社畜探索者〜紅蓮の王と異界迷宮と配信者〜

代永 並木

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2章天鬼鶏

社畜 最悪な切り札

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「早く薬を使わないと」

傷が癒え切っていない蓮二が立とうとする
叶が肩に手を置く

「お前は攻撃し続けろ。二人には当てるなよ」
「ですが……」
「良いから打て、薬は動ける天音の役目だ」

天音はまだ攻撃を受けていない
傷を抱える蓮二よりも間違いなく動ける
それなら天音に薬を任せる方が良い

「分かりました」

叶に言われた通り攻撃をする
攻撃し続けなければ二人が殺される恐れが有る
蓮二の炎なら魔物は警戒している
魔物は避けたり手で防いで凌ぐ
(威力より数を)
炎の玉を撃ち続ける
二人に当たらないように注意しながら
接近されないように防御用の炎は残す

「何か策が?」

近くに来た天音が聞く
この状況から打開する術があるのかも知れないと僅かな希望を抱いて聞く

「私が出る。勝てるかなど知らんがな」
「えっ?」

想定外の発言に驚く
戦う気がなかった叶が戦うと言った事よりも三人が負けた相手と戦うと言っている事に
天音は間違いなく自分よりも強い三人が負傷した今、戦うという選択は出来ない
勝てないと断言出来るから

「天音、隙を見て二人に薬を使え。傷口に掛ければいい」

2つ目の薬を押し付けるように天音に渡す
死んでいない今ならこの薬があれば救える
攻撃を受けた場所に掛ければいい為接近出来れば可能

「出るって……」
「あの魔物と戦う」

叶の毒は強力だがこの魔物に通じるかは分からない
もし通じなければ前衛として戦うことになる
今前衛が出来るのは居ない
天音も傷を負ってる蓮二も後衛援護のみ
援護は出来てもヘイトが向くのは基本前衛
近接戦のプロ二人で押し負けた相手

「毒は通じるんですか?」
「さぁ、分からない」
「……体術は?」
「見ての通り貧弱だ。そして私を置いて死ぬ気で逃げろ。四人が逃げれる程度の時間は稼いでやる」
「無理です。死んじゃいます」
「無理かはやってみるまで分からん。それに僕が死ぬ程度で救えるならば安い」
「えっ?」
「お前は二人を救え。救えねば恨むぞ」

一つの薬を取り出す
真っ赤な血のような色をした薬

「薬でドーピングするから安心しろ」
「分かりました。無理はしないでくださいね」

(この薬を使う事自体が無理をしてるがまぁ良い)
手が震える

「……怖いか」

手が震えている事に気づき二人に聞こえない程度の小声で呟く

「どうしました?」
「いや、なんでもない」

自分よりも強い三人が敗北している魔物と戦うのだ
怖くない訳が無い
戦い慣れている訳でも無い
だがここでやられば救えない
蓮二と天音を見る
叶の事を信じて蓮二は攻撃を続け天音はその援護をしながらタイミングを伺っている
二人は行動している後は覚悟を決めるだけ

「……私は救える人間だ」

(命を賭ける覚悟はとうの昔に出来ている)
薬を打つ
少しの痛みと共に薬が体内に入り全身を巡る
異能で作り上げた薬
現状の異能で作れる最大効力の薬
薬の効果は一時的な身体能力の強化
一鬼の使ったあの剣の比ではない程の身体強化効果を得る
剣を握りしめる

「炎はもう良い。溜めておけ」
「は、はい」

攻撃を辞めて溜め始める
前に出る
地を踏み締め蹴る
叶が視界から消える
(消え……いや)
次の瞬間魔物の目の前に居た
(移動したのか。全く見えなかった)
消えたと錯覚する程の速度での移動

「最初から全力で殺る」

剣を振り上げる
魔物は掴もうと手を剣に向ける
バギッン
剣と手が当たると物凄く甲高い音を立てて腕が弾かれる
そして手のひらに深い傷を負う
魔物は驚く、このレベルの傷は先程までの攻防では負っていない
炎使いの強力な一撃でもここまで深い傷にはならなかった
魔物は本気で相手をする
決して油断していた訳ではない、ただ想像よりも重い一撃であった
素早く拳を振るう
狙いは顔面、遊びは不要、一撃で倒す
首を動かしてギリギリで拳を振るう
そして剣を振るう
寸前で飛び退き回避する

「逃げたか」

踏みしめて蹴る
また蓮二達の視界から消える程の速度を出す
魔物はギリギリ捉えて拳を振るう
剣で防がれる
魔物の足を蹴る
バゴッ
魔物の足がヘコむ
拳を弾いて剣を振るう
片手を剣の前に出して防ぐ
片手を犠牲にして致命傷を避ける
蹴りを繰り出すが避けられる

「強い」

天音は魔物が完全に叶に意識を向けている間に二人の元へ向かう
距離からして近いのは葉一
葉一の元に行き薬を掛ける
背中から叩きつけられた葉一は意識を失っている
背中、後頭部に相当の衝撃を受けたのだろう
掴まれた片足も折れている
(酷い傷……)

「先に獅子神に薬を」

一鬼の元に行く
二人に薬を掛けてから救出するつもりで居る
薬を使えば一先ず死なない

「獅子神!」
「あ、天音か……」
「痛いけど我慢して!」

一鬼は意識が朦朧としている
保つのがギリギリ、大量の血を吐き立ち上がる事も出来ない
直ぐに薬を掛ける
激痛に苦しむ

「ぐっ……うぅ……あの薬か……あの魔物は?」
「月神さんが戦ってる。浮塚さんは気絶してる」
「月……戦えたのか」
「薬でドーピングしてるらしい、それより立てる?」
「もう暫くは無理だな」

(私じゃ抱えられない)
天音ではどちらか片方でも抱える事は出来ない
体格に差がありすぎる
そして天音は力持ちでは無い

「横に移動しよう」

どうにか壁側に移動させて二人の状況を確認しながら戦いを見守る
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