルモンキーは呻き声とともにそのまま草むらの中に消えた。

 メタルモンキーをとりあえず退けたサイガは一息ついていると、前方から片目のメタルモンキーが飛んできた。サイガはそれをさっと軽く避けると片目のメタルモンキーは地面に激突し倒れ込んだ。

「どう?私も結構やるもんでしょ?」

 そう言ってアリシアはサイガに対して得意げな顔をしてみせた。たいしたもんだよとサイガは頷く。どうやら戦闘面に関しては心配ないようで、そういう意味ではここまで来れたのにも納得がいく。

 倒れていた片目のメタルモンキーは立ち上がると、そそくさと草むらの中に消えていった。地面には先程サイガによって蹴り飛ばされたメタルモンキーの棍棒が転がっている。

「あのメタモンも私の強さに恐れをなして逃げたようね」
「その略称やめろ。色合いと言い別の何かを彷彿とさせる」

 何それと訝しげな顔をするアリシアにサイガは何でも無いと呟く。二匹のメタルモンキーを退けた二人は先に進もうとするが、再び草むらが揺れる。草むらの中からはメタルモンキーの鳴き声が聞こえてきており、どうやらまだ二人のことを諦めてないようである。

「まだ懲りてないっぽいよ。面倒くさいなぁ」
「しかし妙だな、いくら凶暴でもあいつら二匹にここまでの被害が・・・」

 すると今度は別の草むらが揺れ始め、それに誘発されるように次々と二人の周りの草むらが揺れ始めた。その音は段々と二人に近づいてきており、その動きは一つの意思を持っているかのようであった。

「・・・これはマズいな」

 サイガがそう呟いた瞬間、草むらからメタルモンキーの集団が二人にむかって一斉に襲いかかってきた。サイガとアリシアは襲いかかってくる大勢のメタルモンキーの姿を見て思わず叫んでいた。
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