断罪する側と断罪される側、どちらの令嬢も優秀だったらこうなるってお話

kouta

文字の大きさ
34 / 45

第34話 パルフェのモットー

しおりを挟む
 グレイシア国からフローディア国への帰路につく朝、外は気持ちが良い晴天で、リズベットは両手を掲げて背筋を伸ばす。
「んー、サイコーね」
 グレイシア国に来てやるだけやったと自負があるリズベットは、晴れ晴れとした気持ちで空を見上げる。するとそれまで積み荷を確認していたパルフェがやってきた。フローディア国に持ち込む商品チェックは無事に済んだらしい。
「姉さん忘れ物はない?」
「ええ、大丈夫よ」
 パルフェの問いかけに、リズベットは親指と人差し指で丸を作って返事をした。続けてリズベットはライネルの方を見るが、彼も大丈夫と頷いた。
「よし、じゃあフローディア国へ向かうよ! 二人とも馬車へ乗って!」
 パルフェの指示を受けて、リズベットは馬車へと駆け寄る。そうしていざ乗り込もうと足をかけた際、ふとリズベットは誰かの視線を感じた。リズベットが誰だろうと振り返ると、はるか後方にベオウルフらしき姿が見えた。
 まさかのベオウルフに驚いたリズベットであったが、わざわざ見送りに来てくれた事に彼なりの本気が見えた気がした。リズベットは笑みを浮かべ、一人呟いた。
「また近い内に会いましょう」
 こうしてリズベットは大きな期待を胸にグレイシア国を後にした。

「姉さん、悪いけど王都に行く前に寄り道させてもらうよ。頼まれた商品を納品しなきゃならないんだ」
「もちろん構わないわ。無理言ってついて行ったのは私だもの」
 ここでどこに寄っていくのかを聞かなかったのは、リズベットにしては珍しい事であった。通常運転のように見える彼女であったが、ツコシヤート湖の美しさ、刺身という未知の食事、新都の醸し出す異国情緒、ライネルの知人や、ベオウルフとの新たな出会いなど、密度の濃すぎたグレイシア国の体験は、浮かれてしまう程楽しかったらしい。
 リズベットから行先を聞かれる事を予期し、備えていたパルフェは珍しい事もあるもんだと思ったが、それ程グレイシア国を楽しんでくれたのかと思うと悪い気はしなかった。
 一方、楽しんだのはライネルも一緒のようで、珍しく彼から話を切り出したかと思えば、なんと魚の話題であった。 食べる前の頃と比べるととてつもない快挙である。
「しかし初めこそ躊躇しましたが、食べてみると魚も美味しいものですな。私はシンプルな塩焼きが気に入ったのですが、リズベット様は何が好みでしたか?」
「私? 私はそうねぇ。刺身かしら?」
「なんと!」
「味が好きかはまだはっきりとしてないのだけれどね? ここでしか食べられないとなると」
「確かに希少価値は相当に高いでしょうなぁ」
 海の幸について盛り上がるリズベット達を見て、パルフェはうんうんと頷く。二人の馴染み具合を見て、これならいけると思ったパルフェはとっておきを出す事にした。
「見事刺身を乗り越えた二人には『海の悪魔』に挑戦する権利があるよ!」
「『海の悪魔』ですって?」
「なんとも禍々しい名ですが、それも食べる物なので?」
 怪訝な表情を浮かべる二人に対して、パルフェは得意げに指を立てる。
「ああ! 悪魔と言うだけあって、見た目がもうえげつないんだけど、味はとっても美味しいんだ。絵に描くとこんな感じなんだけど……」
「えぇ……」
「うぅむ、これは……」
 異様なほど大きい頭に胴体はなく、頭から直接生えたように見える何本もの触手、赤みがかった体を持つそれはもはや魔物と形容してもいい。要するにタコであるが、ただの絵であってもリズベットとライネルをドン引きさせるには充分であった。

 なおチェルシー嬢がここにいたとしたら、やっぱりというか、魂の叫びが聞けたであろう。

「思ったより異世界満喫してるなタチバナリツカァァァァァ!! 私もタコ焼き食いてぇ―――!!」と。


 新都を出て最初こそ会話に花を咲かせていたリズベットであったが、徐々にそのペースも落ちて行き、最終的には夢の住人となっていた。
 旅慣れしていない彼女にとって、今回の旅は過酷であったのだ。リズベット自身が決めたとはいえ、グレイシア国へ行くのは本来なかった予定である。王都からリッチモンド領までの距離もなかなかのものだし、そこからさらなる強行スケジュールは一般的な女性にはきつい。
 持ち前の好奇心と使命感で足りない体力分を補っていたが、終わりが見えてきた今、緊張の糸が切れたという訳である。
「いつも何かしら動いているからタフなように思えるけど、流石に旅慣れはしてないんだねぇ」
「護衛の私としては、こうして無防備な姿を見せてもらえるのは信頼してもらっているようで嬉しいですがな」
「ふむ、そういう考え方もあるか」
「悪くないでしょう?」
 ライネルの問いにパルフェは頷く。
「確かに悪くないねぇ」
 パルフェはリズベットの頑張りを知っている。何せ彼女はリズベットが追放された後もずっと付き合い続けていたのだから。リズベットが追放されたと聞いた時、パルフェはすぐに辺境まで助けに行った。もしも酷い扱いを受けていたら、リズベットを救出し、グレイシア国へ連れ帰るつもりで。パルフェはそれ程の覚悟を持っていた。
 だがパルフェが実際に見たのは、辺境の地でのびのびとするリズベットの姿であった。軟禁されていてもリズベットは相変わらずの行動力の化身で、今の自分に何が出来るかを考えていた。パルフェはリズベットのどんな時でもへこたれない姿に感嘆したものだ。
 リズベットは軟禁の身でこそあったが、意外な事に面会は自由であった。監視こそつくが生活は十分に保障されており、出来得る限り大切に扱われているのが伺えた。国境を守る辺境伯も人格者であった事も大きいだろう。
 リズベットと何度か会っているうちに何時しかパルフェは顔パスとなったわけだが、その理由として、パルフェ自身が辺境伯から気に入られてしまったのが挙げられる。
 何せ辺境は暇なのだ。辺境というからには国境が近いわけで、何を呑気なと思うかもしれないが、リズベットが軟禁されていた辺境は東のミリシアン国との国境沿いに位置してした。
 フローディア国とミリシアン国の間では国交はなく、基本的に相互不干渉になっている。そのため人の出入りは基本的になく、密入国阻止の門はただの飾りだ。そのためミリシアンとの国境の警備に勤める者達の仕事は、ただミリシアン側に広がる森を眺めるだけとなっていた。
 何も無い事は分かっているけど、何時か来るかもしれないいざと言う時のために手は抜けない。ミリシアン国側の国境警備は重要には違いないが退屈でしょうがない仕事であった。パルフェはそんな彼らに珍しい食べ物や、娯楽品など、息抜きになる商品の数々を提供したわけである。
 それが兵のモチベーション維持に苦労していた辺境伯に知られ、感激した彼から感謝状を贈られる事態にまで発展したのであった。結果、パルフェとしてはリズベットを助けに行ったはずなのに、何か商売先が増えて、かえって助けられたという妙な事に。
 意図せずさらなる恩恵を受けたパルフェはその後、恩返しとばかりにリズベットのしたい事を手助けし続けた。しかし現在それもさらなるビジネスチャンスになりそうな気配がある。パルフェとしてはもうリズベットに足を向けて寝られないくらいであった。
 パルフェはリズベットに大恩がある。そんなリズベットに信頼されているともあれば嬉しくもなろう。パルフェは帰りも無事に送り届けなければと気合を入れる。
「さて、帰りも天気に恵まれるといいけど」
「これだけ晴天なのにですか?」
「ああ、グレイシア国の天気は結構気まぐれだからね。今は晴れでもってのはよくあるよ」
「となると日頃の行いがものを言いますな」
 試すようなライネルに対し、徳はあると自負しているパルフェは不敵に笑う。
「だったら私はばっちりだよ。何時だって適正価格を心がけているからね」
 目先の利益よりも後のための利益、商売の世界で長く続けるためには焦りすぎてはいけない。価格は高すぎず安すぎず。商品を売る自分も嬉しい、仕入れ先も嬉しい、お客様も嬉しい、3つ揃って完璧! これぞパルフェのモットーである。
「敵は作らない事に越した事はない!」
「ふむ、道理ですなぁ」
 グレイシア国を満喫したライネルだからこそ納得出来た。そしてライネルは気づかない。リズベットがいなくてもパルフェと談笑出来ている事に。彼にとって、グレイシア人との会話はもはや当たり前の事なのだから。
 パルフェの気持ちが良い人柄に強い興味を持ったライネルは彼女に尋ねた。
「パルフェ殿の理念はとても立派ですが、どういった経緯でそう思うようになったのか聞いても?」
「私の考えかぁ……それはほとんどばあちゃんの教えだね」
「ほう、パルフェ殿の祖母ですか」
 ライネルと同年代か、それともさらに上か、激動の時代だったのは想像に難くない。何かを選択出来るようになったのは最近の事である。元々の生まれもあるが、ライネルが子供だった頃は何が美味しいとかではなく、どれほど腹が膨れるかが重要視されていた。
「おっちゃんはさぁ。運命は自分で切り開くと思っている? それとも運だと思っている?」
「それは難しい質問ですな」
 ライネルとしてはここで実力と言いたい所であったが、それだけでは今の自分は存在しない。
「己を高めようと努力はしてきたし、それ故の元騎士団長であると自負しておりますが、騎士になる前はただ腕っぷしがあるだけの若者でしかなかった。伯爵様に見つけてもらえなければ、今の自分はなかったのも確かですな」
「まさにそれ、だね」
 パルフェはびしっと指をさす。
「ばあちゃんはよく言っていたよ。人生で何よりも重要なのは人の縁なんだって」
「人の縁、ですか」
「残念ながら私達は生まれた時点で八割方人生は決まっている。人種、性別、容姿、体格はもちろんの事、平民の子に生まれたら平民だし、貴族の子に生まれたら貴族だ。いくら努力したって私達は生まれる先を選べないでしょ? つまりは運が八割って事」
 身も蓋もない話であるが、ライネルはそれを否定は出来なかった。
「でも人との縁が決められた運命を変えてくれる。良い人と出会えればその人たちが自分を高めてくれるし、新たな道が見えてくる事もある。逆に悪い人に出会ってしまえば、どんどん下へ下へと引きずられる。だからばあちゃんは言っていた。良い人に出会いなさい。もし出会えたのであれば、死ぬ気でその縁を手放さないようにしなさいって」
「その人はつまり」
「ああ、私にとって姉さんになるね」
「パルフェ殿は何故わざわざフローディア国で商売する事を選んだので?」
「確かにグレイシア人がフローディア国に行っても、商売するのは厳しいと思っていたさ。でもフローディア国は売り先としてすごく魅力的だったんだ」
「ほう、魅力的ですか」
「商売で何より重要なのは需要と供給だからね。グレイシア国では普通であっても、フローディア国では珍しい物になる。それに出会いのチャンスとしてはフローディア国の方が期待値が高い。何せ会う人すべてが初めての人になるわけだしね。リスクも大きいけどチャンスもまた無限大だったんだよ」
「言っている事は分かりますが、よく決断出来ましたな」
「どうせ失敗しても命奪われるわけじゃないしね。悩んでる暇があったら行っちゃおうと。商品としては良いものを選別して自信があったし、後は先入観なしに見てくれればって。その結果が今だね。道が開ける時って一瞬で本当に劇的なんだ。あの時の姉さんには後光がさしてたよ」
 ライネルは納得する。彼もハイブルグ公爵に見いだされた時にそう思ったから。
「人は個で人なんじゃない。見てくれる人がいてこそ人なんだ。だったら多くの人と出会う事は無駄じゃなくて、己に対する最高の投資だと私は思うね」
 パルフェの持論を聞いてライネルはふと思い至った。リズベットもまた彼女と一緒なのだろうと。リズベットの現場主義は言い換えれば、出会うためと考えてもいいのではないだろうか。リズベットは多くの場所に顔を出していたため、皆彼女の利発さは知っており、不正を好まない人柄も知られていた。
 だからこそユーフィリア暗殺未遂事件はシュタイン伯爵の独断であって、無関係であろうと判断されたし、それを疑う者はほとんどいなかった。そう、リズベットは人との縁によって己の身を助けたのだ。いくら彼女が優秀であっても、それが周りに知られていなければ、このような結果にはなっていない。
 もはや納得しかないライネルはパルフェに言った。
「パルフェ殿の祖母は素晴らしい人物だったのですな」
「もちろん! 自慢のばあちゃんだもの」
 一切の曇りなきパルフェの笑顔は眩しかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!

クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。 ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。 しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。 ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。 そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。 国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。 樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。

そんなに義妹が大事なら、番は解消してあげます。さようなら。

雪葉
恋愛
貧しい子爵家の娘であるセルマは、ある日突然王国の使者から「あなたは我が国の竜人の番だ」と宣言され、竜人族の住まう国、ズーグへと連れて行かれることになる。しかし、連れて行かれた先でのセルマの扱いは散々なものだった。番であるはずのウィルフレッドには既に好きな相手がおり、終始冷たい態度を取られるのだ。セルマはそれでも頑張って彼と仲良くなろうとしたが、何もかもを否定されて終わってしまった。 その内、セルマはウィルフレッドとの番解消を考えるようになる。しかし、「竜人族からしか番関係は解消できない」と言われ、また絶望の中に叩き落とされそうになったその時──、セルマの前に、一人の手が差し伸べられるのであった。 *相手を大事にしなければ、そりゃあ見捨てられてもしょうがないよね。っていう当然の話。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

☆ほしい
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

追放された聖女は旅をする

織人文
ファンタジー
聖女によって国の豊かさが守られる西方世界。 その中の一国、エーリカの聖女が「役立たず」として追放された。 国を出た聖女は、出身地である東方世界の国イーリスに向けて旅を始める――。

主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから

渡里あずま
ファンタジー
安藤舞は、専業主婦である。ちなみに現在、三十二歳だ。 朝、夫と幼稚園児の子供を見送り、さて掃除と洗濯をしようとしたところで――気づけば、石造りの知らない部屋で座り込んでいた。そして映画で見たような古めかしいコスプレをした、外国人集団に囲まれていた。 「我々が召喚したかったのは、そちらの世界での『学者』や『医者』だ。それを『主婦』だと!? そんなごく潰しが、聖女になどなれるものか! 役立たずなどいらんっ」 「いや、理不尽!」 初対面の見た目だけ美青年に暴言を吐かれ、舞はそのまま無一文で追い出されてしまう。腹を立てながらも、舞は何としても元の世界に戻ることを決意する。 「主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから」 ※※※ 専業主婦の舞が、主婦力・大人力を駆使して元の世界に戻ろうとする話です(ざまぁあり) ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

処理中です...