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守りの盾が凶器になる
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「良い機会だから、お前の親父の話をしてやろうか」
「別に。興味ない」
「何か勘違いしてねえか。親父ってのは所長じゃねえぞ。お前の、血のつながった実の親父の話だ」
ツルギは一瞬、コンピューターパッドを操作する手を止めた。しかし、無言で操作を続けることを選択した。
自分のセリフを無視されたにも関わらず、ミサカは一方的に話し始めた。
「お前の親父はな、サクといって、俺の部下だった。顔は、まあ、今のお前とよく似ていたよ。あいつは自分に嘘が付けないタイプでな、思い込んだら一直線ってやつだった。だから、早くに死んじまったんだな」
ミサカは、ツルギの反応を見ることなく話を続けた。
「よせばいいのによ、あいつ、ヒカクのじいさんの妾に手を出したんだ。それが、ヒナゲシさまの実の姉さん。あいつは本気だった。ヒナゲシさまの姉さんの、ユウゲさまも本気だったんだ。それで、お前を身ごもった」
「……つまり、俺は、ユルギとまったく血のつながりがないわけじゃなかったのか」
ミサカの話に、初めてツルギは反応した。ミサカは楽しげに話を続けた。
「そうだよ。いとこ同士だ。
ここからは、バリアー研究チームや、ごく一部の研究員しか知らない話だ。このバリアー、黎明ナズナが創ったものだってことは、ツルギは知っているな?」
「ああ」
「ユウゲさまとヒナゲシさまは、黎明ナズナの娘だ」
ツルギの手が、完全に止まった。
「ヒカクはもともと、ユウゲさまとヒナゲシさまに期待していた。バリアーシステムを完璧にコントロールすることを。
ところが、お二人には、イメージを具現化する力がなかった。
そこで、ヒカクは二人に子どもを産ませて、その子どもに黎明ナズナと同じ力が宿ることを期待した。もちろん、誰の子どもでもいいってわけじゃない。ヒカクの血も同時に受け継ぐ子どもがほしかった。だから、ユウゲさまを妾にしたんだ。
それなのに、俺の部下が手を出しちまった。しかも子どもができた。
せめて、その子どもが女の子だったら良かった。黎明ナズナの力は、女性にだけ受け継がれるものだったから」
ツルギは何も言えないまま、呆然とミサカを見つめた。ミサカは、ただただ面白そうに話を続けている。
「ユウゲさまが産んだのは男の子。つまり、お前だよ。ツルギ。ヒカクがお前の存在を知ったとき、それはもう激怒って言葉じゃ生ぬるいくらいに切れちまった。
それで、ユウゲさまを殺しちまったんだ。俺の部下もろともな。
お前も殺すつもりだったらしいが、万が一の切り札として取っておくことにした」
「……何だって?」
「ヒナゲシさまは女の子を生んだ。その子がもしもイメージを具現化する力を持たなかったら、お前と交配させて、女の子を産ませようと考えたんだ。
ツルギ、お前は昔から、いずれユルギさまと結婚するように命令されていただろう。それは、お前を研究所の後継にするためじゃない。黎明ナズナの血を絶やさないためだったんだよ」
ツルギはその場にへたりこみそうになるのを必死でこらえた。なんとか立っている、それだけで精一杯だった。クツクツと笑うミサカに何も言えず、コンピュータを触ることもできない。
一体何をしにここへ来たんだろう。今、俺は一体何をやっているんだ?
「ツルギ!」
地下二階の冷暗室から戻ってきたヒノが、ツルギの名前を呼んだ。
「これで、ジ・エンドだ」
ミサカはキーボードのエンターキーを押した。
次の瞬間、バリアーの源である繭が強い光を放った。その場にいる者全員が、眩しさに耐え切れずまぶたを閉じた。次に目を開けたときには、繭はきれいに消え去っていた。
繭が消えたとわかったと同時に、バリアー管理室内のランプが赤く点灯し、サイレンがけたたましく鳴り始めた。
[バリアーシステムダウン。バリアーシステムダウン。緊急防御システム発動。研究所員は速やかにトレーニングルーム地下室に向かうこと。繰り返す。バリアーシステムダウン。バリアーシステムダウン……]
ヒノは、赤いランプを見つめて言った。
「バリアーが、消えた……?」
それから、ハッとしたようにツルギを見た。ツルギの表情は、赤いランプによってよく見えなくなっている。だが、バリアーが解除されたにも関わらず、微動だにしない様子を見て、ヒノはツルギの異変に気がついた。
ヒノはツルギに駆け寄り、ツルギの両肩に手を置いた。
「ツルギ? どうしたの。バリアーが消えたんだよ。ツルギ……?」
ミサカはバリアー研究チームを引き連れ、バリアー管理室の出口に向かった。
「物語の終わりは、新しい物語の始まりってな。それを生きることができるかどうか、やってみようじゃねえか。ツルギ」
それだけ言い残すと、ミサカたちバリアー研究チームはバリアー管理室から出て行った。
ミサカたちがいなくなっても動こうとしないツルギに対し、ヒノは不安を覚えた。
「どうしたの、ツルギ。私がいない間に、何かあったの?」
「……バカみたいだ」
「え?」
「俺は、何であの人からつらく当たられなきゃならないんだろうって思ったことがあった。それは、養子だからだって、血のつながりがないからだって……それだけじゃなかったんだ。そりゃそうだ、憎くもなるよな」
「ツルギ、意味がわからないよ。何を言っているの?」
「いや、いいんだ。俺は、最初からあの男の計画を潰していた。今も、これからも、あの男の思惑などすべて壊してやる」
ツルギの目の奥に、青い炎が揺らめいたようだった。ヒノは、ツルギの冷たい目つきにゾッとした。一体何があったのか。ヒノが「ツルギ」と声をかけても、それはツルギの耳には入らないようだった。
ツルギはようやく動いた。ヒノに見向きもしないで、バリアー管理室を出て行く。ヒノは、相変わらず点っている真っ赤なランプを一瞥したあと、ツルギを追いかけて行った。
「別に。興味ない」
「何か勘違いしてねえか。親父ってのは所長じゃねえぞ。お前の、血のつながった実の親父の話だ」
ツルギは一瞬、コンピューターパッドを操作する手を止めた。しかし、無言で操作を続けることを選択した。
自分のセリフを無視されたにも関わらず、ミサカは一方的に話し始めた。
「お前の親父はな、サクといって、俺の部下だった。顔は、まあ、今のお前とよく似ていたよ。あいつは自分に嘘が付けないタイプでな、思い込んだら一直線ってやつだった。だから、早くに死んじまったんだな」
ミサカは、ツルギの反応を見ることなく話を続けた。
「よせばいいのによ、あいつ、ヒカクのじいさんの妾に手を出したんだ。それが、ヒナゲシさまの実の姉さん。あいつは本気だった。ヒナゲシさまの姉さんの、ユウゲさまも本気だったんだ。それで、お前を身ごもった」
「……つまり、俺は、ユルギとまったく血のつながりがないわけじゃなかったのか」
ミサカの話に、初めてツルギは反応した。ミサカは楽しげに話を続けた。
「そうだよ。いとこ同士だ。
ここからは、バリアー研究チームや、ごく一部の研究員しか知らない話だ。このバリアー、黎明ナズナが創ったものだってことは、ツルギは知っているな?」
「ああ」
「ユウゲさまとヒナゲシさまは、黎明ナズナの娘だ」
ツルギの手が、完全に止まった。
「ヒカクはもともと、ユウゲさまとヒナゲシさまに期待していた。バリアーシステムを完璧にコントロールすることを。
ところが、お二人には、イメージを具現化する力がなかった。
そこで、ヒカクは二人に子どもを産ませて、その子どもに黎明ナズナと同じ力が宿ることを期待した。もちろん、誰の子どもでもいいってわけじゃない。ヒカクの血も同時に受け継ぐ子どもがほしかった。だから、ユウゲさまを妾にしたんだ。
それなのに、俺の部下が手を出しちまった。しかも子どもができた。
せめて、その子どもが女の子だったら良かった。黎明ナズナの力は、女性にだけ受け継がれるものだったから」
ツルギは何も言えないまま、呆然とミサカを見つめた。ミサカは、ただただ面白そうに話を続けている。
「ユウゲさまが産んだのは男の子。つまり、お前だよ。ツルギ。ヒカクがお前の存在を知ったとき、それはもう激怒って言葉じゃ生ぬるいくらいに切れちまった。
それで、ユウゲさまを殺しちまったんだ。俺の部下もろともな。
お前も殺すつもりだったらしいが、万が一の切り札として取っておくことにした」
「……何だって?」
「ヒナゲシさまは女の子を生んだ。その子がもしもイメージを具現化する力を持たなかったら、お前と交配させて、女の子を産ませようと考えたんだ。
ツルギ、お前は昔から、いずれユルギさまと結婚するように命令されていただろう。それは、お前を研究所の後継にするためじゃない。黎明ナズナの血を絶やさないためだったんだよ」
ツルギはその場にへたりこみそうになるのを必死でこらえた。なんとか立っている、それだけで精一杯だった。クツクツと笑うミサカに何も言えず、コンピュータを触ることもできない。
一体何をしにここへ来たんだろう。今、俺は一体何をやっているんだ?
「ツルギ!」
地下二階の冷暗室から戻ってきたヒノが、ツルギの名前を呼んだ。
「これで、ジ・エンドだ」
ミサカはキーボードのエンターキーを押した。
次の瞬間、バリアーの源である繭が強い光を放った。その場にいる者全員が、眩しさに耐え切れずまぶたを閉じた。次に目を開けたときには、繭はきれいに消え去っていた。
繭が消えたとわかったと同時に、バリアー管理室内のランプが赤く点灯し、サイレンがけたたましく鳴り始めた。
[バリアーシステムダウン。バリアーシステムダウン。緊急防御システム発動。研究所員は速やかにトレーニングルーム地下室に向かうこと。繰り返す。バリアーシステムダウン。バリアーシステムダウン……]
ヒノは、赤いランプを見つめて言った。
「バリアーが、消えた……?」
それから、ハッとしたようにツルギを見た。ツルギの表情は、赤いランプによってよく見えなくなっている。だが、バリアーが解除されたにも関わらず、微動だにしない様子を見て、ヒノはツルギの異変に気がついた。
ヒノはツルギに駆け寄り、ツルギの両肩に手を置いた。
「ツルギ? どうしたの。バリアーが消えたんだよ。ツルギ……?」
ミサカはバリアー研究チームを引き連れ、バリアー管理室の出口に向かった。
「物語の終わりは、新しい物語の始まりってな。それを生きることができるかどうか、やってみようじゃねえか。ツルギ」
それだけ言い残すと、ミサカたちバリアー研究チームはバリアー管理室から出て行った。
ミサカたちがいなくなっても動こうとしないツルギに対し、ヒノは不安を覚えた。
「どうしたの、ツルギ。私がいない間に、何かあったの?」
「……バカみたいだ」
「え?」
「俺は、何であの人からつらく当たられなきゃならないんだろうって思ったことがあった。それは、養子だからだって、血のつながりがないからだって……それだけじゃなかったんだ。そりゃそうだ、憎くもなるよな」
「ツルギ、意味がわからないよ。何を言っているの?」
「いや、いいんだ。俺は、最初からあの男の計画を潰していた。今も、これからも、あの男の思惑などすべて壊してやる」
ツルギの目の奥に、青い炎が揺らめいたようだった。ヒノは、ツルギの冷たい目つきにゾッとした。一体何があったのか。ヒノが「ツルギ」と声をかけても、それはツルギの耳には入らないようだった。
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