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2章天鬼鶏

社畜 強い魔物

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数分後
叶が戻ってくる
先程召喚した剣は手元に無い
あの剣は異能関連の物で任意に出し入れが出来るのだろう

「終わった」
「では行こうか」
「あの数全部倒したのか」

階段を降りると大量の魔石が転がっている
素材も落ちているようだ
(これが毒)

「多いな」
「数居たからな」
「取り敢えず拾いましょう」

全員で魔石と素材を回収して纏める
3級の魔物の魔石は一個一個がそこそこのサイズ
それが30以上ある
魔石自体は大きさの割に軽量だが数が多すぎる

「数あると重いなぁ」
「三十以上だからねぇ、そもそも3級の魔石はそこそこのサイズだし」
「魔石をこの量持つことは滅多に無いです」
「葉一持て」
「あぁ」

葉一が受け取る

「ここから先は私達も知らない」
「では慎重に進むとするか」
「援護します」

異能を発動させて炎を出す
前衛は二人居る
叶は戦闘する気ないので後衛で攻撃出来るのは蓮二のみ

「私はマッピングしますね」

天音は情報を書き記していた紙を取り出す
調査結果は動画や地図があると報酬が上がる
元々高額だが更に詳細な情報の提供になる為だ
進んでいく
小さな音がする
蓮二はそれに気づく

「少し先の天井から音がします……それも複数」

聞き覚えのある音
蜘蛛型の魔物が動いている時の音だ

「蜘蛛型か」
「恐らく」
「分かった。私が先行する」
「同行するよ。複数らしいからね」

一鬼と葉一が武器を構えて先行する
蓮二は天音と叶の二人を守るように立つ

「頼んだぞ鶏君」
「任せてください……ただ蜘蛛型相手は厳しいです」
「厳しいのか」
「はい、素早いですし重い液体は炎で相殺どころか押されますし」
「天井に居たあれか、ならあれの対処は私がする」
「良いんですか?」
「出来れば戦いたくは無いが怪我人が出るのは頂けない」

(私が居る前で怪我はさせたくない。薬があるとは言え副作用がある)

「出来る限り頑張ります」
「まぁ基本はあの二人に任せれば問題は無かろう」
「ですね」
「二人は強いですしね」
「葉一が負ける程の敵は早々出てこない。ましてや中ボスのエリアでも無いこの階層では」
「鶏君! 炎撃って!」
「はい?」
「良いから!」

一鬼と葉一が走って戻ってくる
かなり慌ててる様子で一鬼は蓮二に呼びかける
何が起きたのか分からないが取り敢えず一鬼の言う通りに炎を二人の後ろに放つ
放たれた炎は二人の後ろに居る存在に命中する

「葉一、何があった」
「どうやらこのダンジョンは今までの常識は通用しないようだ」
「なんだと?」
「あの魔物は一体……」

蓮二は炎が照らした魔物の姿を確認した
狼型でも蜘蛛型でも無い魔物
それが近付いてきている

「私達は蜘蛛型を倒した後次の階層の階段を見つけた」

一鬼が説明を始める

「先に次の階層に行くか考えていたら魔物が階段を登ってきた」
「魔物が?」
「追いかけてきたではなく?」
「あぁ、私達は次の階層には進んでいなかった」

探索者を魔物が追って階層を移動するケースはある
大群の狼型の魔物がダンジョンの入口の階段まで追いかけてきたあれだ
だが追うケース以外で階層を移動する魔物は今までに存在していない
再生する触手の魔物の場合は階層移動したかは不明
あの魔物と同様に特異性を持つ魔物かはたまたこのダンジョンの性質か

「一応二人で戦ってみたがかなり頑丈で刃が通らなかった」
「倒します? 撤退もありだと思いますが」

天音は紙をしまって武器を取り出す
今までの常識が通じない得体の知れない魔物
二人の攻撃が通じないと言うのならかなりの強敵と看做した方がいいだろう

「倒す。未知の魔物こそ調査が必要だ。三人は撤退しても構わない」
「いや、やる。鶏君前衛出れる?」
「出来るけど前衛三人?」

この階層は中ボスのエリアのように広くない
前衛三人で戦うには狭過ぎる
ましてや蓮二の近接のスタイルは剣と炎で作った腕や刀
剣はともかく炎の腕や刀は狭い場所で振り回せる物では無い

「前衛は二人の方が良い。ニワトリは後方で攻撃支援を」
「分かりました」
「剣の方は使いこなせてない……私は風と鎖で援護します」
「叶はどうする」
「自分の身は自分で守るから気にせず戦え」

このエリアでは戦っている間に倒した魔物が復活する可能性がある
そうなれば挟み撃ちになり対応するにしても守りながらは難しい

「分かった」

叶は剣を取り出す
(散布する毒は使えない、そもそも通じるか分からない)
散布するタイプの毒は周囲に人が居る状況では巻き込んでしまう恐れがある
かと言って前衛として参加出来る程の実力は無い為自衛に集中する

「来るぞ」

炎にその姿が照らされる
人型に近い姿だが完全に人の姿ではなく人型のロボットに近い姿をしている
メタリックな見た目

「見た目から硬そうですね」
「炎当たったんだけどな」
「あれでも無傷か」

炎が命中したのは確認した
だが目の前の敵に傷は一切見えない
一鬼と葉一が駆け出す
葉一が真正面から斬りかかる、それを腕で受け止める
ガキッン
金属同士がぶつかるような甲高い音を立てる
背後から槍による突きが繰り出される

「マジか」

振り抜きもせずに空いてる手で槍を掴む
(つっよ)
槍を引き戻そうと引っ張るが槍はビクともしない
何度も斬りかかるが全て腕で止められる
横側に移動して剣を叩き込む
それと同時に炎の玉が魔物に叩き込まれる
複数の炎の玉が命中する
間髪入れずに範囲を狭めた風の弾丸が頭を撃つ
握る力が緩みその隙を逃さず背中に蹴りを入れて槍を引き抜く
すぐに槍を振るい葉一の剣を防いでいる腕に叩きつける

「硬っ」
「無傷だな」
「これは時間かかりそうだ」

今の攻撃で傷1つ付いていない
(炎が弱かったか?)
炎を溜め始める、威力ならこれが現状最大
避ける様子がない今がチャンス
防御に回せる分と多少攻撃出来る分の炎を残して残りを注ぎ込む

「叩き込む」
「それでは怪しまれないように私が攻撃の手を増やします」

風を操り複数の風の弾丸を生み出す
範囲を狭めてはいるが数を増やした分先程の一撃より威力が分散している
(一点突破でも足りなかったなら手数で攻める。撃ち続けて威力が低いと思わせる)
(もし勝てない場合、あれを使うとしよう)
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