社畜探索者〜紅蓮の王と異界迷宮と配信者〜

代永 並木

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2章天鬼鶏

社畜 パッタリ出会う

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取引所に向かう
ダンジョンには潜らないので仮面は持っていかない
仮面を付けたらかなり目立つ
と言うよりもダンジョンでも無ければ不審者で警察のお世話になりかねない
取引所に入り目的の2階に階段で登る

「確か装備屋の隣だよな」

装備屋の横を見ると様々な種類の道具が並んでいる
軽く見て探す

「色々あるけど何か良い物あるかな。包帯、止血剤……この辺は重要、傷は負いやすいから悪化しないように」

必要そうな道具を手に取っていく
戦闘に関する準備はどれだけしても足りない事はあっても過剰にはならない
最も持ち運び出来る量には限界がある為大量に買い込んでも全てはダンジョンに持っていけない
ただ持っていかない物は家にでも保管しておけば良い

「色々あったな……あっ祈りの秘薬……何処だ?」

忘れかけていたがなんとか思い出して探すが見つからない
名札を見て確認する
祈りの秘薬と言うゲームのアイテムのような名前は一目で分かりやすい筈なのだが見つからない

「売ってるって聞いたんだけどな。売り切れたのか。それともこの取引所には無いのかな」

何周かして探しても見つからないので店員に聞く

「すみません、祈りの秘薬ってありますか?」
「祈りの秘薬は……在庫無いですね」
「そうですか。分かりました。後これ買います」

持っていた物を机に置いてレジに通す
すると大きなダンボールを持った男性が来る

「仕事中済まない。頼まれていた物だがこれはどこに置けばいい」
「あっ、こちらの机にお願いします」

店員は机に手を置く
(この声)
聞き覚えのある声
机にダンボールを置いた後、男性の顔が見える
中性的な長髪の男性

「あっ」

その顔を見て思い出す
薬を生み出す異能者である白衣の少女と一緒に居た男性

「どうかしたか?」
「あっ、いや……その」

あの時は仮面をつけていた
今は仮面をつけていない、男性からすれば誰か分からない
その事に気づき言葉が詰まる
男性が反応した時点で何かしら返さないと行けないが慌ててしまい返答に迷う

「その声、もしや」

スマホを取り出して素早く文字を打ち画面を見せる
『探索者のニワトリか?』
周りに客はいないが店員が居る
仮面を付けていない今素性はバレたくない
その事を配慮してか店員にわからないように文字で聞いてくる
無言で頷く

「そうか、奇遇だな」
「あの時は本当にありがとうございました」
「私は運転しただけだ」
「あそこで間に合ってなければどうなっていたか分かりませんから……」
「偶然迎える距離に居ただけだ。そう言えば祈りの秘薬の話をしていたな」

店員との会話の一部が聞こえていた
最もどんな会話であったかは分からずあくまで祈りの秘薬と言う単語が聞こえただけ

「買いに来たんですが売り切れていて」
「あれは人気商品だからな。これも何かの縁だ。奴の研究所に案内しよう」
「研究所?」
「奴は彼処で薬を作っている。研究所に行けば薬は大量にある」
「良いんですか?」
「問題無い」
「でしたらお言葉に甘えて」

買い終えて駐車場に向かう
車はあの時と同じ車
男性の車に乗り研究所に向かう

「2人のお名前はなんと?」
「名乗っていなかったな。私は浮塚葉一で探索者をしている。あいつの名前は月神叶だ」
「僕は井坂蓮二です」
「天鬼鶏だったか探索者のグループを作ったようだな。探索者の活動に本腰を入れるのか?」
「は、はい、そうですね。仕事の一環として探索配信をする事になりまして」
「探索を仕事の一環か。大変だな」
「えぇまぁ、大変ではありますね。ただ自由時間は増えたので気は楽です」

あくまで蓮二は仕事の一環でやる事になっている
基本は自由だが仕事の為今はなくともノルマが追加される可能性はある
あの会社ならやりかねない
有名配信者の二人との契約な上、一鬼の父源次郎が居るから酷いノルマは無いだろうが何せあの会社だ
信用は出来ない

「そうか、探索者は危険だ。注意しろよ」

葉一も探索者、歴が長く探索者としての経験が多い
数多くのダンジョンに潜っていた事もあり危険性をよく知っている
何人もの探索者が死んだり復帰不可の重傷を負ったのを見てきている

「はい、油断はしません」

車で三十分くらいで研究所に着く
狭い駐車場に止める
森の中にある木造の小屋だった
研究所という雰囲気も無い普通の小屋
葉一が扉を開いて中に入る

「失礼します」

扉を開けて直ぐに大きな木製の机が目に付く
これまた木製の木が6つ、3つずつ置いてある
それ以外には棚に本が置いてあるくらいで質素な印象がある
奥に続く扉がある

「この先だ」

扉を開いて進む
狭い廊下があり左右に4つ、廊下の先に1つ扉がある
入口のところにある部屋を除けば小屋と言うよりマンションにある間取りに思える
扉を叩く

「葉一か」
「客も居るぞ」
「客?」

扉が開く
中から白衣の少女、月神叶が出てくる
あの時と同じ服装をしている
目の下に酷い隈がある

「君は誰だ」
「僕は井坂蓮二です。えっと鶏という名前で配信に協力してます」
「あぁ、鶏君か」

扉が開いた事で部屋の中が見える
ふと視線に入ったのは部屋の床全てを埋め尽くす程の紙
紙には何やら文字や何かの絵が書かれている
薄暗く遠目ではっきりとは見えない

「それで何用だ?」
「取引所の祈りの秘薬が売り切れていてな」
「数は増やしたんだが……分かった。時間がかかるが用意しよう。あちらの部屋で座って待っていてくれ」

別の部屋に入っていく
ちらっと中が見える
様々な色の液体が入った小瓶が大量に並んでいた
(あれ全部薬?)
蓮二と葉一は大きな部屋に戻り椅子に座って待つ

「そう言えば他にも薬があるって言ってましたが他の薬は売ってないんですか?」

一鬼を治療した自己治癒能力を高める薬も欲しがる人は多いだろう
(何か副作用があるのかな。ただあの薬があればすぐ対応出来るから欲しいけど……)
副作用がどう言う物かによるが副作用を許容してでも使えるなら使いたい程優秀な薬
腹を貫かれて出来たあの傷をほぼ完璧に治せるレベルの薬

「奴の薬はほぼ全てに副作用がある。祈りの秘薬は唯一他人が使っても支障が少ないから売っている」
「副作用ですか」
「余り使い勝手の良い異能では無いからな」

葉一はお茶を出す

「2人は兄妹ですか?」
「いや、違う。私はただ奴の支援しているだけだ」
「支援ですか」
「優秀な異能者は念の為に保護しておきたくてな。主に金銭面の支援をしている」
「成程」

金銭面の支援なら有って困る事は無い
暫く待つ
他愛の無い雑談をして時間を潰す
奥から扉の開く音が聞こえ足音がこちらに近付いてくる
扉を開いて叶が出てくる
手には小瓶を持っている

「これが祈りの秘薬だ。丁度秘薬は切らしていてな。急いで調合した」
「今日送ったのが最後だったか」
「他の薬の調合に集中して秘薬を作るのを忘れていた」

叶から薬を受け取る

「ありがとうございます。あっそれと獅子神さんを助けて頂きありがとうございました。獅子神さんの父親も感謝していました」
「出来ることをしただけだ。気にしなくていい」

薬分の金を支払う
小瓶に緑色の液体が入っている、濁っていて良い色では無い
すぐに袋に入れる

「その薬は飲ませるか傷口に掛ければいい。効果は一時的に傷を悪化させないと言う物だが副作用として一時的な身体能力の低下がある。動けはするが走るや戦闘は出来ないくらいに考えてくれればいい」
「分かりました」
「進捗はどうだ」
「癒しの薬が何とか副作用無しで調合出来た。最も効果が薄い。数も祈りの秘薬程は作れない」
「癒しの秘薬の方は?」
「あれは打つ際の痛みをもう少し抑えられるかどうかと言った所だな。副作用を消せば効果が薄まる」

(打つ際の……癒しの秘薬が獅子神さんに使った薬かな)

「そうか」
「それじゃ僕は帰ります」

部外者が聞いていい話では無いと思い帰ろうとする

「送るぞ」
「道は覚えているので大丈夫です」

葉一の提案を断り外に出て家に向かう
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